レジンキャストミルク(3)(4)

レジンキャストミルク〈3〉 (電撃文庫)
レジンキャストミルク〈3〉 (電撃文庫)藤原 祐

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おすすめ平均 star
starかなり面白い展開になってきましたね。
star慣れてきたかな

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レジンキャストミルク〈4〉 (電撃文庫)
レジンキャストミルク〈4〉 (電撃文庫)藤原 祐

メディアワークス 2006-06
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おすすめ平均 star
star綺麗にまとまってる
star星5つ(★★★★★)物でした。
star少し無理やりだけど……

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レジンキャストミルク」の3、4巻は上下巻の構成を取っているので、3巻を買う気なら4巻も同時に買った方が良いでしょう。

さてさて、3、4巻では一体誰が取り返しのつかない事態になるんでしょうか。そういう出だしに何の違和感もない「レジンキャストミルク」の感想をお送りします。

えーあくまで個人的な意見の羅列になりますが、主人公の城島晶に対するイライラが結構頂点まで達しつつあるといった方が分かりやすいでしょうか。3巻で起こる出来事については全く同情出来ないと言うか(被害者には同情しますけど)、アホかお前というか、なに中途半端やってんだタコというか、綺麗ごと抜かすなというか、全然成長しねえなお前というか・・・正直ちょっと罵倒語しか思い浮かびませんでしたね。
やっぱりというか何と言うか、結局のところライトノベルって、主人公の振る舞いによって物語の展開は180度くらいは平気で変わるという気がします。1〜4巻まで、結局の所事態を「人間の手に余る」状況にしてしまったのって、城島晶の中途半端な行動に寄る所が大きいんですよね。群衆の中に隠れている分、速水殊子よりもタチが悪いし、事が起きた時の周囲の被害も大きい。
3巻の冒頭で舞鶴蜜に怒られていますが、そりゃそうでしょう。周りの人間を「撒き餌」扱いにするならする、しないならしない。硝子の言う事を尊重する、しないならしない、そういう立場をはっきりさせないので、いざっつう時に転ぶ。ダメじゃん。ちょっと学習しろよという感じでしょうか。全部お前のせいだと言われても仕方が無いですねこの男は。今の所。4巻の冒頭の漫画で無能人間扱いされるのも頷けます(3、4巻とも冒頭の漫画は相変わらず面白い)。

それともう一つ、「無限回廊」も同じ様な感じで悪役としての中途半端感が否めません。もったいぶった言い回しもそうですが、目的があるとはいえ、ほいほい口を開き過ぎとでもいいましょうか。特撮戦隊ものの悪の中ボスみたいで微妙にチープです。もうちょっとこう、なんて言うんでしょうね、重厚な感じを出して欲しいと言うか、そんな感じでしょうか。安っぽさがあるんですよね・・・変な悪意を持って主人公達に接する所とか、そもそも悪意とかが半端に残っている所がつけ込む隙だというか、中ボスクラスとでもいいましょうか。

その代わりと言ってはなんですが、他のキャラクターの魅力が増しています。城島硝子はそろそろと言っては何ですが、実に良い感じに育ってきております。無感情なAIから人間へ、そして少女へ花開いて行く様な魅力が満載ですね。プリンの魅力にたいしてグズグズになっている彼女は実に可愛らしいです。友達の事を真剣に「友情」を感じて行動するようになる彼女が良いです。・・・後々それが仇にならなきゃいいけどと思ったりするのがこの話の特徴かもしれませんけど。
速水殊子も4巻では見せ場があります。ついにと言っては何ですが、彼女の本領発揮——虚界渦(アンダーゲート)を開く事になります。それを見るとああこりゃ確かに人間じゃないわな、とか、人間でいても仕方がないわな、とか思ったりもしますね。殊子を見ていて思うのは、憐憫でしょうか。愛や悲しみを感じる事の出来ない人間のフリをした何かに対する憐憫です。半端に心をもっているようだから余計に悲劇的ですね。主人公の資質はありませんが、トリックスターとしての力は十分です。相変わらず行動全てが嘘くさいのですが、4巻の終盤近くで見せた彼女の「悪意」。これは結構よかったですね。非人間的に、よかった。
で、魅力大爆発なのが舞鶴「壊れた万華鏡」でしょうね。4巻は彼女のためにあった話と言っても良いでしょう。4巻の表紙はゴスロリの蜜が目印ですし、この姿でバトルを繰り広げてくれます。
蜜は少女的に全然可愛くありませんが、彼女は自分を偽りません。本心を隠す事はあっても偽る事だけはありません。嘘を付く代わりに沈黙する。人を傷つける性格/能力を持っているために、自分が傷つく事すら全力で肯定出来る。彼女の行動は浅慮な場合はあるようですが破綻はありません。自己欺瞞が無いためです。大事なものを見失わない真っすぐな一途さ・・・これは城島硝子にも通じる所がありそうですね。

個人的結論

やっぱり全体で見ると星4つですね。主人公にもー少しなんとかしろと言いたい。これで星マイナス1。他のキャラに魅力があるので買って読んでいるというのが今の所個人的にはっきりしているシリーズですね。
イラストは特に口絵のカラーイラストが良いですね。デフォルメされた感じが本文との程よいギャップで良いというか、箸休めとでも言うか、唯一残った癒しとでもいいましょうか。
そんな感じの3、4巻です。