パラケルススの娘(3) 仮面舞踏会の夜

パラケルススの娘(3) (MF文庫J)
パラケルススの娘(3) (MF文庫J)五代ゆう 岸田 メル

メディアファクトリー 2006-02-24
売り上げランキング : 189047

おすすめ平均 star
starヒロインの心理はきちんと描写してほしい

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

美味しいキャラクターがわんさかと増えて、いい感じのキャラクター小説になった2巻では、婚約者の赤羽美弥子が結構クローズアップされましたが、今回はやはりと言うか順番と言うか、表紙のイラスト通りというか義理の妹・青野和音がクローズアップされて、その深層心理などが表に出てくる事態となります。主人公は実に美味しい事になりつつある3巻です。
段々各キャラクター共に性格などもあらわになってきて、悪く無いんですが、やっぱりとっ散らかっている感じはしますね。今回は吸血鬼ネタで、扱っているテーマは悪くないんですが、なんかイマイチなんです。視点があっちこっちして、主役がクリスティーナなのか、それとも跡部遼太郎なのかはっきりしないのが最大の問題なのではないかと思いますが。でもまあ読み始めてしまえばそんなに気にならないと言えば気にならないんですけどね。えーどっちなんだ俺。
あとこの本、ちょっと面白いなと思う所が「パラケルススの娘」クリスティーナが主人公・跡部遼太郎を全く恋愛対象と見ていないので、「遼太郎と誰とくっつくんかなー」というのが全く分かりません。つまり禁書のインデックスやゼロの使い魔のルイズのような鉄板のキャラ(メインヒロイン)がいません。というのでその辺りも含めてちょっとキャラ紹介など。

キャラ紹介:女性編

クリスティー

謎めいているのが魅力と言えば魅力なのですが、それ故に狂言回しとして向いていないような気がします。性格的には十分に個性があるのですが、何分捻くれていて感情表現があまり無いのでちょっとどうかなあという感じ。ある意味もの凄く冷徹で怖いキャラクターにしてしまった方がいっそ良かったような気もしますが、どうなんでしょうね? とにかく彼女が本格的に出てくれば事件も解決が近いです。実力があり過ぎるので作者としては意外と動かしにくいキャラなのかも知れませんね。最終兵器っぽい所がありますが、意外にもろい所もあるみたいなので今後も要注目でしょう。彼女の隠し持った「弱さ」をいかに「愛するべきポイント」描けるかでこの作品の今後が決まってくるかも。

  • 恋の鞘当て

今の所全然関係ないポジションにいます。年齢も相当離れているみたいだし、ちょっと無理か? しかしもし参戦したら最強のポジションに来るでしょう。間違いなく。今までの態度とのギャップも相まって、ある意味凄い事になるかも。

レギーネ

完全なるメイドですが人間じゃないのがちょっとアレです。可愛いというよりは凛々しいですかね。活躍している割には台詞が少ないので性格が読み切れません、というか感情があるのかどうか。実務的な性格していますね。まあ彼女の秘密が明らかになる時がこのシリーズの終盤でしょうね。なのでまだまだこれからでしょうか。素直な性格(ロボっぽい)なので時々ねじくれたクリスティーナより優れた観察眼を発揮する事も。クリスティーナも彼女の言う事だけは聞きます。

  • 恋の鞘当て

遼太郎の事は信頼に値する相手だと考えているようですが、感情があるかどうが微妙なので恋以前の問題です。

赤羽美弥子

ツンツン9割、(遼太郎には)分からないデレ1割位の「これは良いツンデレですね」というキャラクター。イラストのイメージもなかなか良く、彼女だけしかヒロインがいなくても、この話何とかなったかもねー、という感じではあります。料理はへたでも気位が高い、でもただ高飛車なのではなく、遼太郎の婚約者として彼をもりたてたいという隠れた本心みたいなものもあって、結構芯の強い女性である所が見え隠れしたりします。いい女になりそうな娘ですよ。

  • 恋の鞘当て

本命その2。何と言っても親に決められたものとはいえ既に「婚約者」の称号を持っているのは強い。本人も実はかなりまんざらでもないので、遼太郎がその気になれば簡単に「内助の功」をやってくれそうです。素直じゃないですけど、まあ最初だけでしょうし。「婚約者」の大義名分もあるのでいきなりヘリで頂上目指すような遼太郎攻略をやると思います。というかプライドが邪魔して現時点ではそれ以外の方法は取れないかも知れませんね。

青野和音

義理の妹というだけで、その属性を持つ人たちにとっては即死系な娘ですが、いまいち押しが弱い所がありますね。まあそれがまた妹キャラの特性(元気で無邪気の対極のタイプの)をもっていて、いいです。3巻は彼女がひた隠しに隠していた本心が出てしまう巻なのですが、これがいいです。そのシーンのイラストもスケスケでいーです。

