アリフレロ—キス・神話・Good by
アリフレロ―キス・神話・Good by (集英社スーパーダッシュ文庫 (な3-2)) | |
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いやあ、流石に参ったとしか言いようがないなコレは。怪作。星も付けない。
ストーリー
自らの死を「左腕に予言が降ってくる」という少女・小桜冬羽(こざくらとわ)に予言された主人公の少年・三井川正人(みついがわまさと)は、予言の通り白いメイド姿の化け物にバラバラにされてしまう。
時を同じくして白メイド(αキスという)を倒すために使わされた少女が現れる。その少女・黒園葵はαキスを猟るための戦いを開始するが、背後にはVIPと呼ばれる奇怪な登場人物達の悪ふざけのような異様な陰謀が進んでいた。
最初から最後まで
完全に読者に対して「物語を描写する」という作業を無視して、ただひたすら「作者のイメージに忠実に文章化」を進めた結果出来上がった物語——とでも言えばいいですかね?
一番最初に思い出したのはシュールレアリズム作家の描く異様な世界を描き出した絵ですかね。ジョルジョ・デ・キリコとかルネ・マグリットとか。でもそう言ったものとも違うなあ。・・・多分だけど、作者は、
「自分の脳みそを理解してもらおうなんて、そんな夢のような都合の良い話はどうしたって信じられないから、せめて少しだけでも読者に『ただ自分の内面でとぐろを巻く得体の知れない蛇』を感じて欲しい」
とか、
「そもそもこの物語がゼロから産まれた神話の一つで、自分の狂った感覚そのものだから、これ以上説明したら説明した分だけ嘘が増える。この自分の神話の作る『イマジネーション』と『現実』がなんとか折り合うギリギリの所を探ってみた。結果これが出来上がった。これが多分今の所の妥協点じゃないか」
とか思ってこの最終稿を編集部に提出したんじゃないかなって事かな。ただし、高尚とかとは全く離れた所にある大衆性の極地で、かつ不気味でかつ変態的な何か——かな? 脳みその中に最初に映像があって、それを無理矢理文字に置き換えたみたいな本かな。
本当に
これほど解説やら感想が困難な作品も珍しい。
ジュブナイル作品としては致命的なまでに読者を意識していない。時々ノイズのように人間的な言葉が紡がれたりするけど、逆に普通の台詞に違和感を感じるような作品ですね。
産まれてからずっと地下の牢獄でテレビとビデオと漫画と映画だけを糧に生きてきた名も知れない誰かが、誰に読ませる訳でもない物語を見よう見まねでしたためたとか、そんな本。
間違ってもお薦めしない。どう考えても薦められない。評価不能に近い。というか個人的にライトノベルとは認定できないかな。でも我こそはラノベ読みで、どんな挑戦でも受ける!という人は是非手に取って欲しいような・・・そんな本。
感想リンク
まいじゃー推進委員会! Alles ist im Wandel 鍵の壊れた部屋で見る夢 ラノベ365日 積読を重ねる日々 MOMENTS
ラノベ365日の愛咲優詩さんのこの本へのバッサリ感がいっそ清々しいですね。的外れと思えない所がまたなんとも。