アリフレロ—キス・神話・Good by

アリフレロ―キス・神話・Good by (集英社スーパーダッシュ文庫 (な3-2))
アリフレロ―キス・神話・Good by (集英社スーパーダッシュ文庫 (な3-2))中村 九郎

集英社 2007-03
売り上げランキング : 330971

おすすめ平均 star
star絵がよかったです。

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いやあ、流石に参ったとしか言いようがないなコレは。怪作。星も付けない。

ストーリー

自らの死を「左腕に予言が降ってくる」という少女・小桜冬羽(こざくらとわ)に予言された主人公の少年・三井川正人(みついがわまさと)は、予言の通り白いメイド姿の化け物にバラバラにされてしまう。
時を同じくして白メイド(αキスという)を倒すために使わされた少女が現れる。その少女・黒園葵はαキスを猟るための戦いを開始するが、背後にはVIPと呼ばれる奇怪な登場人物達の悪ふざけのような異様な陰謀が進んでいた。

最初から最後まで

完全に読者に対して「物語を描写する」という作業を無視して、ただひたすら「作者のイメージに忠実に文章化」を進めた結果出来上がった物語——とでも言えばいいですかね?
一番最初に思い出したのはシュールレアリズム作家の描く異様な世界を描き出した絵ですかね。ジョルジョ・デ・キリコとかルネ・マグリットとか。でもそう言ったものとも違うなあ。・・・多分だけど、作者は、
「自分の脳みそを理解してもらおうなんて、そんな夢のような都合の良い話はどうしたって信じられないから、せめて少しだけでも読者に『ただ自分の内面でとぐろを巻く得体の知れない蛇』を感じて欲しい」
とか、
「そもそもこの物語がゼロから産まれた神話の一つで、自分の狂った感覚そのものだから、これ以上説明したら説明した分だけ嘘が増える。この自分の神話の作る『イマジネーション』と『現実』がなんとか折り合うギリギリの所を探ってみた。結果これが出来上がった。これが多分今の所の妥協点じゃないか」
とか思ってこの最終稿を編集部に提出したんじゃないかなって事かな。ただし、高尚とかとは全く離れた所にある大衆性の極地で、かつ不気味でかつ変態的な何か——かな? 脳みその中に最初に映像があって、それを無理矢理文字に置き換えたみたいな本かな。

本当に

これほど解説やら感想が困難な作品も珍しい。
ジュブナイル作品としては致命的なまでに読者を意識していない。時々ノイズのように人間的な言葉が紡がれたりするけど、逆に普通の台詞に違和感を感じるような作品ですね。
産まれてからずっと地下の牢獄でテレビとビデオと漫画と映画だけを糧に生きてきた名も知れない誰かが、誰に読ませる訳でもない物語を見よう見まねでしたためたとか、そんな本。
間違ってもお薦めしない。どう考えても薦められない。評価不能に近い。というか個人的にライトノベルとは認定できないかな。でも我こそはラノベ読みで、どんな挑戦でも受ける!という人は是非手に取って欲しいような・・・そんな本。

感想リンク

まいじゃー推進委員会!  Alles ist im Wandel  鍵の壊れた部屋で見る夢  ラノベ365日  積読を重ねる日々  MOMENTS
ラノベ365日の愛咲優詩さんのこの本へのバッサリ感がいっそ清々しいですね。的外れと思えない所がまたなんとも。

私の愛馬は凶悪です

私の愛馬は凶悪です (ファミ通文庫 あ 3-3-1)
私の愛馬は凶悪です (ファミ通文庫 あ 3-3-1)新井輝  緋鍵 龍彦

エンターブレイン 2007-03-30
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おすすめ平均 star
star読み手を選ぶ作品。要注意。
starRoomシリーズと似たようなの
starなんとコメントしていいやら・・・

