月色プラットホーム

月色プラットホーム (一迅社文庫 み 2-1)
月色プラットホーム (一迅社文庫 み 2-1)水口 敬文

一迅社 2009-01-20
売り上げランキング : 7798


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ストーリー

片田舎の街を通り抜けているローカル線である志ノ崎電鉄には、ちいさな子供達がちょっと声を顰めて話すような怖い噂が一つある。
深夜、終電の終わったはるか後、人気のない線路を走る謎の列車があるという。そしてその電車は死者を乗せてあの世とこの世を往き来する幽霊列車だというのだ——。
そんな噂を真に受けたか格好の遊びネタと考えたのか、そんな噂など一向に信じてはいない高校生である園崎匠海であったが、彼の幼なじみであり、悪友とも言える少女の綾芽はその幽霊列車に興味津々で、実際にみんなで夜にその見物に行かないかと持ちかけてくる。
高校生にもなってそんな下らない遊びに付き合うのは匠海をおいて他に無く、結局二人で深夜の駅へと赴くのだが・・・そこで匠海が見たものは、噂に違わぬ「幽霊列車」と、それを走らせるために慌ただしく働く一人の「幽霊車掌」だった。
幽霊との出会い、そしてその幽霊列車にかける願い。少年少女の恋の駆け引きなども取り混ぜての一冊です。

うーん

つまらないとは言いませんが、面白いとも言いづらい一冊ですね。
主人公の匠海や綾芽の二人のキャラクターはなかなかに良くできていて、なんというか「らしさ」が結構あるんですが、もう一人のヒロインとなる紗月が今ひとつ・・・という感じがしましたね。
ステレオタイプというか・・・いや紗月は幽霊車掌という役所なので、ステレオタイプとか言われても、という気がしないでもないですが、その行動とかが実にありきたりでしてねー。
なんとも困ったメインキャラじゃありませんか。

まあ

話の方は幽霊絡みと言うこともあって、もの悲しい挿話あり、ちょっと恐ろしい挿話ありという感じで色々と趣向を凝らした感じはあるんですが、これと言って押したくなるような魅力にも欠けているんですな。
主人公の匠海は、

綾芽が「お兄ちゃん」と強く慕っていた、死んでしまった兄の望をもう一度綾芽に会わせてやりたい

という一心で、幽霊列車の運行の手伝いをすることになるんですね。で、その辺りの動機付けについてはスムーズに感じましたし、悪くないんです。が・・・話が妙にラブコメチックになってくると途端に陳腐なんですよね。
なんというか・・・シリアスにまとめてくれればそれなりに面白いと言えたんじゃないかと思うのに、ムリヤリ分かりやすいラブコメ要素を混ぜ込んだ、そんな印象があります。

総合

うーん、星3つですね。他の本に埋もれちゃうなあ・・・。
そんなに書きたくなることが思いつかないという妙に悲しい本です。なんというか、感想を書く意欲が湧かないや、この本。
比較的沢山登場する同級生たちももう一つパッとしませんし、極端な事を言うと「何しに出てきたのかよく分からない」という悲しいポジションにいるような気がします。ぶっちゃけ、この話の登場人物ってもうちょっと絞れたんじゃあるまいか・・・? なんて思ってみたりしました。
まあ多分「次」の事を考えての種まきみたいなものもあるんでしょうけど、妙な色気を出さずに書いてくれた方が個人的には良かったんじゃないかな〜と思った一冊でした。

感想リンク