ROOM NO.1301(2) 同居人は×××ホリック?

ROOM NO.1301〈2〉同居人は×××ホリック? (富士見ミステリー文庫)

ROOM NO.1301〈2〉同居人は×××ホリック? (富士見ミステリー文庫)

久しぶりだなあ。1巻の感想を書いてからどの位経ったかな?

不思議な空気

この本を読んでいて感じるのは、やっぱり妙な乾いた空気と絹川健一の恋愛に対するスタンスの特殊さですかね。あいにくと私はモテる人生やらナンパ人生やらを全く送っていないので、恋愛関係にもないのに女生と肉体関係を持ったりするような状況に陥った事がないのでなんとも言えないところがありますが、それでも主人公に不快感を感じないのは、テーマがガッチリと「恋愛」になっていて、細かいエピソードを挟みつつも決してそこから視点がズレていないからでしょうね。良いと思います。

2巻はどんな感じか?

2巻では、1巻を導入として、ひたすら健一と他の登場人物との関わりが描かれて行きます。

  • 健一と、「健一の彼女」に立候補した大海千夜子の、なんだかいつまでも不思議に純情な組み合わせ。
  • 健一と、「健一とあらゆる意味で仲良くしたい」桑畑綾の、綾に迫られつつも恋愛が良くわからないので距離を取ろうとしつつも離れない組み合わせ。
  • 健一と、「私の噂を知っているならあまり近づかない方が良いよ」という有馬冴子の、ちょっと背徳的だけど優しくてなんだか儚いような繋がり。
  • 健一と、「いつだって弟に対してツンケンしている姉」絹川蛍子の、家族という危うい枠をなんとか維持しようとしているかのような微妙な距離感と空気。

どの関係もそれなりに読ませてくれて、楽しませてくれます。単純に「健一・・・恐ろしい子!」と思わないでもないですが、それぞれのキャラクターがきっちりと文字数を使って表現されるため、安心して読めます。2巻では特に冴子との関係が深まるところが見所ではないでしょうか?

不可避なセックス描写

恋愛=セックスが絡んでくる話でもあるので「ちょいエロ」カテゴリに入れていますが、やはりと言うかなんと言うか、ただ単に「恋愛にセックスが欠かせない」というだけの事だと思います。お色気目的でそういう描写を入れている訳ではないってことが好感触ですね。まあ、エロティックな描写はもちろんあるんですけどね・・・。
多少「おま、それ都合良過ぎとちゃうんか?」と思わなくもないですが、それぞれ必然性やらも感じられるので十分許容範囲内に思えます。
女性が結構沢山出て来て、しかも健一は結構あっちこっちでやらかしちゃうんですけど、いわゆる「ハーレムもの」とならないのは主人公の健一が色欲に溺れているタイプではないからでしょう。あと、やっぱり「恋愛」というものに対してそれなりに誠実に向き合っているからなのだと思います。
作品中で、複数の女性と関係を持ってしまっていることを「酷いことだ」と告白する健一に対して、冴子はこう言います。

「でも、きっと酷いことじゃない。それを酷いことだって思ってるのは絹川君だけ。でなかったら、なんで綾さんはあんなに幸せそうなの? 絹川君と話してる綾さんが幸せなのを、絹川君は綾さんがおかしいからって……そういうの?」

健一の恋愛関係は、少なくとも相手の女性から何かを「奪うもの」として今のところ機能していないということなのでしょう。

結論として

星4つですね。楽しいです。ラノベで読める「一番優れた恋愛の本」ではないでしょうか?

「謎の13階」という要素以外全く不思議要素が無い話ですが、その分丁寧に丁寧にキャラクターの内面が描かれて行くので、一人一人のキャラの表も裏も深く描かれて、読み応えがありますね。
イラストも良いです。雑味を感じる絵柄ですが、雰囲気があっていいですね。