レジンキャストミルク(5)

レジンキャストミルク〈5〉 (電撃文庫)
レジンキャストミルク〈5〉 (電撃文庫)藤原 祐

メディアワークス 2006-09
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表紙に森町芹菜が出ていると言う事は、今回は彼女が活躍します。普通の人間の彼女が活躍するという事は・・・あーあ。唯一の安全地帯だったのに。・・・まあいつかはこうなるんだと思っていましたけど。それはとにかく。

一言でいえば「いわんこっちゃない」の5巻です。

ここに至り、主人公の城島晶に対して感じている不快感の上手い例えが見つかりました。「ぐじぐじと『俺は悪い奴なんだからこの位やったっていいんだ』と自分を騙しながら女を二股かけている男の愚痴を聞いている時に感じる不快感」です。そら蜜や殊子にあざ笑われるよ。というか彼女らが欠落した虚軸だから良かったものの、普通の善良な人間にだったら「いい加減にしろや!」と殴られてもおかしくない野郎ですね。
ラノベなんであっちにフラフラ、こっちにフラフラするのは悪くないんですが、自分の不手際を他の所で取り繕ろおうとする所が不愉快なんでしょうね。一番悪いのはお前だー!という。

もう一言いえば「やっと踏ん切りが付いたか。遅いよ!」の5巻です。

払った代償も大きかった(特に硝子)ですが、これは結論を先延ばしにし続けた城島晶の罪でしょう。硝子は悪くないぞー。とにかくようやく物語が動き出した様な気がします。そういう意味ではやっとここでプロローグ終了なのかも知れません。「ぼくと魔女式アポカリプス」の主人公が本1冊で「欺瞞」を捨て「選択」をする事が出来るようになったのに、城島晶、お前は5冊もかかったのかと言いたくなりますが、まあここまで読まされてしまっているんだから、作者は上手かったのかも。そういう本なのかもしれません。
格好付けていないで惨めにのたうち回っているモグラ星人のような主人公(ex.平賀才人)だったらここまで不快感は持たないんですが、城島晶は格好付けですしね。
結果として今回は硝子がついに大技を繰り出しますが、予想通りの機能を持った大技ですね。捻りは無いかもしれませんが、それが逆に「やっとやらかしたか」感を強めているような気がするので、個人的にはOKでした。

今後はどうなるか?

実際の所、主人公の城島晶がこの次の6巻でどういう振る舞いをするかを見るまで安心は出来ません。今回の事でいい加減覚悟が出来たかもしれませんが、まだまだ油断は禁物です。
対して硝子。今後どうなるでしょうかね。これまた不安材料です。彼女がぐじぐじ言い出したらもうこの話を読まなくなってしまいそうですが、流石にそれは無いだろうと思ったりしますが、どうなんでしょうね。

キャラについて一言

魅力的な男性キャラクターのいない本ですね。あまり出ない良いキャラには「デス委員長」がいますが、やっぱり女性ですし・・・作者は男性キャラを書けないんでしょうか?
あともう一つ、男性キャラクターだけではなく、魅力的な大人のいない本でもありますね。だから感情に流されずに良い助言やサポートの出来る人間がいない。殊子とかが助言をしたりする事がありますが、彼女自身がまだ大人ではありませんので微妙です。つまり腰が据わっている人間が不在のため、主人公の不安定さがそのまま物語全体の不安定さに繋がるのだと思います。これはひょっとしたら意図的にやっているのかも知れませんね。
無限回廊」は大人? いえ、一番の子供です。力のある困った子供ですかね。ちなみに佐伯ネアは大人とか子供とか言えるステージにそもそもいないです。
自分の立場をはっきりと自覚しているのは舞鶴蜜位でしょうか。硝子はそれ以前の問題なのですが、今のままマスター一筋なら問題ないですけど・・・今後怪しいかも知れません。成長するって事は、選択肢が増えると言う事で、選択を迫られるという事と同義だからです。

余談

ついでですが、一人どうでもいいキャラクターに死亡フラグが立ったような気がします。魅力に欠ける割には登場している本当にどうでもいいキャラなので、早期に退場してくれる事を望みますが、さてどうなるのか。どうせ退場する場合でも一筋縄では行かずに、あっちに引っ掻き傷、こっちに打撲と、ろくでもない傷跡を残して行くんでしょうね。

結果として

どうも主人公に安心しきれないので星4つ。でも4つ。まあ全体的にやっぱり嫌いではないのです。
結論から言うと後半の流れはすっきりしましたが、待たされ過ぎのため爽快感が5割減です。なので6巻の展開に期待します。・・・もし今までと同じ様なうじうじ主人公を続けるようならもう流石にこのシリーズを読むのは止めるかも・・・知れません。
相変わらず口絵イラストの出来は良好です。本文内はちょっと本領を発揮しづらいのかも知れません。カラーが持ち味ですねこの絵師は。

さて、今後はどういった展開を見せるのでしょうか。晶は完全に吹っ切って、自らの「選択」を行動をもって証明する事が出来るのか、彼の成長ぶりが問われるのが次の6巻ではないでしょうか。

感想リンク

ウパ日記  booklines.net