アカイロ/ロマンス

ストーリー

高校生である霧沢景介は取り立てて特徴の無い高校生活を送っていた。気心の知れた友人たちに囲まれて、可愛い女子の友人もいたりしてなかなかに充実した生活を送っていたのだ——その日までは。
景介の同級生に灰原吉乃というおとなしい女生徒がいた。景介は灰原によく宿題を写させてもらっていたりしたのだが、友人に言わせると灰原には親しい友達が全然いないらしい。以前から灰原に”とある理由”から親近感を持っていた景介は、これを切っ掛けに灰原を遊びに誘うことにした。
しかし、このちょっとした事が彼の日常を一変させてしまう。彼女を遊びに誘ったことを切っ掛けにして起きた夜の校舎での奇怪な出来事は、日常の裏側に潜む怪異との遭遇を連れてきたのだった・・・。
レジンキャストミルク」の作者が送る新シリーズ、今度は和風テイストで登場です。

冒険しなかったねえ・・・

というのが最初の感想だったりするんですな・・・。
もちろん前作の「レジンキャストミルク」とは違う話なんですけど、根っこの方に流れる部分が全く変わっていないというか、大枠では殆ど同じというか・・・そんな気がしましたねえ。

  • 学校とクラスメイトを中心としたストーリー作り
  • 日常と非日常の切り替わるタイミング
  • 異能が現実を切り裂いていく感じ
  • 血なまぐさい展開
  • どんでん返しとも言える人間関係の崩壊

この辺りの雰囲気が全く同じなんですわ・・・登場人物は当然違いますので反応も違いますが、それでも同じ匂いをプンプンさせています。
こう言ったらなんなんですけど、私、この話の起承転結で言えば、「転」の頭くらいで最後までのおおよその展開が読めてしまいました。

「あー、この人はこう来たから、じゃあこの人があれで、結果こんな感じ?」

という案配です。つまり作品の5割くらいは消化試合と化してしまったという事でしょうか。

しかしまあ

読めましたね。それなりに楽しんで。
これってつまり、この作者の作品作りの手法が高め安定で完成されているという事じゃないかとも思えます。
また、この作品では純和風なテイストを全面に押し出しているのですが、それがまた良い感じで作風にマッチしていると思います。和風独特の暗澹たる、あるいは陰鬱な空気が作者の文体にあっている感じがしましたね。
とにかく展開と文体の両方が上手く融合した感じがあって、「レジンキャストミルク」の時にあった「なんとな〜く浮ついている感じ/落ち着かない感じ」が消えています。これは良かったんじゃないでしょうか。
キュート&ゴスロリより、可憐&和服の方が合ってるんでしょうね・・・いや、多分ですけど。

キャラクター作りも

安定してますね。これは「冒険しなかった」というのにも繋がるのですが、それでも高めで安定していることは間違いないと思います。
ヒロインは枯葉という名前の奇怪な少女と言うことになるのでしょうが、いい感じで読者のツボを突くセリフを吐いてくれます。

「景介。お前、妾の夫になれ」
「………………、え?」

「妾はお前の子を産みたい」
「は? え? 子、って? ……子?」

和装美少女にこんなにストレートに言い寄られて嬉しくない男/読者はいないですね〜。まあ他にも独特な特徴を持ったサブキャラクター達がいるわけですが・・・それらの人物もキャラクターの立ち加減でいえばいい感じです。この辺りにも安定した力量を感じますね。

総合

星・・・3つ? かな?
上にも書いているとおりこれでもう少し大きな部分で冒険してくれていれば星4つは固かったんですけどね・・・いかんせん新鮮みがなさ過ぎたというのが星の減った理由です。しかし、それでも安定して読ませてくれたのも事実ですのでこの星の数ですかね。
正直なところを言えば、タイトルの醸すイメージ通りにラブコメとかストレートな恋愛ものでも書いてくれた方が嬉しかったですね。連続して同じような作風だと流石にちょっと飽きる部分が出ます。
まあでも、このシリーズが同作者の初めての本という人なら安心して読める完成度だと思いますし、逆に濃いファンの人も安心して読める出来になっているとは思います。つまりあまりお勧めできない対象となりそうな人というのは、ライトノベルを片っ端から読んでいる私のような人種、ですかね・・・。こうなるともう読み手の責任か!?
イラストは前作と同じ椋本夏夜氏ですね。カラーイラスト&登場人物紹介漫画も相変わらずの出来です。「レジンキャストミルク」が好きだった人なら安心の出来ですね。
・・・でもそうか・・・イラスト方面でも全く冒険してないんだねえ・・・。いや、安定しているのは悪いことではないと思うけど、そこまでガチガチに固めちゃうのもどうなんだろうねえ・・・うーむ・・・。

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