パーフェクト・ブラッド

パーフェクト・ブラッド 1 (1) (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 10-2)
パーフェクト・ブラッド 1 (1) (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 10-2)赤井 紅介

集英社 2008-01
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うーむ・・・。

ストーリー

魔法士と呼ばれる人々がいる。魔道書を身につけ、それに秘められた力を解放して力を得る人間達の事だ。
彼らは一般の人々に畏れられた。なぜならば魔法士は人間に余るだけの大きな力があったからだ。そしてさらには魔法士には誰でもなれる訳ではなく、魔法士としての才能——つまり血統とも言うべき遺伝上の資質——が必ず必要になったからだ。
主人公の裕樹はそんな魔法士を嫌う一人の高校生。彼はある日偶然に銀行強盗に出会ってしまう。それは暴走した魔法士の仕業だった。彼が半ば自分の無事を諦めかけた時、一人の別の魔法士が姿を現した。金髪金眼の一人の少女。その少女は炎を操って強盗達を打ち倒していくのだが、裕樹はそのトラブルに巻き込まれた別の少女を守ろうとして致命傷を負ってしまう。そうして彼の命は・・・金髪金眼の魔法士によってなんとか繋げられた。文字通り、一心同体のような形で。
変わった設定で綴られるファンタジー作品の1巻。

なんですが・・・

うーん、あらゆる所で唐突なんですよね。
というか、キャラクターの心の振幅が大き過ぎてちょっと付いていけない。もの凄い震度の地震を記録した地震計のグラフみたいです。
主人公が襲われた少女・雪子(ゆきこ)を身を挺して助けるとかまではまあ許せましたが、そのあと棚ぼた的なチョイエロ展開で主人公が自分を助けた魔法士の少女・透華(とうか)に突然ケモノっぽくなったかと思えば*1、そんな事はなかった事みたいに透華とにこやかに話し合い*2、その直後には不用意な一言で怒りの言葉を容赦なくぶつけあう*3・・・。そしてさらにその怒りが理不尽なものであったという事になると途端に親密な関係になり*4、お互いを意識し始めて*5・・・。
正直説明不足というか、心理描写が完全に不足していてある意味もの凄く非人間的なキャラクターになっているなあとか思いました。
喜怒哀楽の理由が正体不明でなんだか電波(質の悪い意味で)を受信しているキャラクターだらけのような気がします。これが学園ラブコメだったらまだ許容範囲だったかもしれないけど・・・どーも作者はシリアスな作品を書きたいみたいだし・・・。謎です。

話の

大まかな筋は悪くないと思うんですが、細かい所で「なんかそれ無理ねえか?」と思うシーンが出てきます。
警察権力には簡単に介入出来るくせに、マスコミに対しての報道規制が全く出来ないところとか、重要な情報を簡単に部外者に漏らしてしまったりとか、超が付くほどの重要人物のボディガードが実質二人しかいなくてあからさまな「ザル」でそれを誰も不思議に思っていなかったりとか。
こんなにいい加減なのにやっていける世界規模の組織って何じゃらほい? という違和感が常につきまとってしまいましたね。話の重要な転換点でこういう杜撰な展開があると、萎えますねえ・・・。
邪気眼的な魔法の名称とか、ご都合主義的な話の展開とかはまあラノベの範囲内になんとか収めたかな〜って感じがするのに、もったいない感じですね。

総合

星2つ以上はやれないなあ・・・。
キャラクターの性格設定(?)もちょっと激し過ぎて付いていけない所がありましたし、全体の世界観が悪くなくても細かい所——特に現実的とラノベ世界が交錯する部分——でいい加減と言うか間に合わせという感じがしてかなり痛かったですね。どちらかだけでも自然な感じで処理してくれれば星3だったとは思います。
なんだか最後まで「設定に凝ったは良いけど人間描写の力が足りない」という印象を拭えませんでした。人物描写に失敗した(?)「とある魔術の禁書目録*6だと思ってくれればなんとなく分かりやすいかも知れません。
2巻、出るかなあ・・・。

*1:これは状況的に分からんでもない。

*2:まあまだ許せるかな?

*3:ここまで来るともう「えぇ〜!?」って感じで。

*4:おーい、付いていけねえぞー!?

*5:・・・勝手にやっとれ・・・となる

*6:最近良く引き合いに出るなあ・・・。