レジンキャストミルク(2)

レジンキャストミルク〈2〉 (電撃文庫)
レジンキャストミルク〈2〉 (電撃文庫)藤原 祐

メディアワークス 2006-01
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おすすめ平均 star
starだから、私を・・・この俺から、取り戻してみろ・・・・『オール・イン・ワン』
star今後の展開に期待

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表紙の柿春里緒が可愛い2巻ですが、今回の犠牲者は・・・。という書き出しになんの違和感も無いダークな展開の「レジンキャストミルク」の2巻です。1巻終了後から僅か数週間で、次の物語がスタートします。

1巻を読めば最終的な敵が「無限回廊(エターナルアイドル)」という存在である事が分かっていると思います。現時点で何が目的なのかさっぱり分かりませんが、ろくでもない野郎なのは間違いありません。というか、この話では主人公クラスがそろいもそろって人としてろくでもない野郎共なので、底辺同士の最悪などつき合いといった方が良いでしょうか。正直「無限回廊」が美少女とかだったらどちらに感情移入していいやら分からなくなりそうです。

相変わらす暗くて救いが無い様な展開です。鬱展開が気に入らない人は読まない方がいいでしょう。楽しいのは・・・うーん、独自性のある世界観は結構楽しめます。作者の苦労が忍ばれる世界設定ですね。なんとなくもの凄い試行錯誤と努力の結果生み出された世界の様な気がしますね。
1巻の感想で結構押さえましたが、「レジンキャストミルク」を読む際には「量子力学」をちょっと押さえると話の理解が早い所がしばしばあります。2巻では以下のような描写があります。

一時的に波動関数を再拡散させ、起きた事象を「なかったこと」にする力。

ここでの波動関数の拡散は「波動関数の収束」という言葉と対になる言葉です。1巻でシュレディンガーの猫を話に出しましたが、シュレディンガーの猫の例では、「観測行為」によって「波動関数(状態の重ね合わせ)が収束」され、猫の生死が決定される事になります。
逆に状態を決定した「波動関数を拡散」させるという事は、物事がまだ観測されていない状態にしてしまう、シュレディンガーの猫で言えば、まだ箱を開けていない状態まで巻き戻してしまうという事です。つまり現象が決定されていない状態に巻き戻す事で起きた事を「なかったこと」にするといっている訳です。
・・・ちなみに量子力学におけるこうした出来事は非常に微細な粒子レベルに作用する力であって、現実世界にはっきりとした影響を及ぼす様なものでは無いんですが、その辺りは作者の料理の見せ所といった感じでしょうか。

結論

しつこい描写でなんだ漢字だらけじゃないかという雰囲気で、微妙に読みづらいですが、それよりも何よりも最大の敵は、主人公の城島晶を気に入れるかどうかが勝負のような気がしますね。個人的には星4つ。もう一つ化けて欲しい所ですね。主人公が思い切れない所が微妙に気に入らないのですね。個人的に。
イラストレーターによるカラー口絵は毎回楽しませてくれますね。本編とはあまり関係なかったりしますが、結構いいです。本編中のイラストは個人的には及第点をあげられると思います。
あと、身内に「余計なルビがうざったい」という人がいましたが、まあ分かる気がします。意味が分からないのも多いし、言葉で遊び過ぎで本編の魅力を損なっている様な気がします。全く無くせとは言いません。1巻の主人公ブチギレシーンの「I'm Steady, My Steady Please Rape Me.(万全です、私の主人——引き摺り出して)」は結構ゾクゾクしましたし・・・半分くらいにしてもいいんじゃないでしょうか? まあ持ち味と言えばそれまでですが。

おまけ:個人的キャラの好き嫌い

  • 城島晶

どちらかと言うと踏ん切りが付かないどっち付かずなところがありますので正直時々イライラします。物語終盤近くにキレる傾向がありますが、キレると魅力があります。つまり人間性を完全に捨て去ると魅力があります。それまでは人間のフリをしている感じがして不快感があったりします。

  • 城島硝子

非常に無垢な少女であり、虚軸でもある少女で、大抵魅力があります。壊れているようにも見えますが、その実「まだ始まっていない」少女なので、壊れているというより、いま成長中です。なので大抵魅力的です。

  • 速水殊子

化け物です。城島晶と同類でしょうか。城島晶が「まともな人間」に変装して人ごみに紛れ込んだ怪物だとすれば、変装せずに遠くから見ている化け物が殊子です。どちらにしても不愉快な存在です。晶と殊子はもはやどこまで人間性を残しているのか正直分かりませんが、やはり彼女の内面が中途半端に人間性を残して不安定なので、正体不明でイライラしますね。完全に人間性を失ったらもっと魅力的なのに・・・。

今回はあんまり活躍しませんが、相変わらずキレています。怒りや憎しみ以外の感情を失いつつも大切なものを見失わない姿はいっそ潔くて美しくすらあります。

  • 柿春里緒

裏表紙のぬいぐるみを抱く姿が可愛いですね。今回は彼女が大技を披露してくれます。実は結構怖い。結構好き。

感想リンク

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