オタクを主語にしろ。

そもそも、ぼくには「自分に好意を寄せてほしい」という欲望はないと思う。エロゲはプレイするけれども、別にエロゲのキャラクタと恋愛したいわけではない。
そしてぼくはとくに自分が少数派だとは思わない。ぼくみたいな人間はたくさんいると考える。「オタクは皆美少女キャラに好かれたがっている」というのは、やはり極論だろう。
端的にいうなら、「オタクは××だ」と「オタク」を主語にする言説のほとんどは何かしらの限界を抱えている。そうじゃないひとが必ずいるからだ。それは自分に見えている範囲の「オタク」を語っているに過ぎない。
だから、「オタク」を主語にするときは注意が必要である。もちろん、それは「男性」とか「日本人」とか「腐女子」でも同じこと。
人間の多様性をあなどるべきではない。
Something Orange(「オタク」を主語にするな。)

個人的な話から

いきなりオタク全体の話にすっとんでいるのはともかくとして、こういう事を言いたくなる気持もわからんではないのだけど・・・結構疑問。
人間が多様性に富んでいるなどという事はオタクだろうと非オタクだろうと、多少は考えた事がある人間なら誰でも思い至る事だろうからだ。
それに、ここでいう「限界」というのも「その時の指し示したい存在」の詳細な説明が省略されているだけで、言葉を発している人間からすれば完璧に定義されて居るのかも知れない。例えば、

「(二次元に本気で恋心を抱ける)オタクは」

とかね。

ちなみに

これも「そういうひともいるよね」というレベルの話だと思うんだよね。

エロゲはプレイするけれども、別にエロゲのキャラクタと恋愛したいわけではない。

「オタクは皆美少女キャラに好かれたがっている」というのは、やはり極論だろう。

なんて発言については改めて言う程の事でもないように感じるな。
そりゃ2次元に対して愛情を信じている特殊な輩も中にはいるだろうが(それこそ人間の多様性は侮れん!)、一般的には少数派だろうから・・・いやそんな次元じゃないな、こんなのは言うまでも無くほんっとーに当たり前の事と言ってもいいというか・・・書くまでもない話だよね。
つーかぶっちゃけそれこそオタクしかこんな発想(エロゲのキャラクタと恋愛したいとか)は出来ないだろうし、持たないだろうから、もしそういう嗜好を一切持った事がない人間が何故か注意が必要だと書いているわりには不注意にオタクについて語っているこのエントリを読んだら、

「え!? こんなこと考えたりするの!? オタクって!? うわ・・・ひょっとして・・・?」

となるのだな。ちなみにうちの奥さんがリアルにそう反応してしまった・・・。
結果として、

「いや、そういう人もいるかもしんないって話であって俺とか含むみんながみんなそうじゃないって」

という似たような話を僕がするはめになってしまった。僕ももはやエロゲに手を出している人間だったりする訳だから他人事じゃねぇぜ!
だから読み返していて僕はこう思った。彼は、人間(この場合はオタクだな)の多様性を否定し、偏見や差別を助長したいのか、それともそれらを止めてほしいと思っているのかわかんねえよ・・・と思ったのね。
つまり誤解を正すどころか、新たな誤解を生みかねない、そういうことですね。

そもそも人間は

国籍、人種、宗教、能力、趣味、住所、氏名、年齢、性別、職業、ツベルクリン反応、郵便番号・・・ありとあらゆる要素を使って他者と自分を区別して、自分というものを確認している。それらの区別が良い方向に働いた時は、

「個性的で特殊な才能がある」

などと言われて重宝がられ、悪い方向に働いた時は、

「得体が知れず不気味だ」

と言われたりして白い目で見られたりする。
どんなに口を酸っぱくして言った所でそんなもんだ。人類発祥から現在までこれは変わらぬ伝統と言ってしまってもいいだろう。

だから

結局の所レッテル張りをされたくないのであれば、レッテル張りが有効でない状況を作り出す他ないのだろうと僕は思っている。
いくら、「人間は多様性に富んでいるのだから、適当な言葉で大きく括ってしまうのは良くない」と言った所で、上で書いた通り差別は無くならないだろう。
人は区別、悪く言えば差別を明確にするためにそうした言葉や組織やこの社会を作っているからだと僕は思う。というかこの元エントリの通りに振る舞ったらあらゆる主語が使えなくなるでしょう? あらゆる単語の意味は、個々人の認識の中では全て違うのだから。
「私」や「あなた」や「hobo_king」だってそうだ。どこまでの事を指しているか、人によって違うだろう。それこそ同じだって誰が言い切れるんだろう?

