時載りリンネ!(4)とっておきの日々

時載りリンネ! 4    とっておきの日々 (角川スニーカー文庫)

時載りリンネ! 4 とっておきの日々 (角川スニーカー文庫)

ストーリー

僕の隣の家の子で、しかも最近「時砕き」という大役を背負わされた子がいる。名前はリンネ
リンネはもともと「時載り」という一族の一人で、普通の食べ物の代わりに本を読むのを食事しているという変わったところのある子だった上に、さらに「時砕き」という世界に数人しかいない役目まで背負わされて、もう大変。
・・・なんて普通の人なら思うのかも知れないけれど、リンネに限ってはそうじゃない。草臥れるどころか、もっとわくわくすることがないか自分から探しに行ってしまうような女の子なんだ。
で、僕は久高というんだ。そんなリンネの毎日を何となく記録している係みたいなものなのかな。でも、最近はリンネにこの記録にどんな事を書いているのかがばれてしまったので、ちょっとやりづらい。何しろリンネ直々に「可愛く書いてね!」と言われているからなんだけど、でも事実を余り歪めるのもどうかと思うんだ。
ここのところリンネの周りではここの所立て続けに大事件が起こっていたのだけど、今回はそんな大事件じゃなくて、その間に起こったちょっとした出来事を紹介するよ。
元気溌剌な少女・リンネを中心にして語られる本の物語、今回は短編集です。

この本は

不思議な気分のする本でして、なんというか「読むことの楽しさ」を再確認させてくれるという印象があります。文字を追い、文章を味わい、本に親しむ・・・そういう物語云々以前の楽しさですね。
そういう印象を強くしているのが、ライトノベルでは余り使われない熟語の多さに現れているのではないでしょうか。例えば「披瀝」「迂遠」「譴責」・・・などなど。数ページ本文を追えばこれらの言葉と行き当たります。これらの言葉は当たり前のようにルビを振られますし、それどころか使われる事が少年少女向けの本としては一種の禁じ手のような気すらします。
でも変な言い方かも知れませんが、こうした言葉を使うことでしか醸し出せない印象というのが間違いなくあるんですよね。この「時載りリンネ!」を読むとそれを感じます。
そういえば、この本は間違いなく漢字の「読み」を鍛えるのに向いていますね。・・・なんで文部省推薦図書になってないんだろう・・・なんて思ってみたりして。

ところで

今回は短編集と言うことで、今までとはちょっと違った切り口の作品が楽しめます。
最初の短編「天体観測」こそいつものリンネですが(別に良くないって言っている訳じゃありませんよ? いつも通り楽しいという意味です)、その次の短編「ジルベルト・ヘイフィッツの優雅な日々」では、タイトルの通りミステリアスな箕作家の司書・Gの生活にクローズアップして話が語られます。

「Gは……Gは、うちの大切な司書なのよ! どんなときも、ずっとずっと私たち家族と一緒にすごしてきたのよ。これからだって。私の目が紫のうちは、あなたなんかにぜったいGは渡さないんだからっ」

・・・ほら、読みたくなってきたでしょう?

さらに

続く短編「フィーバー・ピッチ」では、登場人物たちの意外な姿が描かれたりします。

「まあ! そんなの危ないですわ! 男の子にまじって女の子がボールを追いかけ回すなんて。万が一、リンネ様が怪我でもされたら大変ですっ」

いや・・・流石筋金入りのインドア派
そして最後の短編は、今まで活躍しつつも話の中心にはなってこなかった久高の妹・凪がたっぷりと綴られます。

そのとき、とんとんと小気味いい音を立てて凪が二階から降りてきた。凪はパジャマ姿のままててて……とテーブルのそばに走り寄るなり、顔を近づけ、その上にあるご馳走をすみずみまで眺め渡した。そして、その場でくるりんと一回転する。

・・・ほら、ますます読みたくなってきたでしょう?

総合

また5つ星つけちゃうんだわさ。
最近思うんですが、私、角川スニーカー文庫と意外に相性がいいんですよね。時載りリンネといい、円環少女といい、薔薇のマリアといい・・・。
よく分かりませんけど全体的に古風で堅実な語り口の作品が多く、MF文庫辺りとは真逆な印象ではありますが、そういうところがどうも気に入っているみたいです。
ライトノベルがまだ”ジュブナイル小説”と言われていた時の匂いの残しているというか、そんな印象です。・・・どうです? もしソノラマ文庫全盛期辺りからジュブナイル小説を読んでいないとしたら、このシリーズで復帰してみるというのは? 面白さは保証しますよ。

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