SAS スペシャル・アナスタシア・サービス(4)

SAS4 (HJ文庫 と 2-1-4)
SAS4 (HJ文庫 と 2-1-4)まったくモー助

ホビージャパン 2008-08-01
売り上げランキング : 1068

おすすめ平均 star
starこういう展開もあるか・・・

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ストーリー

山階立夏(やましなりっか)と双子の妹・紗友(さゆ)が遠くバルト海傍の小国・リヴォニアの王位継承権を持っているという状況の元、3人の少女・アナスタシア、フランツィスカ、エーファが護衛として二人の側に現れてから早半年が過ぎ去った。
そして、幾つかの重大な出来事があった南国・エイリスでのバカンスから帰ってきて以来、立夏はどうも二人の少女に挟まれた状態で落ち着かない日々を過ごしていた。
家族として、あるいはもう一人の自分とも言えそうな大事な妹である紗友と、彼のバディであり最近では一心同体とも言えそうなアナスタシア・・・。二人に対して同じような「好き」という感情を持ってしまった立夏は、それらの選択と区別が出来ないまま悩み続けていた。
しかし状況はある日を境に一転する。政情不安になりつつあるリヴォニアにて民族間紛争が勃発する兆しが見え始めていたのだ・・・。そんな中、政治的に現在敵対関係にあるグレゴールが動く。結果として立夏達はリヴォニアに赴くことに。
一つの決着を迎えることになった4巻です。

相変わらず

堅実とも言える描写が光りますね。
派手さはないのですが、しっかりじっくりと登場人物達の心の動きを追ってくれるので読んでいて妙な爽快感がありますね。
また、メインキャラクターに主体性というものが備わっているのが新鮮、かつ好感度が高いです。大局的に見れば確かに流されているように見える主人公達ですが、個人個人を見てみれば全員が自分の考えで状況に反応して対応するべく行動を起こしているのが分かります。
立夏もアナスタシアと紗友に挟まれる形にこそなってはいますが、ただの優柔不断な主人公ではありません。決断し、選び取ることの出来る主人公です。そこがアクションノベルとしては頼もしくもあり、ラブコメとしてはちょっと残念でもありますが。

今回

この話は一段落する事になります。結構意外な幕引きだったとだけは言っておきましょう。
ただ、それは不愉快な決着ではなくて・・・そうですね、次が見えてくるような類の決着だったという風に表現しておきたいですね。
立夏、紗友、アナスタシア、フランツィスカ、エーファ・・・それぞれが自分の出来る範囲で行動して明日をつかみ取ることになります。それぞれよく頑張りました。まあ強いて言えばエーファの活躍がアクションシーン中心に偏ってしまったのが寂しいくらいですかね。

というわけで

一応完結? という事になるのですが・・・正直続きが読みたいですね。
完結なのに続きが書けるのかい? という疑問が出てきそうですが、幕引きの仕方が見事なまでに「第一章完」という感じなので十分続きは書けそうです。まあ続いたら続いたで色々と作者の人が苦労することになるんでしょうが、私は苦労しないのでw

総合

星3かな・・・。次があったら買う「星3つ」ですかね。
キャラクターの魅力もありますが、それ以外にもきっちりと作り込まれた背景描写(政治とかその他諸々)の丁寧さも魅力に感じています。またこの4巻で一区切りをするにあたって「決着から逃げなかった」のも良かったですね。
それは一つの終わりではなくて・・・いえ、終わるどころか決して途切れず続いていくような類のもので・・・うーん、こういう終わらせ方もあるのか! とちょっと感心したりしました。
誠実なキャラクターや誠実な作品作りをしていなければこのラストは受け入れがたかったでしょうけど、その辺りは作者の人が見事にコントロールしてくれましたね。
でも、イラストについては最後の最後まで不満でした。やっぱり白黒イラストの魅力のなさが特筆ものです。もうなんというか、もったいないですねえ・・・。