輪環の魔導師(4)ハイヤードの竜使い

輪環の魔導師 4 (4) (電撃文庫 わ 4-28)
輪環の魔導師 4 (4) (電撃文庫 わ 4-28)渡瀬 草一郎

アスキー・メディアワークス 2008-10-10
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おすすめ平均 star
starセロの師匠登場!フィノと・・・
starあれだけ囲われたら、普通はまっすぐには育てない
star人には人の魔族には魔族の事情があるのかな

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ストーリー

黒猫の姿をした魔導師のアルカインに導かれるまま旅を始めた薬師見習いのセロと貴族の娘のフィノは、数々の冒険を経て旅の仲間たちを増やしつつあった。
しかし、彼らと敵対する魔族たちにセロの持つ「環流の輪環(ソリッド・トーラス)」の存在を知られてしまい、同時に王家の姫である・イリアード姫も魔族の手に落ちてしまった。ただし、その代償として魔族の一人だったヴィオを取り戻すことに成功していた。
しかしそれで問題が全て解決する訳でもなく、アルカイン一行は、姫を取り戻すべく魔族の落ちのびた先の町——トラファードへと急ぐ。そしてやはりその行く手には魔族たちの罠が待っていたのだった。
心優しい薬師の少年・セロを中心にして描かれるファンタジー作品の3巻です。

お?

前の感想で書いた「登場人物紹介」のページが出来ていたのは純粋に嬉しいですね。なんというかもっと早い段階でもそういう気の利かせ方は出来たんと違うか? とか思わなくも無いですが、まあ良しとしましょう。
しかし、そういった努力はともかくとして個人的には評価が下がっています。
いや、相変わらずの安定した語り口で物語は綴られるので、安心して読んでいられるんですが・・・それが力を発揮するのは強いて言えば起承転結の承までなんですよね。転に必要な力は「物語を揺り動かして読者の不安をかき立てる力」じゃないでしょうか。

この作品は

なんというのか・・・人間の裏側が無いというか、黒々とした人間性の醜さがないというか、底知れぬ心の動きが存在しないというか、そういう印象がありますね。
例えば本作でフィノはちょい危ない女性として書かれますが・・・所詮「男の書いた女」なんですよね。その人間性はあまりに分かりやすすぎて、「危ないけれども怖くない」んです。
例え話ですが、刃物を持っている人が突然現れたら怖いです。でも何故怖いのかというと、刃物を持っているからではなくて、その人物が何故現れたのか理由が分からないから、その人物が何故刃物を持っているのかが分からないから怖いのであって、刃物そのものには恐怖が存在しないんですよね。
フィノに刃物の危なさが存在するのは確かですが、その行動原理は男性的で、女性特有の秘密がない。秘密がないから理由が分かる。理由が分かるから「怖くない」。
底まで見通せるようなキャラクターには怖さを感じない。秘密のない人間には怖さは無いけど魅力もない。そんな感じでしょうか。

ただ

物語としては、手を変え品を変え楽しませようという努力というか、頑張りを感じる所ではあります。
が、少なくとも私の好みからちょっと離れてきているのは確かですね。でもこれはなあ〜あっさり味かこってり味かって話なので、最終的には単純に「好み」というところなのかな〜と思うところがありますね。
今回はメインキャラクターとして新たに書かれるヴィオレというキャラクターがいますし(なかなか魅力的です)、さらにはセロの師匠だった女性のアネットというキャラクターも登場します(やっぱりなかなか魅力的です)。さらには謎の騎士も現れたりしますし、うん、頑張ってますね。

総合

星3つだなあ・・・。
安心感は強いですが、安心しすぎると結果として刺激が無いのと同じなのでもうちょっと刺激が恋しいですね。
今回は前後編の前編と言うこともあって話も完結しないので、そのあたりの消化不良感も評価を下げる理由になっています。物語の風呂敷を広げるのも悪くはないと思いますが、キャラクターの中に誰にも覗けない「秘密の扉」みたいなものが欲しいなあ・・・などと感じた4巻でした。
一応下巻になりそうな次の5巻までは読むつもりですが、そこで面白さが微妙だったら・・・読むの止めてしまうかも知れないですね。
ところで、イラストの翠羽風氏は相変わらずいい仕事をしていると言っていいかもですね。特にカラーイラストの美麗さは特筆ものです。でも個人的に一番可愛いのが黒猫のアルカインなんじゃないかと思うのがちょっと問題でしょうかね・・・うーむ・・・。

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