とある魔術の禁書目録(15)

とある魔術の禁書目録 15 (15) (電撃文庫 か 12-16)
とある魔術の禁書目録 15 (15) (電撃文庫 か 12-16)鎌池 和馬

メディアワークス 2008-01-10
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おすすめ平均 star
starかっこいいです
star主人公不在の救われないお話
star一方さん、覚醒

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いや、月末に電撃文庫読んでる辺りでなにかこう色々とおかしい感じがしますけど・・・。

ストーリー

本編主人公の上条当麻がフランスに移動中に起こる、学園都市内での争いを描いた一冊。
園都市——科学によって作られた光の都の影の部分は、光が強ければ強い程暗く、濃く現れる。そしてその中に自分の身を浸したものにあの一方通行の姿や、土御門などの姿もあった。
時期をほぼ同じくして、同時多発的に発生するテロリズム的な事件。そこは血なまぐさい学園都市の真の姿に触れてしまったもの達で溢れかえる暴力の都の姿があった。「グループ」「スクール」「ブロック」「アイテム」「メンバー」などの名前を付けられた彼らは、それぞれの目的の元激突を繰り返す・・・そこに光明はあるか。
主人公が一瞬たりとも出て来ない15巻です。

前巻で

「ヒロインが誰だか分からない話」と書きましたが、さらに分からないですね。
今回は上条当麻も出てきませんし、もちろんインデックスも出てきません。初登場のキャラクターが山のように投入されては、あっという間に血煙の中に消えて行きます。そこに少年少女/大人子供の区別は無く、弱いものが単純に滅んで行くという構図があるだけ。
そしてそれを遥か彼方から見下ろしているであろうアレイスターがいるだけです。学園都市内の小集団のそれぞれの目的は? そしてアレイスターの目的は一体何か? その一端が今回明かされる事になります。

「あれは、そんなものではないわ」

登場人物の一人が冷笑とともに発するアレイスターの真実の欠片。アレイスターの本当は一体どこにあるのでしょうか。

しかし

血なまぐさい話でしたね。想像以上に。
本作始まって以来の死人の発生量ではないでしょうか。もちろん今まででもかなり激烈な戦闘シーンが描かれた事はありましたが、今回程はっきりと人が死んで行く姿を書かれた事は恐らくなかったと思います。
その中で一際深く沈み行く一方通行の姿が——こういってはなんですが——ある意味において純粋で美しいです。それはラストシーン付近まで読めば分かるに違いありません。上条当麻と一方通行の差は実際のところ本当に僅かなものです。

「これが超一流の悪党だ、クソ野郎」

一つの道を極める事は別の道に通じるという事でしょうか・・・そして彼にとって唯一の救いと言えばやはりこの人、

「大丈夫だよ、ってミサカはミサカは手を伸ばしてみる」

そして

もう一人注目すべき人物が出てきます。それは上条当麻の匂いを刻み付けた無能力者の少年・浜面仕上です。
彼は超能力者が蔓延るこの話においてほとんど無力に近い存在ですが、彼の嘆きは当麻の嘆き、彼の怒りは当麻の怒りに直結している事に気がつくはずです。そしてそれに気がついたとき・・・彼は大仕事をやってのけます。

総合

いや、面白かったですね。星4つかな。
今回は科学一辺倒の作りで、なんだか色々な意味で「それはどうなのよ〜?」と突っ込みたくなる箇所が満載だったのも事実ですが、まあ今更この話に細かいおかしな所を探した所で意味はないでしょう。そんなものは所詮舞台上の小道具に過ぎませんし、例えハリボテでも役者がそれを「選定の剣」だというのならそれは「選定の剣」なんですよという所でしょうか。
そして最後の最後に出てくる一つの言葉を読んだ時——相当数の読者が2巻のラストシーン付近を思い出したのではないでしょうか。嫌が応にも緊張感の高まる禁書目録シリーズ。もはや着陸地点の予想は困難になってきました。次の話が楽しみです。

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