  • 恋の鞘当て

ちょっと現時点では積極性という意味で美弥子に負けていますが、3巻でカミングアウトもしちゃう事ですし、本格参戦ですね。やはり昔の日本女性のいい所をぎっしりと詰め込んだ娘なので、いい奥さんになりそうです。家事全般もすでにOKだし。遼太郎がもしイギリスから帰らなければ美弥子の「婚約者」の事実は多分うやむやになるので、勝ち目が出てきそうです。まあ足下からじわじわと遼太郎を攻略するのが吉でしょうか。多分長期戦狙い。

ジンジャー(メガエラ)

いやあ、照れ隠しっぽい「このアスパラガス野郎」発言が好きでねえー。ツンツンでもないし、デレデレでもないその性格もいいですが、正義感も実力も地位もばっちりで、着飾れば立派な淑女になる所も普段とのギャップで良い。遼太郎とは違う立場からイギリスの魔術世界を見ていると言う貴重なキャラクターでもあります。可愛いっすよ。

  • 恋の鞘当て

微妙に大本命。何しろ遼太郎の唇を真面目に奪った過去がありますし、能力も外見も十分な条件を備え持っています。本人もてれてれになりつつあるし。なにしろ物語の舞台となるロンドンは彼女の庭、地の利はばっちりです。家庭的な能力については未知数かも知れませんが、別に現時点で同居している訳でも無いのであまり関係ありません。ま、いいでしょ別に。それに何と言っても日本の二人の娘を差し置いて、2巻の表紙を飾ったのは彼女ですしね。

シシィ

11歳ですが訳あって行動がかなり幼くなってしまっていますので完全にロリキャラですね。可愛いですがロリを売りにしたようなあざとい描写は「パラケルススの娘」シリーズには意外と無いので、ちょっと萌え要素は足りないかも知れません。ただ「幼女の自然な姿がいーんじゃねーか馬鹿!」という病状のかなり悪化している大きなお友達には受けるのかも知れません・・・ね。彼女が一番萌えるという人はロリコンですので自覚して下さい。気がついたら小学生の女の子とかを視線で追っていませんか?犯罪ですからね。

  • 恋の鞘当て

うーん無邪気なのはいいですが、まだまだ参戦していると言いがたいので現状のまま数年時間が経過しないと苦しそうですね。タイムアウト狙いしかないか・・・?

キャラ紹介:男性編

跡部遼太郎

登場初期こそコンプレックスまみれになっている所がクローズアップされてちょっと弱いなあって感じでしたが、ロンドンでの生活に慣れたのか、使いっ走りの下僕扱いでもやれる事があるというのが良いのか、落ち着きが出てきて結構紳士のイメージが付いてきています。段々ただ流されているような軟弱な男では無く、結構勇敢ですらあるということがはっきりしてきて、立ち向かう主人公としての地位を確立しつつあるような気がします。彼を文章の視点の中心に据えて作品を作った方が落ち着くような気がするんだけどな。実在したら「こりゃモテるわな」というなかなか良い少年です。

  • 恋の鞘当て?

誰が好きなのか全然分かりません。みんな好きなのかも知れませんが、どうも家族愛ですねえ。ジンジャーは半裸を見ちゃった事とチューされた事もあって女性として意識しているようですが・・・。他はどうかなー。まだまだ天秤がどこに傾くのか分かりませんねえ。

バなんとか(バシレウス)

ストーリー的にはどうでもいいのですが、実はお笑いとある意味正しい人間性の表現という意味でこの話に欠かせないキャラクターだと思います。いないと寂しくなりますよこういう人。猛烈にアホですが、愛すべきキャラクターです。でも狙っている女がクリスティーナというのはかなり苦しいな。茨の道どころか針山地獄を登るようなものだと思う。最初はなんだこのキャラとか思いましたが、今はなにげにお気に入りかも。特に恋愛模様などはどうでもいいので以下略。まあ頑張って今後とも笑わせてくれたまえ。

シヴィル

バなんとかの家庭教師の仮面を被った政府の霊的な組織<評議会>メンバー。でも宮仕えっぽいのでなんだかどーもねー。メリュジーヌという水妖をつれて歩いているので女なんて実は十分足りているのかも。こいつの恋? どーでもいーよ。

3巻は結局どう?

和音のクローズアップが嬉しいですが、うーん、星3つかなあ。キャラ小説としても楽しめるし、変な魔術の描写もなかなかな本なので、星4つあげてもいいか? じゃあギリギリ星4つ。
段々と遼太郎が凛々しくなって行っているのは頼もしいですけど。なんだか全体的に足りないんだよな。もう少しで凄く楽しい作品になりそうな気配があるのに、何が足りないのか全然分からない。うーん・・・話の語り口も結構変なリアリティがあって良いんですよ。菊地秀行的納得方法というか、論理的な説明は無いけど「ああ、そういうものなのね」見たいな感じで、妙な説得力があったりして。でもなー、何か足りないんだよなー。
あ、イラストの出来はやっぱり高めで安定ですかね。キャラの動きの想像出来るイラストが個人的に結構好きです。

感想リンク

ラノベ365日  booklines.net  影法師