天空のアルカミレス

天空のアルカミレス (電撃文庫)

天空のアルカミレス (電撃文庫)

あらすじは簡単に言えば人間以外の「テリオン」と呼ばれる化け物が徘徊し始めた日本で、テリオンの脅威に怯えて暮らす人たち(テリオン中注意報みたいな「安全指数」がある世界)、とテリオンに抵抗しようとする僅かな人達の物語。
テリオン達は遥か昔から人々の影に存在しており(妖怪や魔物の伝承で語られるように)、かつてはそうしたとりたてて危険な存在ではなかったが、ある時から危険なテリオン達が現れた。それら危険なテリオン達は皆形は違えど奇怪な武器を持っていた。そしてテリオンによる東京の破壊が行われる。それは新宿駅一帯の消滅という形で現れた。そしてその後のテリオンの人間に対しての宣戦布告。物語にはこうした背景がある。
主人公は篠宮拓也礼菜の兄妹は、かつての記憶を無くした兄妹。彼らは古滝市というテリオンの影の無い安全な市で暮らしていたが、拓也の前に現れる謎の刀を持った少女・久慈日向子が不穏な空気を連れて来る。こうした感じで話がスタートする。

なんというか変身ヒーローもののノリだけど結構楽しめた。キャラクターの個性という意味では主人公とヒロインの一人日向子はまあラノベにありがちな感じの性格設定という感じだったけれど、まだまだ今後(成長して)変わって行きそうな感じがする。特にもう一人のヒロインである妹の礼菜の今後が期待出来そうな感じだ。悪役として登場するオフリスも、もう一つという感じだけどまあそれほど不満を感じるレベルじゃあない。良くも悪くも標準的な水準で話がまとまっていると思う。
設定は色々凝っていそうだし、これから出せる隠しネタは用意してそうだけど、ちょっと出し惜しみの感じがする。1巻という事もあって安全策を取ったのか、それとも作者の限界なのか、もう少し話にもキャラにも遊びや深みが欲しい所と思う。
うーん、大人しい作品の様な気がするので、どうもイマイチ褒めもけなしもしづらい。悪くもないけど良くもない。話は完全に続き物のスタイルを取っているので、今後「ココがいい!」という売りをいかに作品に取り込んで行くかが勝負の様な気がする。

まあ内容の方は個人的に星3つはあげてもいいかなという所だけど、2にしておく。
本文内の挿絵はもうちょっと頑張ってほしい。というか編集者はイラストレーターに女の子以外のキャラクター、あるいはもうちょっと空間を感じさせる様な風景を書かせるようにしたりしてもらいたい。可愛い女の子のイラストがあるのは良いけど、そればっかりじゃつまらない。せめてもう少し読者の想像力を膨らませる助けとなる様な挿絵が欲しい所。挿絵を挟めるのはラノベの強みなのだから、その強みを存分に生かした作品を作って欲しいと思う。p229にある挿絵の背景なんてある種の試合放棄ですよ? あ、背表紙のデフォルメされた日向子のイラストは良かったね。

最後に一つ。
どう頭をひねっても取りあえず決着がついたと言える種類の作品じゃないし、明らかに話の終わってない続き物なんだから、せめてタイトルに「1」とか入れて欲しい。こういうのって編集部の姑息な考えが透けて見える様で気にいらない。人気がなかったら切るために巻数を入れないんだろうけど、だったらこんな中途半端なところで切れる作品を作者に書かせないで欲しいと思う。

(追記)うーん、ちょっと厳しく書きすぎた様な気もするけど・・・問答無用で面白い場合はココまで書いたりしないかな・・・どんな販売戦略でも力ずくで納得させてしまう様な楽しさが本編に欲しい所。