日本上空いらっしゃいませ(2)

日本上空いらっしゃいませ2 (HJ文庫 さ 2-1-2)
日本上空いらっしゃいませ2 (HJ文庫 さ 2-1-2)佐々原史緒  タスクオーナ

ホビージャパン 2008-04-01
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ストーリー

「上つ國」と名乗る謎の浮遊大陸と、そこに暮らす魔法使いの人々が突如として日本上空に現れてからしばらくの時間が過ぎていた。
彼らの揉め事に巻き込まれた元陸上少年・峰岸光は当初こそ困惑したものの、現在では「上つ國」とともにやって来た王女・ヒカル子に日常を浸食されるのが当たり前になりつつあった。
若い少年と若い少女。しかも少女は美しく、少年に対して懸想しているという理想的な条件付き。そんな二人が一緒に過ごす時間が増えれば当然自然と・・・いや、一部横やり付きではあるものの、二人の仲は深まる。まあお決まりとも言える邪魔があってなかなか思うようにはいかないものの、上手く行っていると思える日々が続いていた。
しかし、禍福はあざなえる縄のごとしとは良く言ったもので、ヒカル子にある異変が起き始めていた。そしてそれと同時に姿を眩ましていた「ちょっとなんちゃってテロリスト」のアーノルド・シュバイツメッカーがまたちらちらと姿を現し始めて、事態は一気に混迷の度合いを深めて暴走を開始する・・・。
果たして峰岸光少年と、ヒカル子の行く手に待ち受ける運命とは? 完結編となる2巻です。

1巻と同じに

気の抜ける基本設定はそのままに、物語を上手く盛り上げているように感じましたね。
でも流石に1巻の時程のインパクトはないですけど、やっぱり女王スズキ・イチローとか、王女タムラ・リョウコとか、外務大臣ナカタ・ヒデトシとかの名前を見るとなんとなく腰砕けになります。メインの女性キャラにはナカヤマ・マサシ(通称:ゴン子)とかいますしね。なんだそら、という感覚はあちこちにあります。
ただ、微妙にキャラの印象が薄いのが気になった感じのあった2巻でもありました。1巻の時は名前のインパクトで押し切られた感じがありますけど、そのインパクトが薄れた2巻でそんな気がするようになってきたという所でしょうか。
いや、決して悪い訳ではないんですけど、その・・・「はっ!?」っとするような繊細な一瞬の描写に欠けるというか・・・灰汁が無いので読みやすい分、強く惹き付けるものも無い・・・のかなあ・・・なんて思います。
確かに「慣れ」って怖いですね。「上つ國」の人も大変です。

そうは言っても

全体としてはかなり強引な展開をするのですが、それでも上手く繋げて話を作っているなあという感じはします。
あの1巻のほのぼの展開から想像できないような怒濤の展開でして、「上つ國」の秘密やら、なんだか色々大ピンチだったりとか、陰謀が噴出したりとか、有象無象の一般大衆がうざいやらムカつくやら・・・良い感じに盛り上げてくれます。
後半に入ってからの展開はちょっとジェットコースター入っていますが、意外に主人公に感情移入しやすい作りになっているのでするすると読めるのではないでしょうか。
ただ、強いて言えば「コメディ」か「シリアス」か、をきっちり分けて書いた方が良かったんじゃないかなあと思いましたね。まあどんなコメディ作品にだってある程度のシリアス要素はあるもんですが、この話は「コメディ」と「シリアス」の落差が大き過ぎてちょっと戸惑ったという感じがあります。青春的シリアスならともかく、政治的シリアスとか、悲劇的シリアスとか、ちょっと合わないなあと。

総合

やっぱり星3つかなあ・・・。
読ませてくれるんですけどやっぱりもう一つパワーが足りないような気がするんですよね。
上でも書いていましたが、もうちょっとコメディ寄り、というかラブコメ寄りにシフトした作りにした方が楽しくなったような気がします。そういう作品だったらまた印象が違うんだろうけどなあ・・・ま、これもこの作者の持ち味なのかな?
なんとなく全体で悪く書いているような感想になってしまっていますが、面白い事は面白いんですよ? でもどこか「惜しいなあ・・・」と思わせる作りと言うか・・・そんな作品でしょうか。
ところで、「人の噂も七十五日」って言葉がこの話に出てきますが、ひょっとしてラノベの旬も七十五日? 2ヶ月と半か。言われてみると人気が微妙だと思われる作品が3ヶ月くらいの間、新作がリリースされないと微妙に「あれ? ・・・ひょっとして打ち切り?」って感じがしますもんね。・・・ラノベ作家の人は大変だ。
本当、某ネズミの国みたいに定期的に金突っ込んで話題作りをしないと人間ってばすぐ興味を無くすもんなあ・・・って思った時点で私の思考がストップ。「じゃあ定期的に話題作りをすれば何もかもOKなんじゃねえの!?」と思いました、はい。という訳で微妙に納得いきません。

感想リンク