世界平和は一家団欒のあとに

世界平和は一家団欒のあとに (電撃文庫 は 9-1)
世界平和は一家団欒のあとに (電撃文庫 は 9-1)橋本 和也

メディアワークス 2007-02
売り上げランキング : 9657

おすすめ平均 star
star家族愛。
starライトの権化
starあとに残るものがある

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あ、程よいカテゴリがないなあ。
電撃小説大賞<金賞>受賞作だそうですが。
なあに、別に<大賞>じゃなかったからって凹むこたあありませんぜ作者。<大賞>とこの作品の勝負は近代技術の贅を尽くした高級マンション vs 千年前に作られた重厚な日本家屋みたいな勝負だからな。つまり好みだ。

ストーリー

主人公の一家はそろいもそろって超常的な能力を持った一家で、父ちゃん勇者、母ちゃん魔法使い、姉は地球外まで悪の宇宙人とやらと戦いに出かけているし、弟は一人で何十人もぶっ倒せるような力を持っているし、妹は素晴らしい回復魔法との使い手だし・・・と、のっけの設定から吹っ飛んだ感じがある家族の物語。
・・・で、いいですかね。違うような気もするけど、基本は家族の物語だって事だけ押さえておけば良い訳です。その辺タイトル通りですね。一家団欒>世界平和なお話です。つまり超人ホームドラマ

キャラクターは良いですよ

うん、余計な文章を増やさずに登場人物のキャラクター性が良く表現出来ている作品じゃないかと思いますね。とにかく登場人物が多い割には一人一人の特徴と兄弟姉妹の繋がりが意外な程良く書けていて驚き。エピソードの選び方と書き方が抜群に上手いという気がした。
普通はこの文字数でコレだけキャラクターを出したら混乱をきたすと思いますが、そうならない所が見事。主人公の視点で一定のリズムで書いているのが良かったのかな。

主人公の特技が気にならんでも無いが・・・

えー、某有名作品の主人公の特技「直死の魔眼」にそっくりな所がありまして、ナイフはやめた方が良かろうなあとか思わないでも無いのだけれど、ストーリーや性格が全く違うものに仕上がっているのでその辺りは目をつぶる事にできるかな。
ま、向こうは最初は同人作品だしな、最終的に有名になっちまったもん勝ちということで、作者には今後○ィズニーの様に厚いツラの皮を標準装備してもらって、アレを蹴落とす勢いで頑張ってもらいたい。
でももう一捻り欲しかったのは事実かな。そこさえ無ければ他は気になる所が無かったせいだけど。

あとは・・・

続きを出す事が多分決まっているのじゃないかなあと言う感じ。
登場はしたけど活躍しないキャラがいた事でそういう風に思ったくらいかな。
多分だけど、投稿の段階ではちゃんと出番が用意されていたんだけど、続きを出す事が内部的に決まっているので特定の人物の出番が大胆に削られたような感じがして、そのせいでこの本一冊で見た場合に「読者の評価」が下がってしまっちゃあいないか? ちょっと作者が不憫か? という気もしないでもない。
だから一冊で見た場合の完成度は「ミミズクと夜の王」や「扉の外」に劣っているね。これはもう仕方の無い事かもしれないです。作者よ・・・頭撫でてやるから元気出せ、な?

評価は・・・

星3つかな。(多分だけど)文章が削られていなければ星4つかな。でも次が気になるな・・・って話。
家族愛にとにかくフォーカスが与えられているので、その辺のアットホームな感じが好きな人は手に取って読んでみると吉。
少なくとも<扉の外>と比べた場合、この本の方が圧倒的に読者を選ばない作品である事は間違いない。読みやすいのは正しい事です。