オウガにズームUP!

オウガにズームUP! (MF文庫 J ほ 1-4)
オウガにズームUP! (MF文庫 J ほ 1-4)穂史賀 雅也

メディアファクトリー 2008-10
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ストーリー

初めての高校生活——しかも暗くて臭い中学男子校から共学高校へ——に胸をときめかせている(はず)の少年が一人いた。名前は犬伏ユージ。高校一年生にして、実は妻帯者である。
妻の名前は井上ククル。一見小学生!? と思えるロリーなフィジカルに獣の魂を持った幼女である。ただし、幼妻としての恥じらいがあるかというと・・・微妙な所だった。
しかも、夫であるユージには深刻な悩みがあった。彼曰く、

ロリコンになりたい。

つまり、彼は少年としては十分に正しい性衝動の持ち主だったわけだ! しかし、どうみても小学生にしかみえないククルを妻と娶っても彼の心には妙に冷たいすきま風が吹き抜けて行く・・・・。でも幼女妻がいる。しかも結構サービス精神旺盛な・・・。
・・・色々な部分で殆どのライトノベル読者を上回っているであろう主人公を据えて、「暗闇にヤギをさがして」の作者が送る新シリーズです。

・・・むう。

タイトルが「オウガにズームUP!」
オウガ? 横臥? 相賀? ・・・やばい、全く分からない・・・・。
そしてタイトルの意味不明っぷりをあざ笑うかのように表紙には可愛らしい女の子の絵・・・。
さらに、物語の出だしは「ロリコンになりたい」。
しかも作者はあの問題作(?)を書いた穂史賀雅也・・・。
地雷だ。これはかなりの地雷臭がするぜッ!?
っと思いつつも「ロリコンになりたい」の呪縛、これ逆らいがたく、ついつい購入してしまったもの也。いや、ナリとか書く必然性は何処にもないんですけど、なんとなくこう・・・ロリコンという言葉とのバランスを取りたかったというか。

読んでみたところ、面白いんですわなこれ。
この作者独特のすっとぼけ感が滲み出ているんですが、それが上手い具合に展開とマッチしていて読む読む読ませる、そんな感じです。

手元には、原田の作ったA4サイズの資料があった。
資料には、一年B組の女子クラスメートの顔写真がずらっと並んでいる。顔写真の横には生年月日、得意科目、趣味、所属クラブなどが記されていた。おまけに、容姿・知性・スポーツがA〜Dでランク分けされている。
ギャルゲーのやりすぎだ。とユージは思った。

フムン。確かにパラメーター化されているところがいかにも攻略対象という感じで実に頭悪い感じですね。でも褒めたいのはこの後! なんとMF文庫編集部がどんだけ悪のりしたのか分かりませんが、この資料がそのままズドン! と本の中に載っているんですね!
ちゃんと全員のイラスト付き! 卒業アルバム風と言えばイヤでも分かりそうな感じで見開き2ページ以上にわたって存在するわけです。
・・・ここまでやられちゃあ、俺も納得するしか無いぜ・・・。
いや、何を格好いいようなフリをしているんでしょうか私。

まあ

そういう編集サイドの小技はともかく、本編の方も面白くて、とにかくユージとククルの出会いからして変です。

「関係者なのか?」
「え?」
『関係者』という言葉にユージは虚を衝かれた。
「……違うか。ということは、偶然紛れ込んだのか。まあいい。ここにいるということは、何かに導かれて来たんだろう」
「俺は見晴らしのいい場所でアイスを食いたかっただけなんだけど……」

方や訳ありっぽくて、しかも運命っぽく。方や普通で、しかももの凄く日常的という・・・このなんか混ぜてはいけないものが全力で混ざっている感じが実にとぼけていて良いですな。

とにかく

彼はアイスを食べようとして妻帯者になるわけです。はい、訳が分かりませんが、難しく考えずに幼妻を迎えることになった少年の「選ばれし者の恍惚と不安」をとっくりと味わう感じで読むと良いんじゃないかな・・・。
その割には本編丸ごと緊張感に欠ける感じで、かといって浮かれ気分で過ごしているわけでもなく、あー、この幼妻は本当に幼いので、どうしようもない感じですね!
・・・ところでここを読んでいる人で、「このブログの管理人はロリコン」だと思っている人。訂正して下さい。私は小学生の少女にときめきません! ハァハァはするけどそれはなんか可愛い柴犬を目の当たりにしたときとかと同じ反応です! テント!? そんなもの張っていません! 違う違う! 固くない固くなってない! この少女め! ・・・じゃあ触ってみよっか?
本当に違います。

総合

とにかく楽しんで読んでしまったので星は4つですね。
前シリーズでは色々とやられましたが、今シリーズはなるべく安定した物語作りをして欲しいとしみじみ思ったりした一冊でした。なんていうの? 狙ってなげればいいコースにちゃんと球が行くだけのコントロールを持っているんだから、なるべくキワ球とかを意識しないで欲しいな〜とか思ったり。
・・・そう言えばタイトルが意味不明ですが、よく考えたら前の「暗闇に〜」だって意味不明だったなあ・・・。

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