薔薇のマリアVer0 僕の蹉跌と再生の日々
薔薇のマリアVer0 僕の蹉跌と再生の日々 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 十文字青,BUNBUN
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/04/28
- メディア: 文庫
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ストーリー
サンランド無統治王国・首都エルデン。大量の腐敗と欲望を詰め込んだ街の一角に一人の美貌のクラッカー(侵入者)がいた。
名をマリアローズという。
自分が全てを失った街・エルデンでやり直す事を決意して、今日も一人でアンダーグラウンドに潜り込む。しかし、実力は今イチ。あるのは妙な意地と反発心と・・・あとはほんの少しのお金だけ。
これは「薔薇のマリア」本編1巻の時間を遡って、マリアローズがクラン・ZOOのメンバーと如何にして出会ったか、そして如何にしてZOOに入ったか、さらにはアジアンとどのようにして出会ったかといった辺りが描かれます。ちなみにコロナも出ますよ。という外伝の1巻です。
実質的には
1巻、と言っていいかもしれないですね。
この話の構想はひょっとしたら1巻出版前からあったのかも知れませんが、微妙に盛り上がりに欠けるという意味で外伝に回したのかも知れません。・・・シリーズを既に読んでいる私としては「これを1巻として出版しても良かったんじゃ?」と思わなくもないですが、まあどうでも良いかも知れませんね。
この「Ver0」ではマリアローズに視点が(ほぼ)固定されて話が作られているので、マリアローズファンの人は必見ですね。相変わらず複雑で名状しがたいグネグネと捻くれ曲がった内面がステキです。
一人で生きてゆくのは、つらいから。
その気持ちはわかる。
確かに、楽じゃない。楽じゃないとも。
けれども、誰かと寄り添っているのだって、結構、つらい。
こんな内面を垣間見せてくれます。つまりクラン・ZOOにすんなり溶け込んだという訳ではないという事ですね。ちなみにマリアローズはこんな事を口にしています。
「あのさ、僕が……昼飯時(ランチタイム)に入るってのはどうかな」
「ダメ」
あのアジアンがこのように返答しているのですが・・・その理由については作品内でご確認を。彼がどこまで本心を口にしているかは定かではないですが。
ZOOの面々とは
最初は色々ありますね。
きっかけはトマトクンとの出会いですが、そこから取りあえずZOOに参加する事になったのはカタリの持っていた儲け話「閉鎖魔宮」と「赤の男爵」と「劫火」につられてフラフラとZOOについていってしまった事が決定的でしょうか。
そして最初の侵入でマリアローズは大きな失敗をしてしまいます。
「お前はお客さんのつもりでいるのかもしれん。だが、いったん俺の集団に組みこまれたからには、それだと困る。はっきりいって、お前が死ぬのと、お前を助けようとして他の一人が死ぬのと、どちらかを選ばなきゃならんのなら、俺は迷わずお前を見捨てる」
これを言ったのはトマトクンなんですが・・・マリアローズは小さな反発しか出来ず、結果として大ヘコミし、八つ当たりやら衝動買いに走ったりとか、アジアンに絡んだりとか・・・色々しでかします。うーんみっともない。でもそこがマリアローズの魅力ですね。
ちなみに
マリアローズは「マリアローズがクラン・ZOOにいてくれると私が助かる」とユリカに言われたりするんですが・・・その仰天理由&仰天イラストは必見ですね。確かにね〜と納得出来る理由なのがまたおかしいです。
ついでのアジアン語録
「命ある限りボクはキミを愛す。極限愛(ラヴ・マックス)。もとはといえばキミが悪いんだヨ? キミの美しさが、かわいらしさが。キミの存在そのものが。ああ、キミは何て罪作りな美と愛の天使だっ」
「たとえ一時忘れたとしても、キミはボクの夢に住んでいる。僕は夜ごとキミに会うんだ。何度忘れても思い出す。ボクの愛は毎日更新される。新しく、より強固なものへと」
やはり誰がなんと言おうとアジアンは一種の強力な変態である事だけは間違いないと思う・・・けど最近は私も結構お気に入りのキャラなのが困ったもんです。
ちなみに、マリアローズとアジアンの最初の出会いのシーンも描かれますのでお見逃しなく。
総合
星4つ。
外伝ですが話の作りといい、ラスト付近に向けた盛り上がりといい、実に好きです。
後半の方は露骨にモチーフをWizardryに求めている感じはありますが、私は両方とも好きなのでなんの問題もありませんでしたね。
とにかくマリアローズに視点が固定されているので最新刊とかと比べると読みやすく、本編を読んだ後だと読みやすさにビックリしたりします。まあ、別に今の視点移動型の語り口がキライという訳でもないんですけどね〜。
イラストはBUNBUN氏です。もう特に心配する事なく読んでいますね。相変わらずカラーイラストはステキです。が、白黒イラストの方はもうちょっと動きのあるシーンを絵にして欲しかったというのが正直な所ですかね。・・・アジアンを蹴り落とす所とか?