マギ・ストラット・エンゲージ
休みの日ほど本って読めないよね〜。
マギ・ストラット・エンゲージ (電撃文庫 し 12-1) | |
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ストーリー
赤司世朗(あかしせろ)は何処にでもいる高校生だったが、偶然の一つの出会いが彼の人生を大きく変えることになってしまう。
ある日、町中で奇妙な事を聞いてきた少女の質問に律儀に答えてしまったところ、「何か」を身体の中に押し込まれてしまったのだった。そしてそれと一緒に押しつけられる一つの紙袋・・・中には一本の無針注射器が入っていた。
しかし、その中身を改める暇もないままに世朗は覚えのない相手に襲われる。彼に襲いかかってきた人間は世朗が少女に託された「何か」を奪いにやってきたようだった。
しかも、その何者かは普通ではありえないような力を振りかざして世朗を追い立てるのだった。世朗は絶体絶命と言える所まで追い立てられる・・・。その時、先ほどとは違う二人の少女が世朗の前に現れて、やはり現実にはあり得そうもない奇妙な力を使い、世朗を救ったのだった。
世界の裏側で起こっていた「大同盟」と「王者の法」と呼ばれる2つの魔術組織の争いと、それに巻き込まれた少年を描く魔法バトル作品です。
説明に困りますな
全体でみると・・・描写も安定して上手い感じがするんですが、つまらなかったですね・・・。
ストーリー全体を見渡すと、魔法バトルものではありがちとは思いつつもまあ無難で、破綻がないように上手く練られていてなかなか読ませるんですが、それでもダメでしたね。
・・・とにかく「主人公がまるで欠陥人間としか思えない」んですよ。
・・・ちょっと
上でも説明したとおり、主人公の赤司世朗は突然魔術バトルの世界に放り出されてしまうというのが序盤の展開なのですね。細かいことは抜きにしても、とにかく主人公はいきなり人死にが出そうな状況に追い込まれて、自分の命も危ないというような状況に陥ってしまうんです。
・・・が、彼はほとんど怯えないんですよ。まあちょっとは怖がる描写が出てきますが、ほんのオマケ程度のものです。
彼は作中でとにかくポジティブで、活力に満ちていて、状況の変化に柔軟に対応できる器量もあるという・・・既に一人前の戦士のように振る舞います。
つまり
普通の高校生なら当たり前のように持っていて、異常な状況に陥ったら誰でも最初にむき出しにするであろう原始の本能とでも言うべき「恐怖」とか「怯え」とか「疑心暗鬼」とか「戸惑い」と言ったマイナスの感情を一切持っていないかのように書かれるんです。これが実に・・・非人間的なんですね。
しかも、この作品は地の文が「主人公(世朗くん)の叙述」という形式で進むため、余計に非人間的な感じがします。自分の生命の危険についても客観的に物事を見渡している感じが強く出てしまうため、血肉をもって生々しく生きている感じが全然しないんです。
さらには
普通の高校生なら絶対に知らないような言葉を(特に固有名詞など)を使いながら状況の描写をしているため、とても奇妙です。
――形状は自動拳銃。サイズは全長で四十センチほどもあり、石碑のように重厚なシルエットを誇示している。銃身先端と銃把底辺にはスパイクが取り付けられ、スライド後方には撃鉄をカバーするハンマーシュラウドまで取り付けられていた。
それは、打撃装置で完全武装した異形の銃――蒼天色の白兵戦対応拳銃。
マズルガード、グリップエンド、ストライクガン・・・などのルビまできっちりと振られたその文章は――ぶっちゃけ一介の高校生の実況中継にしては珍妙としか言いようがありません。
正直なところ、作品全体の作りより作者の趣味を優先させてしまったという印象が拭えませんでした。もちろんこれらの描写はこの作品のキモである魔術描写などでも同じように展開します。やっぱり、妙です。
上記のシーンは、一体誰が語っているのでしょう? いや、誰に語らせたいのでしょう? ・・・非常に個人的な感想で悪いですが、マジで「誰が語っているか」が分かりませんでした・・・。
総合
星2つ。
つまらなくて読めないという類の本ではないですし、ヒロインの二人――ルルーラ、ヴィオレータも中々に魅力的に作られているんですけど、この星ですね・・・。
赤司世朗くんは、主人公というより
「カメラの向こうの戦場を遠隔地から実況中継している元気いっぱいのアナウンサー」
とか言った方がいいような気がします。常に発揮されるその客観的な視点の結果、主人公に致命的なほど感情移入出来なかったですね。
なんか・・・「絵は上手だけども、面白くない漫画」を読んでいるような感じでしたね。奇妙な読了感だけが残りました。ただ、技術は一定以上あるように感じたので今後に期待したい所ではありますね・・・。