さらば愛しき大久保町

さらば愛しき大久保町 (ハヤカワ文庫 JA タ 9-5)

さらば愛しき大久保町 (ハヤカワ文庫 JA タ 9-5)

えーっと、ハヤカワから復刊していますが。
なんというか、このシリーズの企画を通した電撃文庫の担当者の頭がおかしいのか、作者の頭がおかしいのか、まあ多分両方だろうけど、今でいう化学反応がいい感じで起きてしまったシリーズですね。で、私の一番好きな最終巻の感想を書きたいと思います。
ところで、このブログの本分に立ち返って感想を黙々と書いていたらアクセス数が見事に激減しております訳ですが、まあここの所書いた感想は古い作品だし仕方が無いかと思いつつも、微妙に空しい気持ちになるんだねコレ。
そんなにみんなまとめ記事とかおっぱいとか好きかな〜って思う春の日。沈丁花ジンチョウゲ)の花の甘い香りがあちこちに漂う今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?

ストーリー

やっぱりというかなんというか舞台は相変わらずの大久保町です。つーかそれ以外あり得ません。兵庫県明石市大久保町ですね。まあ田舎町らしいですが、その辺は現地の人にリサーチをして下さい。私ゃ知りません。
外国のお姫様である「プリンセス・カナコ」さんが取りあえず外交上の理由から世界中のあちこち(バッキンガム[舞踏会]→アムステルダム[船の進水式]→パリ[貿易会議]→ローマ[有名美容師による散髪])を経由してなぜか大久保町にやってくる所からスタートする訳ですが、いきなり誘拐されます。
というかそのルート選択の後になぜ大久保町に来るのかとか、プリンセス・カナコってどこの国のお姫様だとか、今回の大久保町はどういう設定なんだとか考えたら負けです。
で、主人公の松岡芳裕(まつおかよしひろ)はそのカナコ王女の誘拐事件に巻き込まれるどころか、彼女を助けてしまったりするんですが、まあやっぱりボーイミーツガールな感じが楽しいんですな。

主人公と王女

そろいもそろってもの凄くアレです。
主人公は愛すべき天然野郎であり、王女はやはり猛烈に可愛い天然少女であります。
天然 vs 天然。こんな戦い、見た事無い
とにかく二人の逃避行(本人達はその気はないけど)を止めるブレーキがこの両者共に全く備わっていないのだからして、事態は混迷の一途を辿るのである。ちなみに松岡芳裕くんがカナコ王女の事をどう思っているかをちょっと引用してみます。

結婚するならこの子だ。
芳裕は生まれる前からずっとこの人を待ち続けていたのだという確信のようなものを感じた。
ちょっと腕に抱きつかれただけなのに。
馬鹿と違うか。などと思ってはいけないのである。こういうことは誰だって人を好きになるたびに多かれ少なかれ感じるものだ。

いや、馬鹿だと思うよ。まあそれはともかく、じゃあカナコ王女はどうかというと、

「わかったから怒らないで。言う。言うから。ね」必死になってとりつくろう。
「な、なに。怒ってないよ」反対に芳裕の方があわてた。「ぜんぜん」
「ほんと?」
「うん」深く頷いて「ぼくはあんまりおこったりしないんだよ。ふだんから」
本当にそんな感じだ。
「よかった。私ね、誰かが怒るとそれが自分に関係なくてもものすごく困るのよ」もうすっかり安心したようだった。

いや、ちょっとアレだけどいい娘ですよ? 王女って設定だけど。俺もこんな娘と結婚したい。
じゃあ主人公達一行(二人だけど)が悪いのかいなと言われれば「や、それはちょっと違うんでないか」という周囲を含めた馬鹿っぷりで話が進む訳です。

まあアレです

カナコ王女を狙うテロ組織みたいなものが出て来て全体的に大変な訳で、ミサイルぶっぱなしたり、マシンガンで撃って来たり、人死にの一人や二人出てもおかしく無い展開もありますが、正直そんなのは主人公二人と大久保町という恐ろしい土地においては味付けになってしまうのがこのシリーズの恐ろしい所であって、この本を読んだ挙げ句の果てに私の印象に残ったものと言えば、

  • 大久保町では町内放送で散布する農薬の配合の塩梅を朝っぱらからやかましくがなり立てるらしい。
  • タコだらけの釣り堀があって、今は釣りが禁止になって水族館となりタコが増えて溢れているらしい。入っただけで腰までタコに埋まるらしい。
  • とにかく恐ろしい病院があって、そこの看護婦に捕まる=死ぬ程苦しい目にあるらしい。
  • 大久保町の地方局のアナウンサーのきんたまはとにかくむちゃくちゃでかいらしい。

つまり大久保町に関する理解は深まる一方という訳である。

でも良い話ですよ

星は5つ。もう今まで何回読み返したか分からん。
とにかくラスト付近の展開やら、芳裕の気合いの入ったシーンやら、カナコ王女の気合いの入ったシーンやらは、他が間抜けな感じなのでとっても清々しい気分になれる事請け合いですね。
読了感も最高に良いので、ラノベ読みなら一度手に取って欲しい本ですねえ。コメディ(ちょいシリアス)&ボーイミーツガールが好きな人なら最高に楽しめると思うんで。・・・当時ネットがもっと普及してたらもっと話題になった本だと思うなあ。とにかく凄い勢いで再版してくれ。買うから。

相変わらず

巻末では此路あゆみ氏のイラストがエンドロール的に連発されて、今までのシリーズと同じ様にこの物語のラストシーンを飾ってくれます。最高にイカす終わり方ですよ。ラノベは、こうでなくちゃね!

ハヤカワ版出版にあたって追記

イラストは電撃のときのが良かったかなあ・・・うーん、好みの問題だろうけどね。