円環少女2、円環少女3

円環少女 (2) 煉獄の虚神(上) (角川スニーカー文庫)

円環少女 (2) 煉獄の虚神(上) (角川スニーカー文庫)

円環少女 (3) 煉獄の虚神(下) (角川スニーカー文庫)

円環少女 (3) 煉獄の虚神(下) (角川スニーカー文庫)

円環少女の2〜3巻は怒濤のバトル展開で続き物です。一緒に購入する事を勧めます。もの凄い所で2巻が終わるので、読了後に本屋に走るはめになる位なら最初から買ってしまった方が吉でしょう。
1巻では宣名体系、神音体系の魔導師達が敵として現れましたが、2〜3巻の敵魔導師は新登場の体系である、”相似体系”です。<形の同じ物は同一存在である>とする世界で発達した魔法体系で、同じ形をしたものには魔力的な”弦(針金の線)”のような魔力が存在し、相似体系の魔導師は魔力線の繋がった手元の「A」の物体を操作する事で、魔力線の伸びた先の物体「B」を操作する事を可能とする魔法。
うわ、説明するだけでめんどくせえ。しかし繰り返しになりますが、この練りまくられた魔法世界こそが「円環少女」の魅力そのものです。この魔法体系は信じがたいほど応用の効く体系のようで、この「相似」を利用したありとあらゆる魔法操作が本編では出てきます。作者の脳みそを開けて調べてみてみたいくらいのイマジネーションの嵐。
ところで、2〜3巻のエピソードのスタートとして、2巻の頭で鴉木メイゼルが「地獄」と呼ばれるこの現代世界に堕とされた直後のエピソードに遡って始まります(実際に「円環少女」のエピソードとして一番最初に公開された作品でもあるとの事です)。このエピソードはメイゼルが「地獄」で「自分は一人で戦っていく」と信じていた頃の話で、同時に「地獄は地獄ではなく、一人で戦っている訳ではないらしい」と感じ始める重要なエピソードでもあります。また、このエピソードで主人公の武原仁はメイゼルに「目をつけられる」きっかけとなった話でもあるのですが・・・まあ仁については時間の問題だったのでしょう。
この2〜3巻の敵は殆ど神の様な強力な敵が現れます。この敵に対してメイゼルと仁(最初は主に仁)は撃破するべく動き出すのですが・・・。仁の「メイゼルを戦いから遠ざけて生き延びさせたい」という思いと、メイゼルの「一人でも戦えなければ生きていると言えない(上記とは微妙に違う)」という思いの違いにより、両者に溝が生まれ、それに対して彼らがどのように向かって行くのか、といった二人の関係と、世界(魔法世界を含む)を巻き込む事になる敵との戦いをどうやって生き残るのか、という二つの流れが中心です。この決着が3巻で描かれます。
シリアス展開が続くのですが、それでもメイゼルは相変わらずそのサドっけ全開の性格をしていますし、1巻から続いて登場の倉元きずなはいかにも瑞々しく若い色気を全開にしていますし、神和瑞希はやはり同じように戦闘では恐ろしい性格ですが同時に日常生活ではかなりの天然ぶりを発揮しています。一応それぞれの魅力を本文引用で紹介してみます。
メイゼルから。

「泣きを入れる時はあたしをしっかり見なさい。そんな顔だれかれ構わず見せるなんて、この変態!一体どうされたいの?」

いや、この発想はなかったわ。
つぎはきずな。

「あの……武原さん?」
じっと見ているのに気づいたか、きずなが短い制服のスカートを直す。どうして夏のセーラー服から覗く肌色が、メイゼルのと比べてこうも艶やかで扇情的なのか不思議なくらいだ。

個人的ストライクな倉元きずな。もっと色々と頑張ってくれ・・・!
で、神和瑞希

「……おなか、すいた」

別にはらぺこキャラという訳でも無いのですが、終止こんな感じ。彼女が長文を喋る時は、多分何らかのピンチが側に来ています。正直日常パートで笑いを取っておかないと、彼女は戦闘でシリアス過ぎて愛せません。
また、ここまでは1巻でも登場しているキャラクターですが、その他の2巻以降登場する魅力的なキャラクターの事を置いてはこの話は語れません。敵として今回現れる浅利ケイツは非常に重要なキャラクターであり、円環少女の2〜3巻は彼の物語でもあります。またこちらも初登場、刻印魔導師の綾名ネリンはかなりお気に入りのキャラクターとなりました。外見とその内面のギャップがとても美しい。で、今回個人的に一押しなのが、新登場の「鏖殺戦鬼(スローターデーモン)」であり、<鬼火>と呼ばれる「東郷永光」です。渋い、渋過ぎる!シリアス全開なソリッド・スネークかお前は!と言いたくなる程の漢っぷり。最高です。
あと、ネタバレになるので(以下反転)します。1巻で登場したエレオノール・ナガンが3巻では再登場します。残酷な試練を乗り越えての再登場、変わらないようで変わった彼女が実に良いですね。
1巻を読んで面白いと感じたのであればぜひこちらの2〜3巻も購入する事を勧めます。
あ、3巻では主要女性キャラクターの水着姿も拝めます。まあこの作品(全体)のディープなファンにとっては本来なら売りになるはずの水着シーンが、逆に刺身のツマみたいなものになってしまうのかも知れませんが、一応報告まで。
キャラ小説としても十分楽しめる内容でありながら、その特異な世界観と描写で他の追随を許さない「円環少女」シリーズ。やはりファンタジー小説好きの人よりはSFが好きな人向けでしょう。ハリー・ポッターと同じように魔法使いも出てきますが、粒子物理学的な知識を絡めた描写内容やそのハードなバトル展開から、どう考えても読者層が重ならないという面白い本。
ラノベなんだけど内容は確実に一定以上の年齢に達した大人向け。せめて中学生以上におすすめします。
メイゼルは小学生ですが、同じ年齢層には読ませられませんね。メイゼルに魅了されて帰れなくなります。