ゼペットの娘たち(2)

ゼペットの娘たち 2 (2) (電撃文庫 み 11-4)
ゼペットの娘たち 2 (2) (電撃文庫 み 11-4)三木 遊泳

アスキー・メディアワークス 2008-11-10
売り上げランキング : 1918


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ストーリー

「機鋼人形」と呼ばれる、魂を宿した人形と、それを作り上げる機鋼人形師という職があった。
サツキ・クガはそんな機鋼人形師の一人。最年少と言える年齢の17歳でこの職に就いている。そしてそんなサツキに作られた少女型機鋼人形のハリケーンと犬型のトルネードの3人(?)は、マリスの街でロックハイム家というパトロンを得て、鋭意売り出し中だった。
サツキは優秀な機鋼人形師だったが、優秀な分だけ仕事に異常なまでにのめり込むような所があって、機鋼人形に熱中するあまり、寝食を忘れるなんてことはざらなのだが・・・。
この話は、そんな困った機鋼人形師であるサツキを中心に描かれる、人間と人形たちによる心温まる物語。その2巻です。

今回の

構成は中編3本という感じです。

  1. 一人で整備旅行に出かけるサツキと、彼を待つ間に仕込みをするハリケーン
  2. 人魚の姿をした機鋼人形と、そのロマンス
  3. サツキのライバル(?)ニコ・メイビスの出くわしたトラブルと、その行方

こんな感じになっています。
どの話も趣向を変えて読者を楽しませようとしてくれて、すらすらと読めますね。うーん、ちょっと表現に困る部分があるんですが、ドキドキワクワクはしませんが、ほっとする、そんな作品じゃないでしょうか。

ただ

個人的には今回犬のトルネードがあんまり活躍しなかったのが残念ですね。
でもそれを補うように少女型の機鋼人形であるハリケーンの頑張りがなかなかに輝いている作品になっていました。サツキの役に立とうとするハリケーンがオムレツを作ろうとするエピソードは良かったです。
でも、この話はちょっと困った本です。
確かに面白く感じるんですが、何が面白かったの? どこが特に良かったの? とか聞かれると返答に窮する感じがある・・・と言えば良いでしょうか?
キャラクターもなかなか魅力的、それぞれの中編の出来も良い、世界観や設定も程よく練られている・・・でも全部を俯瞰してみると”特に何事もない”のです。でも困ったことに、この”特に何事もない”ことが”楽しいこと”なのですね。まるで平和な午後のティータイムのように。
楽しいけれど、うん、何事もなく平和に楽しいのです。刺激に満ちあふれた作品の多いライトノベルの中では、ある意味では異色作と言えるのかも知れません。

総合

星・・・3つかな? でも、この作品は星3つで正解なんじゃないかと思います。
星3つで過不足なく完成している作品なんですね。ちょっと困ったことはあっても、色々な人の心遣いで自然と問題が解決するような物語なのです。その過程と平和を楽しみましょう。
個人的にはこのままの作風でずぅーっと続いて欲しいような感じですね。それこそハリケーンが一人前の淑女と呼べるまでに成長して、サツキもしっかりとした大人になって・・・というところまで今のペースで。まるで人生みたいに。そんな風に物語を作り続けてくれれば、私ゃずっとついていきますよ?
ところで今回、サツキにちょっと春が来ちゃってますが・・・今後どうなっていくんでしょうねえ・・・。ハリケーンも頑張っているし、この”ちょっとした春”の行方が気になる所ですね。
あ、トルネードは相変わらず上機嫌で可愛いですよ? ワンワン!

感想リンク