パラケルススの娘(1)

パラケルススの娘〈1〉 (MF文庫J)
パラケルススの娘〈1〉 (MF文庫J)五代 ゆう

メディアファクトリー 2005-05
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おすすめ平均 star
starまさにオカルト。まさに魔術。
star全体が複線のような。

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正直微妙なシリーズなんですよね〜。何かは分からないけどとっても中途半端な匂いがするんです。

ストーリーは?

時代は1890年代、主人公の少年・跡部遼太郎は魔道を司る名家の跡取り息子なのですが、それに伴う実力が無い少年で、それにコンプレックスを抱いていたりする。その少年が半ば追い出される様にして日本を旅立ち、イギリスへ遊学する事に。そしてその身元引き受け人がクリスティーナ・モンフォーコンという金髪縦ロールの美女だった。もう一人の主立った登場人物の(表紙にいるメイドの格好をした美少女)はレギーネ。この少女も非常に謎めいた存在です。遼太郎は彼女らの家に同居する事によって、イギリス魔道界の奥へと徐々に脚を踏み入れて行く事になります・・・というお話。

キャラクターは?

全体的に悪くはありません。主人公の跡部遼太郎は正義感は強いものの自分の実力の無さとのギャップに苦しむ、まあどこにでもいそうな少年です。クリスティーナは魔導師らしく謎めいていて、さらに高慢ちきで、大事なのはレギーネだけなんじゃないかという女性ですね。まあそうなるのには色々背景がありそうですが・・・。ちょっと性格や発言からまだまだ愛せません。キツ過ぎなんですよね〜。
個人的に「なんだこいつ?」と思いつつも嫌いになれないキャラクターとしてバシレウス・サロモン(通称バなんとか)少年ですね。彼がいなかったらこの物語は実は笑いを取れるキャラクターがいなくなってしまいますので、貴重です。時々真面目ですし。

他はどんな感じ?

魔術は結構「手を振った」→「結果が出た」見たいな感じでどうしてそんな事が出来るん? というような説明はあまりありません。まあ無くてもあまり気にならないように作ってあるという感じでしょうか。万能の様に見えて色々な制約があるんだなあという感じがじわじわ文面から(あるいはクリスティーナの皮肉に満ち満ちた台詞から)伺う事が出来ます。イギリス独特な雰囲気も結構上手く書いていて、悪くないですね。
しかし、何と言うか全体的にとっちらかっているような印象があるんですよね・・・なんかフォーカスが甘い写真みたいと言うか、誰が書きたくて、どのシーンが書きたくて書き始めた本か分からないと言うか。そんな感じでしょうか。あと、クリスティーナの性格がちょっとねじれ過ぎていて可愛くありません。それも気になります。

評価は?

星3つですね。モチーフは良いと思うし、料理の腕もあると思うんですが、どうもピンぼけ感が否めないんですよ。キャラクターの掘り下げもイマイチ足りないし。・・・この辺りはシリーズなんで、後々深まって行くのかも知れませんが、これ一冊で見た場合、2巻に手を出す読者がどの位いるのかちょっと不安ですね。
あ、岸田メル氏のイラストは全体的に良いです。ちょっとキャラクターの書き分けが微妙な所がありますけど(クリスティーナとシヴィル)、全体的に良いですね。雰囲気が良く出ているシーンなんかもあって、結構今後が期待出来そうです。