俺の妹がこんなに可愛いわけがない(5)

ストーリー(あんまり変えてない)

俺の妹は雑誌のモデルなんかをやっていながら成績優秀、スポーツ万能などの機能を兼ね備えた超高めの娘な訳だが、一つだけどうしようもない趣味を(隠し)持っていたのだ。
人はそれを——オタク趣味という。
しかも18禁のエロゲなどを好んでプレイしたりするかなりディープな所まで既に足を踏み込んでいる、一般的にはもう戻れないと思われるところまでドップリとオタクなのだ! しかも最近では兄である俺にエロゲのプレイを強要してきたりもする非常に困った妹だったりする。さらには兄の俺に向かって口を開くときは一言目には罵倒、二言目には暴言というどうしようもなく可愛くない妹でもある。
しかし、そんな妹は「最後の人生相談」の後、海外留学という道を選び、俺の日常から消えてしまった。あまりにも突然な妹の不在だったが、なに、五月蠅いのがいなくなって清々したというところだ。これでやっかい事が無くなった・・・と思っていた矢先、意外な人物が俺の目の前に現れる。うちの高校の制服を纏って。
という感じで始まるシリーズ、いやもう「人気」シリーズって言っちゃっていいですかね、の5巻です。

予想外の

思い切った展開を見せた前巻ラストから、読者アンケートによるルート選択(?)、さらにはTwitter上に桐乃黒猫のアカウントが登場して逆批評をしてくれる・・・等々、冒険というかイロモノ的展開をしていた本作、最新刊はどうなることやらと思っていたわけですが、いやあ、面白いわ。個人的には一番楽しんで読んでしまったかも知れない。
桐乃が舞台袖に引っ込んだ関係で一気にクローズアップされることになった黒猫(本名は五更瑠璃というらしいですぞ?)ですが、いやあなんというか人としてとても良い所があるのに、それを帳消しにするほどの邪気眼中二病全開で普段から世話の焼ける感じが全国のおにいちゃんのハートを鷲掴みな感じです。
・・・いや、黒猫可愛いですからしてね・・・ルックスは読者モデルやってる桐乃の方がいいのかも知れませんが・・・それ以外の部分については残念ながら桐乃より・・・ダメな子ほど可愛いとはよく言ったもので・・・。

でも本当に

キャラクター描写の良い本だと思いますよ。これは今に始まった事じゃないですが。
この話に出てくる少女達(一部野郎ももちろんいますが)は、とにかく「しゃべりすぎない」のですね。言葉の上でも行動の上でも。誰が読んでも「こいつ主人公に気があるだろJK」というキャラクターがわんさか出てくるライトノベルが沢山ある中で、彼女らは異端と言えるほどに自分の内面を直接表現しません。
ただし「・・・好かれてる、かも・・・?」と想像出来る程度の態度はとり続ける訳です。・・・まあ現実で同じ事が起こったら色々とバレバレな事ばかりだったりはするんでしょうが、そこは小説という形態、しかも主人公視点の限られた情報だけで読者は彼女たちの心情を推し量らざるを得ない訳で、結果として「見えそうで見えない!」を上手い具合に達成しています。
すっぽんぽんより下着姿の方が興奮するのと同じ理屈ですよね・・・例えは最悪かも知れませんけども!

で、

今回はアクの強い新キャラクターが二人ほど出てくる事になります。一人は野郎なので割愛しますが、もう一人は女の子です。赤城瀬菜という名前です。おや・・・赤城・・・?

「ホモゲ部ってやったことある?」
「あれ神ゲーですよね!!」
(強調部分原文のママ)

・・・おおう・・・。
これ以上は特に説明する必要もないと思うのですが・・・一般的に腐敗している系のアレです。「エッフェル塔×東京タワー」なのか、はたまた「東京タワー×エッフェル塔」なのかを真剣に議論できる人種です。・・・ナニ? そんなモノはかけ算出来ない? うん、うん、そうだね。君はそのままでいてね? 出来ないほうがいい事も世の中には沢山あるんだよ?
でまあそんな彼女ですが、黒猫と色んな形で関わる事になって、面白い化学反応を見せてくれます。・・・桐乃や黒猫と比べるとかなりガードが緩く、まあ多少見せ過ぎな感じはしなくもないですが、あくまでサブキャラクターと考えれば十分魅力がありますね。

こんな二人を

中心にして話が展開するのですがストーリーの方は各自で確認してもらうとして、今回は最近自分が考えていた事と全く同じ事を黒猫が言ってくれてたりしたので、引用しておきたいと思います。