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ストーリー

高岡霧理(たかおかきりり)のクラスに、今日も見知らぬ女生徒がやってきて、クラスメイトの射水位里(いみずいり)の「予約」を取る交渉をしていた。この「予約」とはつまりは肉体関係を持つための「予約」なのだった。射水君はつまりそう言う事をしている少年。
で、あまりの無茶苦茶加減に霧理はついにキレて文句を言ってしまうのだけど、それが結果としてどんどん変な方向に進んでいってしまって・・・いつのまにか霧理は射水君と一緒に行動するような感じになってしまうのだけど・・・というお話。
真実の愛を探し続ける新井輝の新作ですね。

こう作品を読んでいると

新井輝という作家というのは本当の愛とか、恋ってなんだろうかとか、そう言った事に取り憑かれた作家だなーって思いますね。家族愛だとか、親子愛だとか、男女の愛だとか色々はあるけど、いずれにしてもそれをこねくり回して作品を作り出している事にかわりはないというか・・・ま、「ROOM NO.1301」と「さよなら、いもうと」とかしか読んでないのであんまり言い切れたもんでもないけどね。
テーマは何となくだけど「愛というものに納得すること」かな。誰がって?いや作者の新井輝が。トラウマでもあるんだろうか?
勝手な妄想だけど「書く」という行為そのものが作家・新井輝にとっての「リハビリ」とか「カウンセリング」みたいな印象ですね。なのでなんかまだまだ模索中って感じの作品です。きっとラストシーンなどまだ決まっていないに違いない。

それにしても

相変わらず不思議なキャラ作りをする人ですね。

高岡霧理さんは

取り立てて変わったところはな〜んにもなくて、それこそ普通の庶民でごった煮の家族の中で育っていて、元気で素直だけどなんとなく家庭料理の「肉じゃが」を思い出す感じの少女ですね。
所々大雑把、雑味もあるけどあったかい。でも大皿に盛られて出てくるから、急いで自分の分を確保しないとあっという間に他の家族に取られちまうぞ!というような感じで育って、まさしくそれを体現した感じの女の子です。
以下、射水君の家に何故か行って、飲み物を聞かれた時に彼女が放った台詞。

ペリエって?」

「……水道水でいいです」

はい庶民。よくも悪くもとっても庶民で感覚もまあ普通。どちらかと言えば古いタイプかな。でもそんな彼女と接していて、射水君は彼女を評してこう言います。

「キラキラしてるよ」
「……キラキラねえ」
太陽のようだとかひまわりのようだとか言われたことがあるので、きっとそんな意味なんだろうなあと思う。

まあ霧理さんにしてみればとんでもない話なんですが、彼からすると、彼女の背後に透けて見える温かい空気が彼女をとても眩しい存在に見せるみたいですね。

射水位里くん

主人公の正反対ですね。高級フレンチレストランのフルコースで、至れり尽くせり。オードブルからデザートまで、全て完全に一定の緊張感をもって統一されて、予約が無いと食べられない。まさしく「要予約」の少年。
誰かに食べてもらう時こそ頑張って楽しく、気持ちよくする事を考えているけど、でも自分が食事を食べるときはいつも一人。まかないは美味しいけど味気ない、美味しい料理は食べているけど楽しい料理は食べた事がないし、知らない。そんな感じ。

「俺と霧理さんは……友達ってことでいいんだよね?」

「セックスするだけの相手ならけっこういたけど、こうしてちゃんと話を聞いてくれる相手って初めてだから」

悲しいなあ・・・。きらびやかに見えてもその実とっても孤独な内面。しかし、彼を外から眺めている少女達は彼についてこう言います。

「うん、友達がね、位里様としたんだけど、それがすっごく良かったって言うから。なんかね、もう一晩中、イカされっぱなしなんだって。位里様とすると息継ぎできないまま波間を漂ってるみたいな気持ちにさせられるらしいよ」

もう本当に高級レストランのノリですね。必死に足掻くようにして少女達に性的なサービスをしている姿が見え隠れして、同じ男として同情を禁じ得ません。しかもお金もらってやってるサービスでもないのに・・・。なんかどこまでも悲しい少年ですね。彼は一見女たらしの幸せ者ですが、全然羨ましく無い類いの生き様ですねえ。
まあこの手の話と、倫理観とか、感情論とかがごた混ぜになって、事態は混乱するんですけど。あ、あと霧理の弟の進くんの恋愛も絡んでくるんだった。

