魔界ヨメ!

魔界ヨメ! (MF文庫 J あ 1-13)
魔界ヨメ! (MF文庫 J あ 1-13)阿智 太郎

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ストーリー

比宇間良夫は一晩で人生の危機に陥っていた。
サプライズが大好きな両親が突然の転勤で彼一人を残して東京都小鯛良市から北海道に行ってしまい、家まで引き払ってしまったからだった。そしてそこに何故か一人残された良夫。
しかし両親もサプライズが好きなだけで鬼ではない。新しい部屋を借りてそこを良夫にあてがったのだった。しかし、その物件は家賃3万なのに超豪華、かつ家具付きの洋館。どう考えても訳あり物件としか思えないのだった。
しかし他に行くところもない。仕方なくそこで一晩過ごした良夫には・・・結論から先に言うとヨメが来たのだった。もータイトルそのままズバリ魔界ヨメが来たのだった。
しかし変わらぬ芸風だなあ・・・と一人で勝手にしみじみすることになった阿智太郎の新シリーズです。

そうなんですよ

非常に個人的な話で申し訳ないですが、阿智太郎は私にとって一つの分岐点となった作家の一人なのですね。
今を遡ること10年ほど前、阿智太郎のデビュー作「僕の血を吸わないで」を読んだ私は、

こんなスカスカで中身のない本なんざ読んでられっかー!

と叫び(いや実際には叫んでないですけど)、それを境にライトノベル(当時はまだジュブナイル小説という方が多かったような気がするけど)という文芸分野からすっぱりと足を洗い、一般文芸や本格SF等へと突入したのでした。
うん・・・なんか分かんないけどライトノベルを読んでいることが恥ずかしくなったんですね。

名作と呼ばれる作品を観たり 聞いたり 読みあさったりして
大人を気取って 少し無理して暮らした
Mr.Children 僕らの音)

ま、そんな時期だったんでしょうねえ・・・。

で、

こうして10年かかって同じ場所に帰ってきて、同じ作者の本を読んで、こんな風に感想を書いているのだから・・・不思議なものです人生は。
なんか妙に遠回りをしたような気が今しています。どーせ根がオタクなんだから素直にオタクやってりゃ良かったんじゃねえの〜? なんてタマシイの声が聞こえてきそうです。
でも私が遠回りをしている間も、阿智太郎は同じ芸風で待っていたわけですね。ライトノベルでなんというか黙々と。10年経ってもやっぱり「魔界ヨメ!」なんて色んな意味でむき出しの本を書いてる訳ですよ。10年経っても相変わらず、

「貧乳スゲー!!」

とか、

「魔界グラマラス美女なのだ!」

とかやってる訳ですよ。どう見てもつるぺたなキャラクターにそんなことを言わせているわけですよ。10年経っても。
・・・この理由の分からない敗北感は一体何だろうか・・・?

総合

星3つ。
でもなんというかさ、この作者はこれでいいんじゃないかな〜? なんて今思っています。難しいことなど何一つ必要ないのです、きっと。
もちろん昔と比べて作風も進歩していたり、作者にしか分からない表現の苦労とかもあるのかも知れません。でも、そういったことを読者に一切感じさせないような一見頭のユルい物語を今後もこの作者には書き続けて欲しいものです。
しかし本当にこう・・・もの凄いサクサク感だよなあ・・・一冊読み終わるのに1時間ちょっと位しかかからないんだもんなあ・・・これはこれでなんか凄いよなあ・・・なんて思ったりしたのでした。