天使のレシピ - ブログというか倉庫

天使のレシピ (電撃文庫)
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「ライトノベルの×××描写って・・・」のエントリで愛あるセックス描写があるという事を薦められて読んでみた。たしかにちょいエロかった。

ストーリー

ちょっとずれてしまった恋愛を元に描かれた恋愛短編集。天使は物語の味付け＆解決役。ちなみに少女漫画的な男に対するある種の無理解と誤解と美化があるように感じるので、どっちかと言えば女性向けの作品のような気がする。作者の性別を調べた訳ではないけど、間違いなく女性だと思う。

超告白

読んでいて一番楽しめた。まあつまり良くある恋愛とその結末。かゆい。かゆかゆかゆ！！しかしこのかゆさは、心地よい。でもやっぱりなんとなく女性的だね。でも比較的登場人物の性格設定と陥った状況が一番普通でバランスが良いのでとても楽しめた。一度でも女に告白した事のある男／女なら、まあこの幸せさ加減が理解出来ると思う。
それから、やっぱり直接言ってなんぼだよね、告白はさ。とにかくすがすがしいお話。恋を呪いと言うとは・・・上手い事言ったよね。マジでさ・・・（しみじみ）。

トランキライザーキス

彼氏がいるのに別の男とキスしないと耐えられない女の子の話。しかもすっごいディープなキスじゃないとダメだという・・・。ディープキス、つまりセックスの延長線上にあるキスですね。腰に来る奴。
正直読んでムカついた。こういう女は男からすると一番許せねえタイプだ。リアルにこういう事を平気でやる女がいるから、なんか天使っぽい摩訶不思議な「何か」で都合良く解決しちゃうのもムカついた。
シリアスな話なのに「チューされてた被害者（男）」に対する救済が全然ないのがメチャ気になる。男性読者で「ただでチューしてるのに被害者？」という感じで理解しにくい場合は主役達の性別を男女逆にしてみるか、「キス」を「セックス」とかにしてみれば、その理不尽さが理解出来ると思う。
この話をちょっと上記の条件「キス」→「セックス」で置き換えた後、要約してみる。（完全ネタバレ注意）

彼氏がいるけどセックスしても肉体的になぜか満足出来ない女がいる。
仕方なくセックスフレンドを作って（好きじゃないけど体の相性はバッチリ）そこで性的に満足している。
定期的にセックスフレンドと関係を持っているが、彼氏には当然完全に秘密。
ところが、セックスフレンドが女に徐々に本気になる。
宣戦布告したいセックスフレンドが自分と、女、彼氏が一同に会する状況を作る。
修羅場になりかかるけど天使の力で何故か魔法的に解決。
女、なぜかセックスフレンドを罵倒しまくって殴り、次いでに彼氏も殴って力づくでセックスしていた事実を納得させて終了。

え？それなんてエロゲ（ただし女性向け）？
うーん。気持ちを別の男の中におとしたぁ？そういう不思議展開にするには妙にリアル世界の投影というか暗喩じみていて痛々しすぎるんじゃい！とにかくリアルにムカつく話だった。・・・しかし逆に言えばこの話は女の子が頭に描く「都合の良い展開」が生々しく良く書けているという事でもある気はするな。・・・うーん複雑な心境だ。しかし本来ならこの話のオチには女の子の破滅（失恋）が書かれるのが正しいと思うね。どう考えても。あるいは刃傷沙汰。
男は一人が「ニブチン馬鹿男（本命）」で、一人が「都合の良い男（対抗）」として描かれている・・・まあ、男性作者の場合はこの逆を書きそうだしな。お互い様か。それと天使！