なんだか判り難いですが

面白かったですね。星4つ。ただ、全3巻位できっちりと完結させて欲しいものです。
愛の模索はROOM NO.1301の方でやってもらって、こっちはちゃんときっちり完結させて欲しいですね。恋愛とは違うテーマを持った全く違うアクション作品とかの話ならともかく、切り口を変えただけの同じ作者の作品をいつまでもだらだらと楽しむ傾向は個人的にないので。この作者はページを区切らないといつまでも間延びする気配もなきにしもあらずって感じもするし。
緋鍵龍彦氏のイラストは、特に口絵のカラーイラストが良かったかな。なーんか、可愛らしさとえっちい感じが同居している感じで。ちょいハァハァします・・・。

廃墟ホテルへようこそ

廃墟ホテルへようこそ。 (GA文庫)

廃墟ホテルへようこそ。 (GA文庫)

これは良い萌え小説ですね。

ストーリー

鈴ノ音きゃろるは今年高校生になる女の子。これを機会にきゃろるは念願の一人暮らしを始める事に決めて、良い物件を探し中。お兄ちゃん(実はいとこ)の一ツ橋直也の反対も押し切って、非常に怪しいけど超が付く格安物件を見つけてきゃろるはそれに飛びついた!・・・もちろんその「怪しさ」にはちゃんと訳ありで、そこに住まう他の住人達はみんな全て「怪物」だったのだ。
と言う訳で怪奇?猟奇?神秘?・・・違います。あくまできゃろる萌えの変なお話。

おい、絵師よ

なぜきゃろるの七変化姿を全てイラストにせんのか!? それでこそ怪物達の感じる萌えっぷりが伝わるというモノではないか!?
と言ってしまっていい程「廃墟ホテル」に住んでいる怪物達はきゃろるにめろめろです。まさしくふにゃふにゃの腰砕け。

実は

きゃろる自体が大きな秘密を持っていて、彼女は「薔薇の福音」と呼ばれる存在で、彼女は闇に住む生き物達に等しく祝福(多分強烈な幸福感みたいなもの?)を「ちょっと願う」だけでいくらでも振りまく事が出来る存在なのですね。砂漠の植物にとっての恵みの雨の様ですな。きゃろるがいるだけでもスゴいのに、願ったりすればそれはもう、もっとスゴい事になる訳です。
猫にマタタビ状態とでも言いましょうか、強烈な闇の怪物向けの萌え波動とでも言いましょうか、そんなものがドッバドバでてる訳です。怪物達は萌え過ぎて鼻血は出すわ、失神するわ、ムラムラするわ、着せ替えして楽しんで(きゃろるも大喜びで着替えをする)やっぱりぶっ倒れるやら、ダメ怪物の集団が集まっている訳ですね。
いえ、普通の人間も十分に萌えられますけどね!

ほのエロいねえ

風呂場にて。

(見……見えた……)
――たわしナッシング。

たわし」が何を指すのかは各自妄想にて補完せよ!高校生になるのにたわしが、たわしが無いのは、こらアナタ、へへへへへへ・・・。とまあこういうネタもあるというか、話のあちこちがなんかエロい。狼男のバルトが狼の姿で背中にきゃろるを乗せての一幕とか。

(俺の背中にきゃろるの×××が)

つまり変態ばかりです

総合

うーん、まあ見所は萌えしかないんで、星3つかな。もうちょっとで星4つなんだけど、もう一つドラマチックでないかな。
エロなんだけど、ひょっとして作者は女性かな? 萌えとエロの微妙なラインを行ったり来たりする感じがなんとなくそんな感じですかね。きゃろるの可愛らしさを強調しつつその隙間にエロをちょっと匂わせて・・・って感じが何となく女性的なんですけど。どうかな〜。星3つとは言え、これはでも単純に好みの問題なので、萌えたい人はたまらん本ではないか?ロリ体型だしな!