ひと夏の経験値
- 作者: 秋口ぎぐる,濱元隆輔
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2006/08
- メディア: 文庫
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・・・正直、なんか心が痛かった・・・。
ストーリー
主人公の「おれ」こと友永達也は彼を含めた4人の仲間達と青春の時間をTRPGにつぎ込んでいる少年だった。彼らはより良いプレイ環境を求めてその地方のサークルに参加したりしてTRPGに情熱を傾けていたのだったが、ある日一人の少女がその環に加わる事となった。一ヶ月という期限付きで。
可愛らしい彼女を気に入った「おれ」は全力で彼女をもてなすべく、TRPGで楽しませようと努力するのだけど・・・という話。
TRPG(テーブルトークRPG)
まあ当然のように有名どころなら「ソードワールドRPG」とか「D&D(ダンジョン&ドラゴンズ)」とか「ストームブリンガー」「T&T(トンネルズ&トロールズ)」なんてのもあったかな・・・。まあとにかく「キャラクター作って」「サイコロふって」「話し合いの挙げ句」「ゲームを進めて行く」「卓上でやるRPG」ゲームですね。
そもそもRPGが「ロールプレイングゲーム(役割を演じる遊び)」な訳だから、自分が演じる必要のない家庭用ゲーム機のいわゆる「RPG」は厳密な意味では「RPG」では無いのでは・・・なんて昔は思ったりもしたけど、まあそれはともかく。
やったこと、あるなあ・・・
正直私は「TRPG」に付いて行けなかったし、もうぶっちゃけ参加直後から「キモイ」と思ってしまった口なんです。
もうなんて言うか、野郎どもが集まって(女なんて、まず滅多にいない)、ファンタジー世界に脳みそを全力で飛ばしつつ、普段は見ない様な8面体サイコロやら12面サイコロ、20面サイコロ何ぞを振って、ゲーム世界を黙々と妄想し続けているその様子に正直耐えられなかった。不気味で得体が知れなくて、何故か分からないけどおぞましかった。
参加資格はあったと思う
普段からリプレイ集を読んだりもしたし、ルールブックを読むのもキライじゃなかったし、ファンタジー作品も名前が知られているような有名どころは殆ど網羅していたから、知識レベルではなんの問題もなかった。でも、TRPGに参加した事はとにかく私にとっておぞましい体験だった。
多分今にして思えば一緒にプレイした仲間達に「端から見た不快指数の高い現在の私/キモくて怪しくてニヤニヤしている私」を見てしまった(あるいはそういう未来を想像してしまった)からだと思う。だから私はそこから離れた。
この作品内において僕は
名前こそ出さないけどあるキャラクターと完全に自分を重ね合わせる事が出来る。だから他のキャラの気持ちが分かる様な分からない様な不完全な気持ちだ。突っ走る者達、立ち止まる者達、方向転換する者達・・・色々いて、どの道が合っていて、どの道が間違っているかなんてその時には誰にも分からない。
私は・・・うーん、頑張って一時は方向転換したけど、やっぱダメだったんで「かつての分かれ道」まで戻って来たクチ?(涙
そうねえ・・・
ある意味見事な青春小説なのだけど、この作品に星をつけるのは止めておきます。
個人的にとてもイタい所を突かれてしまって、なんというか離れてしまった私がこの「残った者達の世界と、頑張った分のご褒美(つまり経験値)」の物語に星をつけるのは筋違いだと思うから。
当時私は冒険を途中で投げ出した。だからそのまま続けていたら何らかの経験値が得られたのか、何も得る事無くストーリー場でサイコロの出目が悪くて死んでいたのかすら、分からないから。
でも、この話の中での「もらえた経験値」は、彼らに取っては素晴らしいモノだったんでしょうね。きっと。でももうそういう夢の様な展開を、全く信じられなくなっちゃったからなあ・・・。