東京ヴァンパイア・ファイナンス

東京ヴァンパイア・ファイナンス (電撃文庫)
東京ヴァンパイア・ファイナンス (電撃文庫)真藤 順丈

アスキーメディアワークス 2009-02
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ストーリー

この現代日本で生きて行くには、誰一人としてその必要性から逃れることが出来ないもの――お金。
そして誰もがそのお金で困っていた。あるものは女性へ近づくために、あるものは奪われたものを奪い返すために、あるものは新しい暮らしを手に入れるために。とにかく理由はそれぞれあったが、とにかくお金が必要なのだった。
そして東京、普通ではない一つの金貸し業者があった。通称<090金融>――超低金利、高額融資をする奇怪な金融業者である。その名をヴァンパイア・ファイナンス。それを営んでいるのは一人のやはり奇妙な女性・万城小夜。彼女はあり得ないような金利で、あり得ないような相手に、あり得ないような金額を融資している。
その”吸血鬼”のような誘惑にかられ、一人、また一人とその「融資」を受ける者達。彼らの行く手に待っているのは? 電撃の銀賞を獲った作品です。

けどねえ・・・

これ、夢がないわ〜。いや読んでいるのが学生だったら分かりませんけどね。
私も社会人になって長いもんですから、それなりに金を借りたり(ローンとか)とかがあるわけですよ。知り合いには低所得に甘んじているワーキングプアな人間もいるし、金融的にブラックになっちゃった人とかも知っている身として、さらにはいつ何が起こるか分からないこのご時世。「明日は我が身」の言葉通り、この作品の中に渦巻いている根っこの部分が全然笑えません。
この「笑う」は実際の笑うじゃなくて、楽しめないという意味の「笑う」ですけどね。

作品としては

ヴァンパイア・ファイナンスという怪しげな金貸しからお金を借りた側(つまり返済義務がある方)の複数の視点で物語が綴られるわけですが・・・なんというのか、それがどれも楽しめなかったんですね。
若者の話は馬鹿らしく感じてしまったし、老人の話はどちらにせよ侘びしいし、女性の話はちょっとトンデモに感じたし、もう一人もアレな感じで・・・どれも感情移入することないまま話が終わってしまいました。

どうも

私はこうした群像劇、という奴が苦手みたいですね。
話の善し悪しに関わらず、どこかの基本一点に視点を集中して読みたいと思うところがあって、それがあっちに行ったりこっちに行ったりするとどうしても落ち着かない気持ちになるんですね。
長編作品になればまた話は違ってくるんでしょうけど、一冊の間でこれをやられると私の場合どうしても読みにくさが先に立ちます。それに加えて話がこうきては・・・いや、楽しめないのは当然だったかも知れませんね。

総合

星2つですね。
作者の創作技能については多分不満らしい不満を感じませんでしたが、物語そのものが受け付けなかった、というところでこの星の数です。全体的には高水準でまとめ上げられていると感じますので「やっぱり電撃の賞は層が厚いな〜」などとはしみじみ感じましたが、それ以上でも以下にもなりませんでした。
正直中盤辺りで読むのを止めようかとも思ったんですが、通勤電車の中でやることもないのでとりあえず読破、という塩梅ですね。うーん、また別の作品を作ってくれたら読むかも知れないけど、金貸しの話はもうヤダなぁ・・・。
というか、お金って物語の中での扱い方を変えるとここまで印象が変わるんですね。「狼と香辛料」だってある意味もの凄くお金の話なんですけどね。

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