「最初に、男の子はアホだという前提から出発しなくてはいけません」

やかましいわ！　女もまったく同じだけアホだっつーの。本気の恋愛中にアホでない男も女もいるものかい！　ボケ天使！　ちょっと肉の欲求を取り戻してから出直して来い。
あと、この作品はちょっとエロい箇所がある。青カンやら、フェ○や、その後キスしようとしたら男がイヤがったりとか、部室っぽいところでなし崩し的にセックス致してしまったりする描写がある。しかしこのセックス描写はどちらかと言えば女性視点の奇妙に醒めた描写なので、セックスに耽溺したい私からすると「うっわ〜。こんな事を頭で考えながらセックスする女って不快だなー」という感じがしてしまった（多分男女逆にしたら女性もそう感じると思う）。
色々非難するような事は書いているけど、このセックス描写は「与え合うもの」というよりは好きな人に自分の肉体を「一方的に与えている」という感じで書かれていて、あげているけどもらえていない肉体関係のもたらす精神の不安定さを行間に感じる。これは非常に上手だと思う。
恋愛って、人の繋がりって、セックスって何じゃろかいな？という（女性限定の）問いかけ的には実に良く書けている。ある意味一番生々しい男女の断絶がある話かな（途中までは）。しかしオチが理不尽だなこの話。気に入るのはどんな人だろうか？
最終的に問題になりそうなのが、書きたい事が

「『感情の落とし物』からなるシリアスな『好きなのは彼氏だけど触れたくなるのは別の人』という奇妙な男女関係の話」

なのか、

「『男女の間にある肉体的な接触があるのに避けられないリアルな精神的断絶（つまり性の不一致）』をファンタジー風味にした話」

なのか、良く分からないことじゃないだろうか。メインテーマはどっちなんだ。

恋愛実験

少女漫画的要素の頂点にあるような作品ではないか。とにかく恋と言うものが分からない青年が恋愛実験を行って、それの相手として（元々相手が好きだったので）立候補した少女のお話とその顛末。女性の脳みそも男と同じ様に恋愛で生々しく膿んでいるんだな〜と感じる一作。うーん、地味な女の子の持つ夢とメルヘンがこれでもかっ！と詰まっております。まあこういうのもありか。まあ、少女漫画展開だけど読めるね。面白い。主役二人のキャラは結構濃くてよろしい。
突飛な恋愛関係の始まりだけど、「本気の誠実」 vs 「本気の誠実」なので読了感は良いです。実に真っすぐな男女の話ですね。１話とこの３話が個人的に好きかね。

ソラヲトベ

完全に心が繋がってしまった男女のお話と、それの結末と解決のお話。うーん、この作品はファンタジーだった。微妙にオチに納得出来なかったり。おっさんだからか。

結論

別にファンタジー的な要素（天使）はいらなかったんじゃ？　何しに出てきたのか分からない。
出版する出版社を間違ったんじゃ？（女性向けレーベルでどうすか？）
まあ一本一本の作品は作りがしっかりしているので読める。個人的には１、３話。
生々しいセックス描写（２話）ですが、なんでしょうねー、一方通行的なセックスのロマンの無さ。おすすめしてもらっているのになんだけど、双方向の愛があるとは言えない。しかしこれも愛の一つの形か・・・うーん、この断絶は深い。
セックス描写はあるけど、特にいらないような気もする。ただしテーマを絞りきれば必要だと言い切れると思う。
４話、そういう方向で決着付ける必要あったんかいな？ファンタジーでも良いからオッサンの私に「比翼連理」の夢をもう少し見せておくれよ・・・。

星３つ。２話がヘンなので星マイナス２つ。過激な感想になってしまった事を詫びたい気持ちもあるけど正直な感想です。次も読めるけどムカつく話（地雷）が出てくる可能性を感じる。しかも気にしながら読むと女性的な身勝手さ／都合のよさが結構目立つ作品なので、女性読者が読むのにいいかも。ちょっと女性読者の意見を知りたいね。特に２話。
この２話は実は完全に別の話にして、もっと掘り下げて、ラノベにせずに、リアルさを全面に押し出して文学として（別の本で）作品作りをすれば良かったんじゃないかと思いますけど、どうでしょう。

謝辞

この本を紹介してくれたライトノベル読もうぜ！のラノベドランカーさん、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

感想リンク

booklines.net　　まいじゃー推進委員会！　　ライトノベル読もうぜ！　　ラノベ365日　　すたじおG
今回は「ラノベ365日」さんと「すたじおG」さんの書いている感想と一番近いかな・・・。