空トブ人ビト(2)——ふたつめの至宝

空トブ人ビトふたつめの至宝 (集英社スーパーダッシュ文庫 み 2-3)
空トブ人ビトふたつめの至宝 (集英社スーパーダッシュ文庫 み 2-3)三上 康明

集英社 2008-02
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ストーリー

世界を股にかけて空を飛ぶ武装商団・ギガント。その実体は国際通信士の集団だった。
そして国際通信士に憧れていた通信士・ハルタは、事件の中でギガントに所属する事になり、かつての仲間のサヤと共に二人で晴れて国際通信士となった。そして二人はそのままギガントと共に別の国へ趣く事になったのだが、そこにはまた事件の匂いがしていた。
訪れたのは——波翼教国。
そこは国際通信士となったハルタとサヤの教育係であり、ギガントの会計士でもあるルーニーの故郷だった。ルーニーはべらんめぇ調で、金に五月蝿い男だったが・・・故郷に戻ることになって顔色を変えた。ルーニーは人を波翼教国で「殺して」いるのだという。
その殺した相手とは、ローラ・キエザという名前の少女。波翼教国第四十九代国主で、「存命中」である。しかしその少女を「殺した」というルーニー。彼と彼女はかつて仲の良い幼馴染みであり——慕いあう関係でもあったのだが、今では方や国際通信士となり、方や国主になっていた。そして波翼教国の国主は必ず18歳の誕生日で死ぬと言われており、それがあと3日後に迫っていたのだった。
そんな状況の中、波翼教国に降り立ったハルタは一人の少女と出会う。それが物語の進む方向を大きく変える出会いとなったのだった。
空トブ人ビトの2巻です。

1巻の時も思いましたが

キャラクター造形が好きですね。特に主人公のハルタ
無茶な夢と希望に満ちあふれていて、いつでも猪突猛進、気が利かないけど優しくて、危険な事も必要なら直ぐにやってしまうという少年です。
そうですねえ・・・助けた女の子に馬鹿を100回言われて、100回殴られて——つまり良いようにボッコボコにされた挙げ句、最後にご褒美のキスを貰うような、そんな性格の若者と言えば結構近いんじゃないでしょうか。

「通信士の、仕事なんかじゃないじゃん……人を殴ることなんて」
「あー、いや、それはだな」
ずきずきする頭でハルタは考え、
「依頼が、ほら、聞こえたから」
「依頼?」
「あの男の頬に、一発、固いゲンコツを配達してくれ——っていう」

そういう気持を受け取ったら、自分の有利不利を考える前に体が動いているという、そんな少年です。

それに

今回も登場するヒロイン(?)のサヤも、目立ちませんが色々と彼女なりの個性と見せ場を発揮してくれます。
知性派+暴力派という手に負えないタイプの女性ですが、その心の動きは実に自然ですね。綺麗でもなければ汚くもないというところがとても好ましいですね。

「……ハルタは、国際通信士になりたかったんでしょ。願いが叶ってよかったじゃない。でも私は——私は、命は助かった。でもなにもかも失った。これじゃあ、死んだのといっしょじゃない……」

これをハルタへの八つ当たりだと分かっているのですが、それを言うのを止められないサヤ。そういうところがとても人間的です。もちろんそれだけではありません。

「私が救う——今度は私がハルタを助ける番」

守られてばかりだったり、助けられてばかりだったりするヒロインではありません。

今回は

ギガントの会計士のルーニーと、波翼教国の国主のローラの・・・微妙な関係ももちろんありますが、期限付きの命というのが物語を嫌が応にも盛り上げてくれます。
さらには今回も登場する事になる七大国に伝わる至宝である七色に輝く石。そしてハルタの所属するギガント<黒き調停者>、セリオン<流通王>、ドラゴニア<戦場の商人>という3つの国際商団の勢力争いが物語に華を添える事になります
でも結局の所、物語のキモはハルタが出会った波翼教国の少女・マリアの一言にハルタがどう応えるのか——という事になるんでしょうね。

ハルタぁ……」
すぅ、と垂れた一滴が、
「私、ほんとうは、死にたくなんかないよ……」

さて、国際通信士ハルタはマリアの望むものをどうやって運ぶのでしょうか?

総合

星4つ。
空を飛ぶものに実は弱かったのか俺? という疑問を感じなくもないですが、いや多分他の人が読んでも面白いと思いますよ。
あまり凝った所はありませんが、ライトノベルとして楽しむための要点をバッチリ押さえているという感じがします。恋模様なんかもあったりしますが、その辺りは程々に、でも熱血がちょっと強めには言っているという感じの冒険小説ですね。
読了感も良く、安心して薦められますね。うんうん、次も出たらちゃんと読むよ〜。