銀月のソルトレージュ(5)
銀月のソルトレージュ5 針のように細い銀の月 (富士見ファンタジア文庫 147-6) | |
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本当に書影がねえなあ・・・!
ストーリー
かつて一人の魔女がいた。
その魔女は自らの力を大量の「本」の形にして封じたが、封じた力は少なくない数の人間を蝕んだ。そして蝕まれた人間はそのまま不死者(レヴナント)となり、現代を未だにさまようという。
不死者の一人であるジネットは、失われたリュカの存在を追って旅に出たが、その旅先で遂にリュカを見出す事が出来た。そして彼ら二人は物語の始まった場所である街・フェルツヴェンに戻ってくる。
しかし、最後の最後に巻き起こった大きな問題が一つ。
フィオル・キセルメル・ハルヴァンの創り出した魔法体系の、全面的な消滅。
魔法の消滅は即ち、その魔法によって生きている不死者達の消滅も意味していた・・・。
リュカはこの事態にどう対するのか、当事者のジネットはどうするのか、そして何故フィオルの創り出した魔法が消える事になるのか・・・謎が全て明かされる事になる最終巻です。
往きて帰りし物語
という感じでしょうか。
色々とあっちこっちしましたけど、最終的な謎の中心は「魔女の誕生」と「一つ目の嘘」の二つに絞られる訳で、その二つが明らかになる時が物語の終りの時ですね。で、これらに一番近い所にいるのはリュカな訳ですから、リュカのあるところに謎を解く鍵もある・・・という事になりますか。
最終的な”特異点”こそリュカ本人ではありませんが、彼が「一つ目の嘘」で創り出された存在である以上謎の中心も彼の傍にある事だけは間違いない訳ですね。
まあ
そういうストーリーの本筋はともかくとして、今回はジネットとアリスの可愛らしい所が沢山見られる話になっています。
アリスは相変わらずのアリス節(まあ今まで通り?)です。
「なにせ嬉しいことがあったのもので、浮かれてるんです。なんせ浮かれてるんですから、押しだって強くなりますよ?」
そのまま押し倒されてしまえ——じゃなかった押し倒してしまえリュカ。そしてこうなんというかもの凄く色っぽい展開にだね・・・。しかもアリスはかなり懐の広い女性であるからして、ライトノベルでも比較的珍しい納得ずくの3Pが(以下略)。
・・・まあその、女性作家の書く作品には絶対出てきそうにないキャラですが、良いですな、良いですな〜。
で、
アリスは待たされた時間で肝が据わったらしいですが、それに加えて変化のあったのがジネットで、完全にデレモードに入っていますね。
「むろん君にはアリスという女性がいるわけだから、私としても積極的に誘惑するつもりはない。が、それはともかくとして、君にその意思があるのなら、その……」
何やら言いよどみつつ、もごもごとした声で、
「その時には迷うことなく応えるつもりでいると——」
いーからさっさと抱いちまえ。
総合
ボルトで固定したような相変わらずの星4つ。
うーん、全体で見た場合には
「もったいない話だった・・・」
でしょうか。
多くの人を惹き付けるにはちょっと説明がヘタというか設定が凝りすぎている感じがするし、そうはいいつつも一人一人のキャラクターは魅力的に書かれているし、でも出版社の意向か何かで描写が削られていて可哀想という感じもしますし・・・なんとも運が無いですね。
次のシリーズでは「今までに使い古されている分かりやすいテーマ」をアレンジするような感じで話を作るというのはどうでしょうかね? 狼男とか、妖怪とか、お化けとか。
そういう基本のイメージが既に読者の頭にあるようなものであれば凝ったネタでもいい塩梅で話が作れるんではないでしょうか。キャラクターのイメージ作りが非常に上手いという印象がありますので、使い古されたネタでも十分楽しい作品が書けそうな感じがします。
それとイラストの得能正太郎氏は最終巻まで非常に良い仕事をしたな〜という感じがします。表紙、口絵、本文内挿絵のどれも良いですが個人的には某人物を描いたp133ですね。うーん渋い・・・。