塔の町、あたしたちの街
- 作者: 扇智史,尾崎弘宜
- 出版社/メーカー: KADOKAWA(エンターブレイン)
- 発売日: 2007/03
- メディア: 文庫
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ストーリー
積野辺(つみのべ)と呼ばれる土地がある。街の中には天を貫くかのような巨大な塔がそびえたち、その麓で人々は暮らしている。この街では普通の世界ではあり得ないような奇妙な力――「歪気(わいき)」というエネルギーがあり、それを利用して栄えていた。その巨大なシステムに支えられて存在している街。
主人公の西条なごみはその街に暮らす一人の少女。有名な画家を父に持ち、母の顔を知らない少女。彼女はそんな自分に付き従い、自分を守ろうとする一人の少女皆口華多奈と一緒に暮らしていたのだが、自分のルーツを探る彼女の前に街と自分の生まれに関する大きな謎が迫ってくるのだった。
ズバリ、読みにくい
- 登場人物たちの名前から始まり(守代皆理:かみしろみなり、笹木智都:ささきちず、饗庭和彦:あいばかずひこ、などなど?)
- 世界設定に関する独特の造語も多く(歪気、歪目、摂気筒、歪蟲、翠晶石、結界礎石などなど)
- 意味は分からないけどなんだかスゴそうな技名とか(満火とか、憑羽とか・・・)
- 存在理由の分からないキャラクターが多数出現し(「懐剣」と呼ばれる皆さん?)
- 街を支配する複数の勢力と(守代本家、皆口、仁科、御三家、裏御三家などなど)
- それぞれの思惑(勢力争いと、復讐とか、)
- それぞれの役割などが入り乱れる
・・・といった感じで、全体で通して読むと要らない所が多すぎるなあ・・・という感じ。
正直
ゲームとかにした方がすっきりするんじゃないかな? って感じですね。
アルトネリコとかでっかい塔が建っているって世界観は近いし、なんだか参考にしたのかなあ・・・なんて思ったり。そもそも登場人物たちが、
「――金兄ノ裏、”滅群咲(けしむらさき)”」
なんて技名を叫んでみたり、
「――金弟ノ弐、”錐裁(きりたち)”」
とかとか言ってみたり。あるいは雰囲気たっぷりに、
「木弟ノ影”白絶(しろたえ)”」
とかも言って見たりする。なんか昔KOFとかでこんな感じの技名持っているキャラいなかった? やっぱりゲームって感じです。
凄いのかも知れませんがもう正直ナニが起こっているのかも分からないし、どうせならもうそのままゲームでお願いしますって感じですかね。世界設定そのものはなかなか良くできているようなので、上手く料理すれば面白くなるような気もするけど、文芸作品としてみた場合、作者の自己満足の域を出ていないような気がする。
キャラクターも
主人公の西条なごみと皆口華多奈の二人の思考はちょっと常識から外れていて感情移入しにくかった。もう一歩でレズ一直線って感じだし。特に皆口華多奈は何かと
「愛してるからな」
とか言いまくっているんですが、なんだかなあ、空疎なんだよなあ。
後半、西条なごみは彼女と喧嘩をしまくったりするんですが、その辺りの喧嘩に至る流れと、和解の流れも今イチ掴み辛い。作者的には十分説明しているつもりなのかもしれないけれど(まあそれなりの理由がお互いにある訳ですな)、説明不足だと思う。それで和解するなら喧嘩起きないのと違うかなあ・・・なんて思ったり。
世界観の説明に無駄に文字数を費やすくらいなら、彼ら登場人物のキャラクターとしての奥行きを深くする努力をすべきだったと思う。読み切ってみて思うけど、どう考えても完結していないし、これ一冊で関連用語の説明もせずに放り出されてもサッパリ? ですね。
総合
星2つだなあ・・・。
「永遠のフローズンチョコレート」に続き連続で詰まらなかったので、もうこの作家の本は買わないと思う。
正直ネタ的には良かったと思える所も沢山あったんだけど、いかんせん見せ方が悪すぎる。キャラクターの魅力を引き出しきれていないのも痛いと思う。これはエンターテインメント作品として致命的ではなかろうか? これはなんというか作家のせいというか、編集の責任かなあ・・・適当な所で止めてやれって感じですね。
描写が分かりにくいと言えば「円環少女」とかも凄く分かりにくいんだけど、あっちの造語は基本概念がそれなりにはっきりしているか、または分からなくても作品の魅力が減らない作りになっているのだけど、コッチは完全オリジナルでかつ、話の終着点や行動原理やキャラの描写が曖昧な分、意味不明感が強くて読むのが辛いですね。
そういう意味では「永遠のフローズンチョコレート」の方が楽しめたかもしれない。分からないけど分からないなりに読めたからなあ・・・。
イラストは尾崎弘宣氏ですかね。イラストはちょっと線が細い感じで弱々しいですけど、奥行きとか動きがあるのは個人的には結構好みでしたね。
感想リンク
booklines.net ラノベ365日 まいじゃー推進委員会! Alles ist im Wandel ウパ日記 積読を重ねる日々
他の感想を見ているとそんなに評判は悪くない模様。これはもう作家との相性の問題かもね・・・。