SAS スペシャル・アナスタシア・サービス(2)

SAS 2 (HJ文庫)

SAS 2 (HJ文庫)

本当にハズレがここのところ無いな。ラノベ脳でもレベルアップしたんだろうか?

ストーリー

山階立夏(やましなりっか)と双子の妹・紗友(さゆ)が遠くバルト海傍の小国・リヴォニアの王位継承権を持っているという事実が明らかになり、そして彼らを守るために3人の少女が現れた。
少女たちはそれぞれ、アナスタシア、フランツィスカ、エーファと名乗り、彼らのガードを開始する。
結果として敵の襲撃を退けた立夏たちだったが、リヴォニアが火薬庫になる可能性を持っている限り完全に危険が去った訳ではないため、少女3人は相変わらず山階家に常駐している状態。立夏はアナスタシア(アーニャ)と”バディ”を組んで同じ部屋で生活し、その上で戦闘訓練を少女3人から受け続けていた。妹の紗友を守るために。
しかし徐々に変化が訪れる彼らの関係。そしてまたしても狙われる立夏と紗友。彼らは戦い抜く事が出来るか? というガンアクション作品の2巻目です。

おお〜

1巻で読むのをストップしなくて良かった。
アクションシーンこそ1巻の方が派手ではありますが、2巻も負けじとリアリズムのあるアクションシーンを描写してくれている所が嬉しいですね。基本的に実在の武装しか出てこないというのも好印象です。
アクションシーン自体は1巻の時より減った感じですが、それを補ってありあまる良い所が出てきてます。
それは・・・。

恋愛小説

としての魅力がアップしましたね。
主人公の立夏が「真面目に頑張る少年」で、派手さはないですけど真面目さで存在感を主張してくれます。

「これは……やばいな……」立夏は独り言をつぶやいた。「楽しいのかもしれない、俺は……」

戦う力を身につけるというための厳しい訓練に加え、語学や数学などの学習も平行して行っていた立夏が、その成果を感じた時の発言ですね。前向きに物事にぶつかって行こうという姿勢が中々に魅力的です。実際にこういう少年がいたら、モテるでしょうねぇ・・・としみじみ感じたり。

そして

やはり見逃せないのがヒロイン(?)のアナスタシアの微妙な変化です。
その描写に派手さはありません。あからさまに萌えを狙ったような台詞などもありません。淡々と彼女の内面が描かれて行くのですが、そのあたりがとても良い。

立夏が照れくさそうにしゃべるあの話し方は、なんとなくアナスタシア個人のためだけに向けられるべきものだ、と思ってしまう。それは明確に不自然な感情だった。守護する対象が誰であれ、アナスタシアたち護衛は対象を守護するためだけに全力を尽くす。そこに信頼関係以外のものが必要とは思われなかった。
じゃあ、今自分がここに抱いているこの感情はなんだろう、と思う。
かすかな痛みを伴った、胸の奥の方にごく小さな針の刺さったような――。

「そりゃ、恋じゃな」(大滝秀治南アルプスの天然水CM)。
という塩梅です。良い。実に良い。ゆっくりと自分が「花」である事を思い出し始めるような感じがとても良いです。

もちろん

双子の妹かつ、「どーも立夏を異性として見ている」紗友の方の描写も良いのですね。

先頭集団から遅れまいと、立夏は全力で走っていた。その横顔は真剣そのもので、男の子なんだな、と紗友は思う。どちらかというとみんなでまとまって、仲のいい友達とペースを合わせて走る紗友とは違う。先頭にくらいつくように、勝負とか、あるいは勝負とは関係ないのかもしれないが、自分の精一杯の力でどこまでやれるのか試す顔だ。
胸の奥で、ドキリ、となにか波打つ感じがある。立夏のことはすべて知っていると自負していた紗友にとっても、それはなにか初めて感じるような鼓動だった。

「放課後の校庭を走る君がいた〜♪」(村下 孝蔵@初恋)
うんうん、こちらはこちらで青春な感じがとても良いです。淡くて痛くて・・・そのくせ暖かいような感じ。

ストーリー展開は

  • 色々な陰謀が出てきているのに護衛が3人の少女でいいのだろうか?

とか、

  • いきなり家を襲撃されてご近所は大丈夫なんだろうか?

とか、

  • えーっとそれは護衛対象と単なるデートをしているのでは?

とかの疑問が残らない訳ではないのですが、その辺りの都合の良い解釈こそライトノベルの醍醐味とも言えなくもないので、本当に都合良く解釈してしまいました。
それ以外の魅力が十分にあると思えたので、脳内フィルターでカット、カット、カット。うん、面白い。

総合

星4。次も読む。
1巻ではどうなる事かと思ったのだけど、この2巻の方がずっと面白くなってきているという感じですね。とにかく真面目な描写が好み。
恋愛の方はアナスタシアが立夏を意識し出した関係で、このまま放っておいたら本当にスペシャルな感じのアナスタシアのサービスシーンが読めてしまいそうな感じがドキドキです
あと2人の護衛も奥行きがグッと深くなった感じもしますしね。今回はフランツィスカがいい味を出していました。これでもう少し敵方とかに魅力的な悪役が出てきたり、サブキャラでやっぱり味のあるオッサン系キャラとか出てくると、もの凄く楽しくなるんじゃなかろうか、という気がしてきています。普通に3巻が楽しみですね。
まったくモー助氏のイラストの方は1巻と比べてかなり良くなったなあという印象がありますね。1巻の時は単に時間がなかったのかなあ? とにかくまあ2巻の水準なら私は、まあ、いいかな・・・?