とらドラ10!

とらドラ10! (電撃文庫)

とらドラ10! (電撃文庫)

ストーリー

行く当てもないまま、雪降る夜に走り出した二人——。
物語は彼らにどんなラストシーンを用意しているのだろうか? 誰かが泣いて、誰かが笑うのだろうか? 寒い寒い雪の夜は、優しい暗闇で彼らを包んではくれない・・・仄白い夜の中で、二人がつかみ取る未来とは?
泣いても笑っても、これにて「とらドラ!」シリーズ完結です。ネタバレなしで感想を書いてますのでご安心を。

まるでハンマーで

頭をぶん殴られるような怒濤の展開が序盤から襲って来ました。そしてそれが何度も何度も襲いかかってきます。まるで往復ビンタのような物語に、なんだか読んでいてクラクラとしました。
でも・・・でも、でもでもでもでも! 祝! 完結! 祝! 「とらドラ!」なのです。
確かに物語が終わってしまうのは悲しい! でもそれ以上にこの物語を愛読してきた自分が誇らしく、そして作者である竹宮ゆゆこの存在が誇らしいのです! ライトノベルにゆゆこあり! ラノベ世界にゆゆこが掲げた旗を見よ! そう言いたくなるシリーズなのです。

もちろん

まだまだ足りない部分があるようには思います。
登場人物全ての——彼や彼女たちの——情熱や意志や恋慕や執念や挫折や復活を、たった10巻で描ききれたとは思えない部分があるからです。でも、それでも、少なくとも私という読者の予想を遥かに超えて作者・竹宮ゆゆこは進み続けてくれました。
読者を、編集を、絵師を彼方に置いてけぼりにするような勢いと情熱をもって、ひたすらひたすら、ただひたすらに竜児と大河の青春を描ききりました。もうその事に、その存在に感謝の念があるばかりです。

ところで

実はこの「とらドラ!」という物語・・・近くからじっくり見ると実にいびつで、ブサイクで、どうしようもない程なっていなくて、まるでインコちゃんのようにキモイ物語じゃないでしょうか? ガキが一年中大騒ぎし、大したことない出来事に右往左往し、愛だの恋だのとまるで発情期の猿のようにキャッキャと騒ぎまくっているだけの物語。
・・・うん、確かにそんな物語ですよね。思い返しながらそんな風に思いました。
でも・・・。
どうでしょうか? それだけでしょうか? それだけしか感じませんか?
・・・彼らの見苦しい青春の一瞬一瞬は、見続ければ見続けるほど、読み進めれば読み進めるほど、その熱量に圧倒されませんか? そしてある時気がつくのです。いや、少なくとも私は気がついて欲しいのです。格好いい青春なんて本当は何処にもないということに。
本当の青春はいびつで、ブサイクで、どうしようもない程なっていなくて、そしてキモイのだということに。
だからそれを真っ直ぐに気取らずに描ききったこの「とらドラ!」は、そして竹宮ゆゆこはやっぱり凄いのです。この話はとってもキモイ。でもそれこそがとても素晴らしいのじゃないでしょうか。

総合

星5つです。
読み終わって感無量です。正直もっと続けて欲しいと思う気持ちもあります。でもこれでこの物語は良いのじゃないでしょうか。青春の焼き肉は確かに美味しい。でも食べ続けていればいつかは飽きます。例えそれがどんなに美味しかったとしても、です。
その美味しさを維持できるのがこの丁度10巻だったと言うことなんだと思います。でも・・・なんて豪華な焼き肉だったでしょうか! 少なくとも私は幸せな満腹感に包まれています。それで十分です。
改めて書かせてもらいます。竹宮ゆゆこ先生、この物語をこの世に生み出してくれて、ありがとう。一読者として心の底から感謝を表明いたします。

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