薔薇のマリア(4)LOVE'N KILL

薔薇のマリア (4) LOVE’N’KILL (角川スニーカー文庫)

薔薇のマリア (4) LOVE’N’KILL (角川スニーカー文庫)

ストーリー

サンドランド無統治王国の首都・首都エルデンを襲ったSmCという嵐は去った。
ZOOの面々と「秩序の番人(モラル・キーパーズ)」達の協力によって、なんとかSIXを撃退した結果として、エルデンにはかつての混沌とした平穏と新しいパワーバランスが形成されつつあった。
そんな中、マリアローズは昔通りアンダーグラウンドの侵入者(クラッカー)として活動を再開する。ただし、今回はリーダーのトマトクンと魔導師のサフィニア抜きで。マリアローズは自分がもっとZOOの役に立ちたいという思いから、都合の合った仲間のカタリピンプユリカのメンバーでアンダーグラウンドに潜る事にした。
しかし、その出来事と平行して謎の自称小説家・ルイ・カタルシスと名乗る男が暗躍する。そして”古代九頭竜の呪い”によって決してアンダーグラウンドから出られるはずの無かった異界生物が街に姿をあらわす事になるのだった。そして"鋏使い"、"圧搾魔"、"拳姫"、"超食漢"。いずれ劣らぬ恐るべき化け物達の流出にマリアローズ達は直面する。
一段落ついたかと思ったらこう来たか! と思える4巻です。

今回も

新しいキャラクターが登場してくる訳ですが・・・既に登場していたキャラクターで今回激しく目立つ奴がいます。

アジアン

なんというか・・・アジアンを格好いいと思う日が来るとは思わなかったというか、ただの強いけど変な人じゃなかったんだというか、ダテに1巻の最初に登場している訳じゃないんだ・・・と思わせてくれる大活躍でしたね。

「そう、マリアの言うとおり。マリアはボクのものなんかじゃないよヨ。マリアは誰のものでもない。ボクは、つまり、マリアの崇拝者なんだ。信奉者なんだ。一番の理解者でもある。ボクはマリアの盾であり、剣であり、ようするに騎士だ。たとえその愛が未来永劫ボクに向けられることがなくとも……ああ!」

「キミはボクの太陽だ。闇夜を照らす月で、夜空を彩る輝く星だ。すべてをつつみこむ空だ。母なる大地で、地上をうるおす水だ。ボクの胸を焦がす炎だ。キミはボクのすべてだ。キミがいない世界なんて、意味も価値もない。ボクはキミが拒否しようと、たとえキミがボクを憎もうと、何度でも、何度でも、その機会があれば必ず救うヨ」

うわー暑苦しい・・・ここまで行けばストーカーでも最早立派というか・・・なんだけど、彼の秘密の一端が垣間見えたり、落ち込むマリアローズを励ましたりと、本当に騎士といえそうな活躍を見せてくれます。今までの話でアジアンが気になっている人はこの4巻を読まないともったいないですね。

荊王(ジンワン)

2巻でマリアローズの歯を抜いた抜歯趣味のある変態ですが・・・何故かマリアローズにやっぱり執着します。えーっと、これでマリアローズのファン(?)は一体何人目なんだろうか? まあ本編ではマリアローズが「にっこり微笑むとヤパイ」という感じでアジアンやモリーや、さらにはベアトリーチェまでもがなんだかちょっとおかしくなってますが・・・荊王も強烈です。

「だったら、俺にも望みはあるというわけだ」
「は? なんの望み……?」

これは上で引用したアジアンの台詞「マリアローズは誰のものでもない」を受けての反応ですが、彼に一体何が起きたんだという感じです。もちろん彼の内面もしっかり語られます。

真紅の髪。
あきらめない口許。
強気な唇。
細くても意思の強そうな顎。
素晴らしい、極上の、歯並び。
そして何より——オレンジ色の瞳。運命にあらがう眼差し。死んでたまるか。生きてやる。生きて、生きて、生きて、生き抜いてやる。

荊王には荊王の過去があって、そして今がある。その軌跡が彼をマリアローズに傾倒させる。魅入られた方は堪らないかも知れませんが。
彼以外にもやっぱり以前登場した飛燕(フェイヤン)というかなり濃い人が出てきますが、まあとにかくバトルしたい人なので非常に分かりやすいキャラクターです。

ルイ・カタルシス

金持ちの道楽かと思えば、危険を危険とも思わないような行動を取り、さらにはかつて一度だけ登場したアンダーグラウンドを彷徨う戦士「りりぃ」を「姉さん」と呼び、そしてサランドン無統治王国に君臨するキング・グッターと直接会話をする関係です。そしてさらに、彼の本当の姿は・・・。
そうそう、彼もマリアローズを気に入ります。一体マリアローズには何があるんでしょうか?

話の展開としては

マリアローズが奮闘して、実力の無さにひっくり返って、落ち込んで、そしてまた立ち上がって・・・という流れですが、その過程がつぶさに語られます。
そして合間をぬって多くのキャラクターの心の内が語られて行きます。取り上げていませんが、ユリカやピンプにも、そしてカタリやサフィニアなどなど、全員に見せ場がある豪華な作りと言っていいのではないでしょうか。得にサフィニア好きな人は・・・中々に良い感じです。登場機会は少ないですけど。その辺りは口絵カラーでサフィニアとトマトクンの一こまがピックアップされていますので、試しに見てみると良いかも。

総合

ビックリの星5つ。
正直3巻のあの展開以上の盛り上がりを期待するのは無理だと思っていましたが・・・いやいやとんでもない、その予想の上を行ってくれましたね。
今回は主要登場人物の一人であるはずのトマトクンが実は「寝っぱなし」だったりするんですけど、それでも物語が失速しない所は素晴らしいと思いました。そしてさらには、チョイ役のキャラクターの一人一人にまで愛着を感じさせる辺りは凄いですね。
イラストは相変わらずのBUNBUN氏です。やっぱり白黒より口絵カラーの方がムードがあっていいですね。やっぱり一度イラストが全部カラーで読んでみたいような・・・。

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