D-妖殺行

D-妖殺行 新版 (朝日文庫 き 18-3 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 3)
D-妖殺行 新版 (朝日文庫 き 18-3 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 3)菊地 秀行

朝日新聞社出版局 2007-12
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以前書いた「風立ちて-D」の感想はこちら

ストーリー

物語の開幕は"D"では無く別の吸血鬼ハンター達の戦いから始まる。
——「マーカス兄弟
ボルゴフノルトカイルレイラ、そしてグローベック。それぞれが神秘と言ってよい技の使い手であり、辺境に置いてその勇名、そして悪名をを轟かせている。
彼らと共にある悪名。
マーカス兄弟と共に同じ依頼を受けたハンター達は、今まで誰一人として帰還をしていない。「貴族に倒された」とマーカス兄弟は言う。しかし、まことしやかに囁かれる彼らの噂には黒い影が常に付きまとっていた。
その彼らが依頼を受け辿り着いた村は、既に貴族の毒牙にかかり滅びを迎えつつあった。それでも彼らは村からの依頼を受ける。
「さらわれた娘を貴族の手から取り返してくれ」と。
しかし依頼を受けていたのはマーカス兄弟だけではない。美貌の吸血鬼ハンター"D"も同じ依頼を受け、娘を連れ去った貴族の追跡を開始する。追われる貴族は人間にすら名君と呼ばれた貴族・マイエルリンク。彼が村娘をさらった理由——それは恐るべき事に貴族と人間との間で起こった「禁断の恋」に他ならなかった。彼らの逃避行を"D"とマーカス兄弟が共に追う。行く手を阻む数々の妨害。"D"、マーカス兄弟、そしてマイエルリンクの思惑を絡ませつつ、戦いの舞台は辺境を激しく駆ける——。

吸血鬼ハンターD」シリーズの

最高傑作との呼び声も高い3作目「D-妖殺行」はこうして始まります。
戦闘シーンの多彩さ、サブキャラクターの魅力、そして辺境地区を威嚇に満ちた世界としている怪異、怪物、魔人達。菊地秀行氏の相変わらずの圧倒的な想像力をもって読者に"D"の世界を見せ付けます。
今回敵役となるマーカス兄弟は敵役としての魅力たっぷりです。神業としか見えない弓使い、六角棒術、円月刀術、戦闘車両の操縦技術、そして奇怪な霊術。神技のバリエーションと兄弟それぞれの性格が物語を彩ります。そして特に辺境においてハンターとしての苛烈な人生を生きる娘、長女レイラ・マーカスはヒロインの一人でもあります。
またマイエルリンクが逃走のために立ち寄った魔人達の棲まう「バルバロイの里」。それぞれの邪悪な目的をもって戦いに加わるバルバロイの魔人達。
逃走する貴族マイエルリンクと彼と恋に落ちた村娘の間にある絆。彼らの目指す先、クレイボーン・ステイツとはいったい何があるのか?苛烈な戦闘描写に明け暮れながらも実はとても美しい物語でもあります。貴族マイエルリンクと村娘の行き着く果て、マーカス兄弟達の戦いの果て、そして"D"の終わり無き旅。
彼らの行方をぜひ見届けて下さい。おすすめです。