ただ

エントリにある通り、主語が大きくなればなる程発言に気を使わなければならなくなる、というのは事実だろう。舌禍事件で席を追われた政治家なんかは結構思い出せるからねえ・・・。
しかし社会的弱者が幾ら「レッテルを張るな〜!」と叫んだ所で大抵は強者の声にかき消されてしまうのが世の常で、しまいには同じ嗜好を持った人間が寄り集まって、

「ちくしょう・・・差別しやがって・・・」

ルサンチマン混じりの怨念を抱えるのがオチだと個人的には思う。

じゃあ

僕ならどうするかって?
僕なら「ありとあらゆる場面でオタクを主語にしまくってしまう」。
どんどこどこどこオタクという言葉を使いまくって、オタクという言葉の輪郭を曖昧にしてしまうのだ。オタクと言えども実は色々な種類がいるという事、オタクと呼ばれる人間も実は多種多様な側面を持っているということを積極的に発信して、ふくよかで豊穣な輪郭を持つ存在にしてしまうのだ。
元々明確な区別がしにくい言葉なのだから、使えば使う程あいまいになるだろう。
それこそ、

「進んだ時計の針を戻すことはできないが、自らの手で進めることはできる」

ってところかな?
もちろんそれでも差別やレッテル張りはなくならないだろうけども、変わっていく可能性があるからね。

だから

言ってしまおう。
僕はオタクだ。オタクだけれども————だからなんだっていうんだろう?

  • ディズニーランドにも喜んでホイホイ行けば(だってやっぱり楽しいものな?)、
  • スイーツも美味しく食べてしまうし(だって食べればやっぱり美味しいものは美味しいものな?)、
  • ファッションにだって興味もあるし(やっぱり未だにモテたいものな?)、
  • 流行の音楽も聴けば(好きなものは好きだものな?)、
  • バイクだって出来れば限定解除したいくらいには乗り回す。

・・・この間なんて8000円近いエルメスの香水を発作的に買っちゃったよ! だからエロゲやXBOX360買う金がなくなるんだよオイ!
ちなみにコレね、なかなかのお気に入りです。

でも、

オタクだ。
特に多分重度のライトノベルオタクだ。
一般的に見たらいい歳こいた大人が本屋でラノベを山ほど買っている姿は多分不気味じゃないかと思う。
公式の発売日より早くラノベをゲットした時なんか多分ニヤニヤしているだろうから絶対不気味だ! 正直ちょびっと*1小学星のプリンセス (小学星のプリンセスシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)」を買うのはさしもの僕も勇気も必要だった位だからな! だから、正直自分自身も怖い! なので、

オタクが怖い!*2

主語にして、かつ怖がってみたよ。実際にかつて別のエントリでこう書いた事があるしね。でも、だからなんだっていうんだろう?
それとも最近は僕みたいな奴の事をヌルオタとか言うのか? でも、だからなんだっていうんだろう?
・・・嫌な気持がする? 僕には分からないけれども。

でもね

もし上の文章を読んで不愉快な気持になったり惨めな気持になるとしたら、それは「オタク」という言葉の問題じゃなくて「読み手個人」の問題だろうと思う。
「オタク」という言葉に妙なイメージを当てはめすぎている「読み手」あるいは「書き手」の問題。だから「オタク」という言葉/人種の問題にすり替えて話を語ってほしくないな。「オタク」の部分を別の言葉に当てはめてみればよく分かる。
「美人」とか「子猫」とか「女の子」とかに。
・・・ほら、感じ方が変わったでしょ?
もっと分かりやすく主語を「女」あるいは「男」に変えてみて? どう? ・・・言われている側より言っている側がちょっと哀れに感じるでしょ?
主語にあたる言葉に対して自分が持っているイメージによって、文章そのもの、あるいは言っている側と言われている側の立場の逆転現象が起きる事があるのに気がつくだろうか(起こらない人は自分の好きなものを主語に入れてみてね)?
僕だったらこんな風に言っている人がいたら「ああ・・・こんなに○○はイイのにもったいない人だな〜」って思っちゃえる。過去の自分すら含めてね。

つまりね、

「オタクという言葉を注意して使わなければならない」腫れ物のような存在にしてしまっているのは、「オタクという言葉を特別に扱わせようとしている人間」だと僕は思うのだな。
特別扱いさせようとするからおかしくなる。啓蒙しようとするからおかしくなる。それは色眼鏡を人に無理矢理かけさせようとする作業に他ならないからね。しかもその結果その反応は人それぞれで、正負どちらに転んでもおかしく無い訳だわ。
それともあれ? 言葉狩りでもしたいの? 違うよね? ・・・正直、口にすればするだけドツボにハマるを地で行っていると思う。

「ヒャッハー!!! オタクは処女やヤンデレツンデレが大好きですぜー!!! 」

こんな風に・・・笑い飛ばしてしまえばそれで済んでしまう、そんな話じゃない? 「オタク」なんて最早「ゲーム脳」と同じ位笑える言葉だと思うよ。たぶん、大多数の人間にとってはね。
そのうち誰も反応しなくなるさ〜。

*1:実はかなりだ!

*2:あるいは適当な罵倒語でも入れてね。