パラケルススの魔剣(1)(2)

パラケルスス」という名前を冠したラノベシリーズが少なくとも私の感想に二作並びました。それだけ錬金術士・パラケルススの存在というのが謎めいていて、冒険小説やら幻想小説のモチーフとして使いやすく、魅力的だという事でしょうね。

ストーリー

前作、「ラプラスの魔」から七年後、モーガンアレックスビンセントフィリップ・A・スミスと言う心霊研究家でもある裕福な実業家に奇妙な依頼を受ける。彼が養っている霊能力者の少女・フランカが幻視してしまった「ヨーロッパの大破壊の未来」の真偽、あるいは実現可能性についてどの程度なものなのか、彼らに調査して欲しいと言うのだ。その為にヨーロッパ各地を回って欲しいと言う。
モーガンの好奇心に負けてその旅を行う事になった一行(モーガン、アレックス、ビンセント、フランカ)はドイツにまず渡り、調査を開始するのだが、そこにはナチに影響を与える魔術結社の影が見え隠れする・・・。そして七年前のあの忌まわしき事件で出会った謎の日本人・草壁健一郎の姿もそこにあった・・・!

濃いなあ・・・

濃い。実に濃い。作者(ちなみに原案安田均、著者山本弘)の脳内で異常なまでに想像力が噴火した挙げ句、神話の時代から遡って現在まで連綿と続く魔術的な世界と、人々の中に残る伝承とロマンと、1930年代位の歴史的な事実と、作者達によるでっち上げををこねて、こねて、こねまくって、この作品が生まれたんだなあ・・・凄いレベルでのオタク根性もあったもんだな・・・と変な関心の仕方をしてしまいました。
ちょっと作者達の脳の中身を覗いてみたいような気もしますが、なんか凄そうです。あ、この本もなんかゲームのノベライズらしいですが、ゲームの方は知りませんのでコメント不可能ですね。

で、どう?

微妙としか・・・あまりの濃さに楽しいとか以前に「読みにくい」。付いて行ける人にとっては(本の中で書かれる歴史的、或は魔術的事実)に対して知識レベルの高い「非常に濃いマニア」やら「架空歴史ものに非常に強い興味を持つ人」なら付いて行けそうですが、それ未満の私にはちょっと追跡不能状態な展開をしてしまいました。
・・・いえ、別段ストーリー的には難しくはないんですが、メインの話(ヨーロッパを股にかけた〈調査|追跡|アクション〉紀行)の間に挟まれる歴史解釈やら魔術解釈やら、歴史的事実と民間伝承の整合性の検証(あってるかな・・・)とかが濃いので、あまりユーザー(読者)フレンドリーな作品とは言えないのではないかと思います。
つまりストーリーラインに「一時停止」が多いんです。雑誌連載が元のようなので、連載時は毎回それなりの解説(つまりオチ)を付けるのに良かったのかも知れませんが、一冊にまとまるとそれが「一時停止」という感じでリズムを損なうような気がします。
健一郎の活躍とか少ないし、もうちょっと彼の人間的なエピソードとか見たかったのにな・・・「ラプラスの魔」にはそれがあったんだけど。まあ前作を読んでいればキャラクターの性格はつかんでいると思うので、それほど困らないとは思いますが、これ単体で見た場合にはちょっと苦しんではないかな、と思いました。

結果

星3つですね。まあ楽しいけど「ラプラスの魔」の方が文字数:マニアック:キャラクターの各比率が良かった。ちょっと知識方面に偏りすぎて読みにくい印象があります。まあ、並べられるオタク的な知識には舌を巻くような感じもあるので、そういう方面でめくるめく体験をしたい人はどうぞ。
このシリーズは弘司氏がイラストを手がけています。最近ラノベでは見ないような気がするんですけど、どうしたんでしょう? 少女は可憐で、モーガンは色っぽく、おっさんはおっさんらしく、健一郎あたりは厳しく、いい感じです。・・・ザンヤルマの剣士を思い出したなあ・・・。読み返すか・・・。