クジラのソラ01

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)

異星人に征服された地球。異星人達は人類にたった一つの事を要求した。与えられた<ゲーム>をする事。この本は<ゲーム>の世界選手権で優勝し、宇宙に旅立った兄を追いかけてゲームの世界に身を投じる少女を主人公にした物語。<ゲーム>は仮想世界での艦隊戦・・・なんだけど。

うーん、やっぱりSF不遇の時代かなあとしみじみ思ったりした作品。類似作品としては「それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ」とかですかね。スポ根的なところが微妙に似ているかも。「クジラのソラ」の方が全般的にシリアスですけどね。死人も出かねない展開とかね。
それと、あっちは単独(少数)の戦闘艦を中心にした戦いだったけど、こっちは100を超える色々な個性を持った艦隊戦で、銀英伝的な戦術/戦略の戦いです。
この作品、全体的に面白かったけど明らかな不満が感じられてしまった作品でもあります。

1.イラストがなあ・・・
SF的な空間の広がりやらシステムやら、メカ的なものやら、近未来の世界観やら、魅力的な題材が沢山あるのに、イラストに出てくるのは可愛い女の子、ひ弱に見える少年と・・・といった人間のイラスト位しか無い。これは寂しい。現代を舞台にした物語ならまあこれは気にならないのだけど、未来とか異世界を舞台にしているのにこうだったら、何のためにイラストがあるのか分からない。もうちょっと世界の風景やら、<ゲーム>のシステムやら、筐体の形やら、<ゲーム>の戦いが開かれる場所やら、そうした所を映像化して欲しい。イラストが殆ど人物しか書かれていないのはもの凄く寂しい。内容的には結構SFしているので余計その寂しさが際立つ。

2.背景描写がなあ・・・
近未来SFなのにその辺りを実感させてくれる様な世界背景とか、現代と違う常識やら、文化とか、そういった設定とかをもうちょっと書き込んで欲しい。・・・書いても削られてしまうのかも知れないけど。世界観をもうちょっと広げて欲しいな。無理な要望かも知れないけど。ハヤカワ辺りのSFが好きな人とかだと結構世界描写のあっさり加減に寂しさを感じると思う。逆にくどいよとか思う人は「クジラのソラ」の方が楽しめるんではないかと思う。

評価

星3・・・うーん、星2かな。ストーリーは全体的に良く出来ていると思う。ちょっとヒロインの桟敷原雫に感情移入出来なかったのは痛かったけど、それでも読ませるだけの内容はあると思う。でも終盤の展開はご都合主義的過ぎてちょっと辛かった。SFっぽい内容だから余計その辺りが気になる。舞台がファンタジーだったら許せる展開だったでしょうね。この辺りで星1.5マイナス。後はイラストが良くないので星もう1.5マイナス。で、計マイナス3という感じ。
金銭的に余裕があれば次も買うかな・・・位の気持ちですね。

とにかくイラストレーターが不満

可愛い女の子が書ける事がとにかく条件なのか、絵師のその他の描写能力がもの凄くおざなりになっている感じがする。想像力を膨らませる助けにならないイラストなんて逆に邪魔だ。
p49、p117、p187、p207、p231、p255、p277(全イラストの8割位)のイラストを順番に見て行くと、ただの現代学園恋愛ものに見える。なにそれって感じ。表紙と口絵のイラストだけで個人的にはもう十分。
そもそもテーマが結構ハードSFに脚を突っ込んでいるし、シリアスな展開が中心なので、軟弱なイラストと内容が合わないという気もする。
とにかくイラストレーターが違ったら受けた印象が相当違ったんじゃないかと思う。

感想リンク

まいじゃー推進委員会!  ライトノベル名言図書館
私と全然異なる評価をしている所が実に興味深いです。
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