この広い世界にふたりぼっち

この広い世界にふたりぼっち (MF文庫 J は 6-1)
この広い世界にふたりぼっち (MF文庫 J は 6-1)葉村 哲

メディアファクトリー 2008-08
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おすすめ平均 star
star気難しい作品。
starどうにもつかみどころがないというか。

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ストーリー

森と街の間を少女は一人歩いていた。どちらの世界に属する事もなく歩いていた。
そこに現れる一体の白い狼。狼は少女をじっと見つめ、そして少女に告げた――「私と結婚してくれないだろうか」
徐々に曖昧になる現実と神話世界、少女と狼は昼とも夜とも言えない薄暗がりの中をともに歩いていく・・・。
・・・え〜っと、なんだか佳作らしいですが?

うわ〜

超つまんねえ。表紙にだまされたな〜。
でも、このつまらなさは前にも味わった事があるぞ!「永遠のフローズンチョコレート」で!
どこまでも虚無的、適当に理不尽、純粋に不条理、因果は崩壊、そんな感じで話が進んでいくのだけど・・・いやこれがイマイチなのよね〜。
作中ではカミュの「異邦人」が象徴的に取り上げられたりするんだけど、この作品は「異邦人」を15倍位に薄めて、現代社会(?)を舞台にして、狼が喋ったりするファンタジー要素を盛り込んだ作品と言えばなんとなく通じるのかなあ・・・。

とにかく

雰囲気重視で細かい説明や論理的な整合性が悉く無視されるのはこの手の不条理ストーリーではありがち。
個人的にはそう言った作品は苦手な部類に入るのだけど、それでも読ませてしまう作品があるのも事実。だけど、不条理な作品を作り上げるには決して欠かしてはいけない要素があると私は思っているんですね。
それが「情景の表現力」、あるいは「主人公の属する世界の幻想力」じゃないかなと。で、この本の場合ですが、それが足りないと感じました。

  • 幻想の力が足りないので表現が乏しいからつまらない。
  • 幻想は足りていても表現が足りていないのでつまらない。

このどちらかだと思います。
つーか虚無主義かつ不条理モノってライトノベルで需要あるのかなあ・・・? 純文学だったらまだ分かるんだけど。成功している例を今のところ知らないだけの可能性大なんでなんとも言えないけどね〜。

でも残念ながら

つまらないと感じた理由のほとんどは作者がどうとかじゃなくて、読者である私が運悪く地雷を踏んだって事なんでしょうね。
ヤマなし、オチなし、イミなしですけど、感覚的なものをなるべくストレートに貫いたらこういう物語が出来ました。とにかく雰囲気重視で作品が作られているんで、紅茶の香りを楽しむみたいに読んで下さいな――。作者にこう言われているようです。
でも・・・どー考えても全く楽しめなかったですね。紅茶どころかコンクリートの味比べでもしているような気分でした。うんうん、他人の完全な妄想話ほど聞き手を選ぶものはない・・・そう思いませんか?

総合

星1つ。いや、それ以上付けたらなんか間違ってるでしょうな。だって全く面白くないんだもん。
この話の好意的な評価は他の人に任せてですね、私はそれこそ「狼に噛まれたと思って」諦めます。それくらいに評価のしようがない物語でしたね。
なんで狼がいきなりいるのか、なんで狼が人の言葉を喋るのか、なんでそれについて驚かないのか、なんでそこまで人の世界を疎むのか、なんでそこまで空疎なのか、なんで神話が混じり込んでくるのか、なんで敵対しあうのか・・・そう言った事の説明が一切無視されたまま物語はどことも知れぬ場所を目指して進みます。
しかしあれかなあ・・・こういう話を楽しむには歳を取りすぎたとかそんな感じなのかなあ・・・。

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