トキオカシ

トキオカシ (富士見ミステリー文庫)
トキオカシ (富士見ミステリー文庫)萩原 麻里

富士見書房 2006-09
売り上げランキング : 328398


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ストーリー

タイトルにある「トキオカシ」は漢字で「時置師」と書きます。この話は時置師達の呪われた命と、それに巻き込まれて行く少年の話です。主人公の藤沢誠一は、完全瞬間記憶能力を持つ少年。ただし特に活用するとかそういった事はあまり無く、普通の少年として生活している。一つだけ変わっている事と言えば、指に自分にしか見えない指輪がはまっているということだけ。その誠一が観池眞名という少女と出会う事によって、時置師達の存在を知る事になります。そして・・・といった感じでしょうか。

物語の主軸は

ちょっと特殊なタイムトラベルものと言う事が出来るでしょうか。時置師達の能力によって起こされるそれは、夢やら希望やらの産物ではないといった辺りがSF的な展開と異なります。主人公の藤沢誠一はその性格設定も、いかにもどこにでもいそうな名前も、無駄のない固い文面で丁寧に描かれており好感触です。
ヒロインの観池眞名についてもそうで、ちょっと奇妙な性格をしている所もありますが、それでも常識から大きく逸脱する様な事が無い割には意外としっかりとキャラが立っていて、こちらも良いです。文章が丁寧なせいもあってか非常に読みやすい。しかし読みやすいからと言っても内容が薄い訳でもありません。作者は良いバランス感覚をしていると思います。

総合

星4つのおすすめでしょうか。作者は女性だそうですが、今の所いかにも女性作家だな〜という所は特に無いように感じますが、今後出てくるかもしれません。

この本は実に感想を書きづらい本ですね。これといってもの凄く目立つ何かが「どかんっ」っとある訳ではないのですが面白い。じゃあどこが特にいいの? と聞かれると「その、全体的に、なんとなく」という感じになってしまいそうです。いわゆるツンデレとか魔術とかの分かりやすい特徴を売りにしていないからでしょう。でも面白いですね。

イラスト(鹿澄ハル)も全体的に要所要所をきっちり押さえていると思いますし、雰囲気も良く出ています。キャラの顔アップとかを連発するような作品もある中で、ちゃんと風景を切り取って描いている辺りはいいですね。やっぱりおすすめです。

感想リンク