サイレント・ブラック

切ない話だったな・・・。

ストーリー

一人の男が殺された。そのままならただの殺人事件として警察が精霊課を送り込む事はあり得なかったのだが、犯行現場の異常さがそれを許さなかった。そして二人の刑事、小柄な少女のマティアと、大男の精霊マナガが事件を担当する事に。
事件現場は、惨憺たる様相を呈していた。一人の人間が完全に引きちぎられ、バラバラにされていたのだ。人間の力には不可能な犯罪と思われたが、現場には精霊特有の力精霊雷の気配がない。一体犯人は何ものなのか? そしてその犯罪はどのようにして行われたのか? 殺人事件の背後に隠された過去のおぞましい秘密が明らかになる時、マティアとマナガが目にしたものは?
ポリフォニカシリーズ(黒)の第2弾。

マナガはどう考えてもおっさん

しかも身長が2メートル半。いやー最近のラノベでは珍しいタイプの主人公でしょうか?
私の愛着のあるラノベ界の大男と言えば、うーん、<キマイラ・吼>シリーズに出てくるメインキャラの九十九三蔵とか、<聖刻1092>シリーズの主役のフェンとかでしょうかね。マナガの場合はしかもどう考えてもおっさんだし、いやあ、こんなん主役でいいんかなーって1巻の時は思ったもんですけど、2冊目ともなるともう全く違和感が無いですね。
しかも彼のキャラクターは実に人間味があっていい。今回のメインストーリーに登場する時に彼が最初に発した言葉が、

「ぐふぅう」

いや、ただのアクビなんですけどね。真面目な割にはミョーに生活感が漂うような描写が効いているせいか、なんとも奥行きがあっていい。味わい深い蒸留酒とでも言いましょうかね。ちなみに外見の割にはスプラッタな検死解剖とかは苦手らしい。変に愛嬌があります。

マティアはもうたまらんですね

今回はちょこちょこと顔を出してくれて、あちこちで萌え要素と知性の閃きを見せてくれるんですが、マナガという大男に抱えられているという構図が堪らなくいいですね。なんか悲しげな過去とかもありそうな描写もあるにはあるんですが、マナガが付いてますしね。心配はいらんでしょうという感じでしょうか。今回とてもいいなあとか思ったのは

黒いワンピースから伸びたマティアの白い膝が、もじもじと動く。

いえ、彼女が照れている描写なんですけどね。可愛い。・・・だっ、だれだ! 一瞬「おしっこガマンしてるのかな〜?」とか変な事を想像したのは誰だ!(私です)。
・・・変な話はこの位にしても、今回もマティアはその知性と直感でもって事件を解決に導いて行きます。・・・まあミステリでは珍しく、この少女の言う事に<?それってそうでもなくね?>と思った部分も無くは無いのですが、それでも冷静な眼差しはマナガの存在との相乗効果でもって、物語を引き締めてくれます。

まあともかく

1巻と同じ様に読者は犯人を最初から知っていますが、事件自体はとてもシリアスで、悲しく、切ないものでした。人間の業とでも言うんでしょうかね。一つの悲劇がまた別の悲劇を生み、連鎖が連鎖を生む。裁きを受けるものは一体誰なのだろうという少し考えさせられる話でしたね。
星4つ。安定して面白いけど・・・正直どこが面白さの秘密なのか良く分かってません。登場人物達の心情の繊細な書き込みが魅力的なんでしょうかね。「なんだかわかんね〜。でも面白いからいいか〜」見たいな感じでしょうか? 私に取っては不思議な印象の本ですね。