「そう。『あるべき姿』なんて知ったことかと開き直ってしまうのよ。そうすればもう、葛藤なんてすることもないでしょう? 独りよがりの自己満足? オナニー作品? 知ったことじゃないわね。言いたいやつらには幾らでも言わせておけばいいのよ。私は私がやりたいものをやりたいようにやらせてもらうわ。畢竟、私にとって同人というフィールドは、自己満足趣味百パーセントの作品を叩きつける場なの。オナニー作品がつまらないというのなら、超凄いオナニーを見せつけてやるだけのことよ」

「オナニーだって極めればきっと鑑賞に耐えうる」「超凄いオナニーはもうオナニーを越えた何かだ」という感じでしょうね。
でも全くもってその通りだと思いますよ。人それぞれ「受け入れられやすい/にくい」というのはあるでしょうけど、結局の所創作なんて全部計算や打算で出来るほどロジカルな分野ではないでしょう(多分ですけど)。そうなればもう裸の自分をとりあえず全開オナニーで見せつけてやるまでよ! と開き直ってみるのは大事だと思うんですよね。
とにかくヌく! ぶっこヌく! ただひたすらに自らの快楽をもとめてヌきまくる! ・・・それでいいと思うんですよ。そもそもアレですよ、オナニー覚える前にセックスしちゃうのなんてエロマンガの中だけのフィクションみたいなもので、大抵の少年少女はそれより前にオナニーマスターになっているはずでしょう? そう考えれば「オナニーはセックスの予行演習」とも言えるわけで・・・決して無駄にはならんと思うのです。・・・字面だけ見るとなんかスゴイ卑猥なことを書いているような気がしますが、いつもの事なので気にしないで下さい。
なによりも大事なのは「自分の作ったものに対して誇りを持つ」という事じゃないでしょうか。誰も褒めてくれないならせめて自分くらいは自分の作ったものを褒めてやれ、ということですね。

他にも

ステキワードが出てきていましたのでピックアップしちゃいます。引用特盛りですね。

「あたしいままで、批判に対して感情的になるのって、時間を割いてプレイしてくれたユーザーへの感謝が足りない、そんなことしてる暇があるなら反省しろって思ってたんですよ。ネットの無責任な意見に惑わされて怒るなんて、煽り耐性の低いバカのやることだよねーって考えてました。でも、自分の関わった作品をこうやってネットで批判されてみて、思い直しました。無責任な意見に惑わされない泰然とした態度? ネットリテラシー? ハッ——クソ喰らえですよそんなもん!! 腹が立つものは腹が立つんですよド畜生が!!
(強調部分原文のママ)

いいぞもっと言え。カリカリしてギーギー言って悔しがったり怒ったり悲しんだりしやがれ。
そしてその憤りを次の作品にぶつけにぶつけまくって実力でもって屈服させてくれ、なんて私は思います。たとえ今は認められなくても良いものを作り続けていけば——必ずファンはできると思います。そしてたとえどんなお偉いさんがこき下ろしていたとしても、自信を持って作品を作り、そしてその他大勢に「これは良い」と思わせれば作り手の勝ちなのだと思うのです。
・・・ただし、やり方を間違って作品じゃなくて「ネットで反撃」とかにすると不幸が待っているような気がしますが(本人バレとかたまにありますよね)——それはその反撃が不当なものだからではなくて、戦場を間違っているからなんでしょうね。作り手が戦うべき相手は自分自身と次の作品とファンの期待であって、どこにいるとも知れないアンチの誰かではないからです。
まあガス抜きとしては意味があるでしょうが・・・やり過ぎてもダメダメでしょうね。だってマジで意味ないんで

総合

星5つじゃなかろーか。
今までもこのシリーズを楽しんできましたが、一番楽しんでしまいました。ヒロインのはずの桐乃がいなくなったとたんに星5つってなんなのよ!? つまりは桐乃より黒猫が好きなのかよ!? って感じですが、そういう訳でもありません。今回特に波長が合ったというか・・・そんな感じだと思います。ぶっちゃけ今度こそ酷評してやろうと思っていたんですが、フタを開けてみればこのザマですよ。
今後の展開もまだまだ期待できそうですし、そこはかとなく漂うラヴの匂いも今後どんな風になっていくのか気になります。禁断の愛なんかもあったりするのか!? なんて変な事を考えたりしますが、まー、フィクションの中の妹くらいは可愛くあって欲しいなァ・・・なんて思いましたとさ。
ところで、絵師のかんざきひろ氏ですが、派手さや繊細さはありませんが堅実な仕事ぶりじゃないかと思います。でもそれよりなにより氏の絵柄がこのシリーズにジャストフィットなんですよね。これはこの絵師さんを選んだ人(編集?)の技あり一本かなあ?

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