描きかけのラブレター

ライトノベル読もうぜ!」さんの書いたこの作品の感想がとても素敵だったので手に取ってみた一冊です。表紙画像が無いのが残念ですね・・・素敵な作品でした。
なるほど〜。この作品あってこその「ゼロの使い魔」かなあ・・・などと思いました。

ストーリー

絵を描く事以外は得意でもないし、他に大した取り柄がないと表現される主人公・遠藤ユキオの視点で描かれるラブストーリー。
彼にとって、同級生の美少女・神木円(かみきまどか)は不思議で、理解に苦しむけれども、決して無視出来ない存在だった。あまりにも不器用な二人の若者が織りなす青春のほろ苦くも甘いストーリー。

導入から前半は

主人公視点で物語が語られるせいか、ヒロインの神木円がかなりトンデモ少女に見えてしまったりして、個人的には「ちょっとさすがにこのヒロインには付いて行けんわ」とか思ったもんですけど、彼らの中で等しく時間が流れて行き、一歩ずつハードルを越えて少しずつ、ほんの少しずつ心を通わせる事によって段々ヒロインの姿が見えてくる描写は実に秀逸に思えました。
「あら〜、ヤマグチノボルはこんな作品も書けるの〜!?」 という微妙にオカマ的コメントが漏れてしまった程です。

ヒロインはまさしく「リアルなツンデレ

私個人が実際にこういう性格をした女性「ツンデレを肉眼で確認」した事があって、その時の私の実際の発言は以下のような感じ。
以下は作中の引用じゃなくて、実際の私の発言です。

「お前・・・馬鹿だろ?」
「なんでわざわざ自分の首を絞める様な事をしてんだ? 意味わかんねえ!」
「お前、あいつの事好きなんじゃないの? 良いわけ? 流石に嫌われちまうよ?」
「いいじゃん、素直に『会えて嬉しい』って言えば。その方が可愛いと思われると思うけどなあ・・・」
「自分から好きだって言えば楽になると思うんだけどなあ」
「分かれって・・・そりゃ無理だろ。お前キレてるようにしか見えん!」
「もっとイチャイチャしたい? すれば? ・・・ナニ? 自分からは恥ずかしさと意地があって出来ない? 知るか!」
「だから、素直な気持ちを俺に言っても意味ないし! つーか無駄だし! この腰抜け! 死ね! いっぺん死んでこい!」

こんな感じ。

実際に物語中で彼女の本心は、ほんの僅かに描写された台詞の端々から推測するしかないのですが、「この時彼女が実際に何を考えていたのか?」とか「この時なんでこんな反応をしたのか?」とか「この時彼女は主人公に何を期待していたのか?」などなど、想像するととても楽しい。

主人公はニブチンか?

そうでもありません。
ごく一般的な反応を示している少年と言って良いのではないでしょうか。私は男ですので主人公の少年の反応は至極まっとうに思えました(どちらかと言えば根性が座っているとまで思うくらいです)。
少女が自分の事を本当はどう思っているか分からない事からどうしても遠慮がちになったり、「言外で言っている事」を酌みきれずに逆に相手を不機嫌な気持ちにしてしまったり・・・ああ、昔の自分を見ているようです。

正直に言って

恋愛の相手としては「ツンデレちゃん」は面倒くさい事この上ない相手です。極端な場合、相手の1の言葉から残りの9を推測して行動しないと理不尽な反撃を食らったりします。
久々のデートで心の中では「会えてとても嬉しい」と思っていればいる程表情とかは「ムスッとして不機嫌そう」になったりしますんで、男がその辺りちゃんと酌んであげて上手くノセてやるか、あるいは無視してグイグイ引っ張って行くかしないと、ろくな結果が待っていないという事になります。
上手くやらないと、大抵このへんでお互いに遠慮し合ってしまい「相手が自分の事を好きじゃないんじゃないか?」とか勝手に思いだして「自然消滅」しちゃったりするんですが、この話では適度なイベントを起こしてこうした問題を回避しています。

結論

星4つつけておきます。
うーん、青春時代を通り過ぎた大人も、まだまだこれからの少年少女も、等しく楽しめる作品ではないでしょうか。
イラストは、ヒロインが結構魅力的に描かれていたのは良いのですが、主人公の少年の絵に結構違和感がありました。なんか文章から感じるイメージと、絵から感じるイメージが違ったというか・・・。
どうせ主人公視点でしか話が語られないんだから、主人公の絵を一切排除した方がもっとイメージとして良かったんじゃないかな、なんて思ったりもしました。

おまけ

上記に出てくる「私が実際に会った事のあるツンデレ」に先日まんまとこの本を読ませる事に成功したのですが、読み終わった後にその女性に感想を聞くと「あ〜」と遠い目をした挙げ句「こうやって昔失敗したなあ・・・」とコメントしていました。ついでに「なんで男はこの娘が考えている事が分からないんだろうねぇ・・・」としみじみ。
いや、こんなん普通分からねーって・・・。
男にとって女の子っていつまでたっても不思議がいっぱいだなあ・・・と感じた一冊でした。ヤマグチノボルがこういう女性像をどうやってここまで書けたのか、興味がわいてきますね。