ROOM NO.1301(4) お姉さまはヒステリック!

ROOM NO.1301 #4 お姉さまはヒステリック! (富士見ミステリー文庫)

ROOM NO.1301 #4 お姉さまはヒステリック! (富士見ミステリー文庫)

世の中では「ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・すりー (富士見ミステリー文庫)」とかの話題で盛り上がっているのに、既刊本の感想が追いついていないので感想を自粛している私は正直負け組です。

ストーリー

前作で戦術核がどっかんと落ちて来た訳ですが、その戦後処理は意外な勢力の介入によってあっさりと付けられてしまいました。健一の手を離れた所で・・・。これは悲しいのか切ないのか、喜ばしい事なのか、ちっとも分からない事でしたが・・・。
また、それとは別に幽霊マンションに新たな入居者が現れます。名前をシーナ。これぞ正しく下半身が常日頃から滾っている少年と行った感じのキャラクターですが・・・やっぱり彼も当然秘密持ちなのでした・・・。
微妙に世間とズレてしまっている幽霊マンション13階の住人を中心に据えて送る、シリアスなような陽気なような恋愛実験作の4巻です。

意外な決着?

というよりは「一時停止」でしょうか。前作がああだったので「これはどうなるんだ!」という感じで読み始めたのですが、想像以上にシリアスな展開になってしまいました。この辺、作者のこの作品に対する醒めた視線が伺えて悪くない気分です。国連軍による調停とでも言いましょうか。
「悪い事」「良い事」が一方的な側面だけで語れないという事が提示されて行きます。悲しい事なのかも知れませんが、これが我々の生きている世界のリアルな恋愛でしょうね。「好き」「嫌い」だけで成り立つ「日々の暮らし」なんてモノが存在しないのだ・・・という事をみせつけてくれます。

シーナの話だね

メインは新しい入居者の「シーナ」の話です。やはり現実から明らかに逸脱している人間ですね。綾のような逸脱と言えば比較的分かりやすいのでしょうか。健一は彼女となぜかコンビでストリートライブをやる事になって行くんですが・・・。

どこまで行っても

ままならないストーリー、と言って良いのかも知れません。人と人との繋がりに大抵の場合「完全な結末」が存在しない以上、こういった話の作りになるのは恋愛関係をシリアスに捉えれば当たり前と言って良いのかも知れません。
私から見た場合、健一はイライラしそうな(つまり「はっきりしやがれ!」という意味で)キャラクターなのですが、彼は普通のラノベでは「終点」に設定されそうな所にまでは結構簡単に行き着いてしまった上で、それぞれの状況に対してそれなりの結論を出して行っているのです。それで不快感を感じないのでしょう。
その上で、そこから健一一人の力(想いと言っても良いかも知れません)では踏み込み様の無い「どうにもならない事」がじっくりと描かれているのがこの作品の魅力なのかも知れません。恋愛は一人でするものじゃないというのが時々冷徹に描かれます。その辺りは普通のラノベからある意味逸脱していると言って良いのかも知れません。

恋愛の話ですけど

人生観と恋愛観の教本みたいな本でもありますね。星4つ。
今回もちょいエロでお送りしますが、そんなにエロエロ言っていられる程恋愛は生易しくねえよ、って本でもあります。大抵の恋愛は「ヤってからのその後」が大事なんだもんな・・・。