俺の妹がこんなに可愛いわけがない

ストーリー

俺(高坂京介)には妹が一人いる。名前は桐乃といい、地味な自分とは似てもにつかない最先端を突っ走る明らかに”ど高め”の空気を全身から発散している美人の女子中学生だ。しかも成績優秀、スポーツ万能、最近は雑誌の読者モデルやらもやっている両親自慢の娘でもある。
兄である俺に懐いてくれるわけでもなく、全くもって可愛げのない妹で、まともに口をきいてくれさえしない。まあ兄である自分も妹を積極無視しているので仕方がないわけだが・・・。
しかし、俺はそんな妹の秘密を知ってしまうのだ。結果として妹から”人生相談”とやらを受けることになってしまい?
まさしく正統派妹と言えそうな妹小説です。

おお〜

期待していなかったんですが、想像以上に良くできていたかな〜というのが本音です。
ライトノベルで妹というと、兄である主人公に異常なまでに執着したり懐いたりするもの凄く可愛くて危ない妹が多いですが、この妹は違います。兄を動くゴミか何かと思っている全くかわいげのない妹ですね。
私は妹がいたことがないのではっきりとは分かりませんが、実際にはこんな感じでしょうね〜なんて思います。

「……いいから、さわんないで」

兄に向かって必要最低限、かつとてつもなく冷たいセリフしか口にしません。うーん、いかにも普通っぽい感じがとってもいいです。

その妹の秘密を知ってしまうことで兄と妹の関係は少しだけ変わります。
でも劇的に変わるわけではなくて、ほんの少しだけ変わるという感じでしょうか。まあ当たり前ですよね。普通ならそんなもんでしょう。

「………………やっぱ。……おかしいと、思う?」
「なにが?」
「だから……その、あくまで例えばの話。……こ、こういうの。あたしが持ってたら……おかしいかって聞いてんのっ……」
…………ちっ。
「別に? おかしくないんじゃねぇ?」
心の中で舌打ちして、そう応えた。さっさとこいつを追い払いたかったし、そう応えないとまたキレそうだったからだ。

妹も普通の妹なら兄も普通の兄という感じで、妹に積極的に歩み寄りたいという気持ちを特に持っていません。しかし、まあ妹の秘密を唯一知ってしまった人間として、妹の抱えている秘密と付き合うことになってしまいます。半ば嫌々、半ば心配、そんな感じで。
その辺りの距離感の描写が実に自然な感じで好感触でした。・・・ま、ちょっとぎすぎすし過ぎのような感じがしないでもないですが、実際にはこんなもんですよねえ・・・特に思春期ど真ん中の兄と妹なんて・・・え、違う?

そうそう

物語を盛り上げる周囲のキャラクターもなかなか良い感じです。
特に京介の幼馴染みで自称/他称ともに「地味」という感じのキャラクターである田村麻奈実がいい味を出していました。

「……あ、あのさー……その褒め言葉って、『おまえはいい奥さんになるよ。お前の夫になる男は幸せだな』とか言うもんじゃない?」
「いや、お婆ちゃんで正しいね。何故ならおまえと話していると、俺はいつも、死んだ婆ちゃんと縁側で茶を飲んでいるような気分になるからだ」
「……褒めてないよね? それ、全然褒めてないよね? ……ふんっ、どうせ色気がないですよーだ。もうっ、きょうちゃんだって、脇役みたいな顔してるくせにーっ」
「おまえにだけは言われたくねえよ!?」

こんな感じの幼馴染みです。うーん見事なまでの癒し系・・・癒し系? とにかく妹の桐乃の真逆のキャラクター性と言っていいでしょう。一緒にいるとなんだか和むタイプです。こういうタイプが添え物として成立するんですから、メインで登場してくる妹の桐乃が如何に尖ったキャラクターか分かっていただけるのではないでしょうか。

総合

星4つつけちゃいます。応援の意味も込めてますけどね。
細かいところはネタバレになってしまうので書きませんでしたが、なかなかにおすすめです。実際に妹がいる人もいない人も、まあ一度読んで見てもいいのではないでしょうか。
もの凄く変なことが起こったりはしませんが、それでもちゃんと物語をラストシーンに向けて盛り上げてくれました。
なんだかんだ言ってラストシーン近くでは読んでいてつい熱くなってしまいました。別に世界がひっくり返るような出来事が起こるわけではありませんが、それでも良かったですね。
ちなみに、妹の秘密についてちょっとだけヒントらしきところを抜粋して、終わりにします。

「このままじゃいけないって……何度もやめようって、思った。でも、どうしてもやめられなくて……だってね、ブラウザを立ち上げると、はてなアンテナに登録してあるニュースサイトが、毎日あたしに新たな情報を伝えて、色々買わせようとしてくるんだよ? ……うう、かーずSPアキバBlogめ……」

あ、ついリンクまで張ってしまったよ! まあつまり、はてなユーザーでその手のサイトを知っているという方向の秘密ってことで・・・。濃いなあ・・・。

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