000のエレナ

000のエレナ (富士見ファンタジア文庫 128-8)
000のエレナ (富士見ファンタジア文庫 128-8)日下 弘文

富士見書房 2007-03
売り上げランキング : 303105

おすすめ平均 star
star面白かったです
starトワ・ミカミシリーズの著者の描く新作はまたもや神を題材とした作品

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ストーリー

神話の世界で「神」や「悪魔」と言われる存在が突然人間の姿を現し、人間を攻撃し始めた世界。人たちは神々を<聖数を刻まれし者>(イ・グマティオ)呼んだ。その圧倒的な力の前に滅びを見た人類は団結し、対神魔組織AETO(アーティオ)を組織する。
主人公の藤沢涼牙(ふじさわりょうが)はそこに所属する新米の諜報員だ。彼は最初の任務として一人の少女の動向を監視する様に命令をされる。それがエレナだった。この少女は<聖数を刻まれし者>が持つ特有の数字<聖なる神魔数>(イ・グマティオ・コード)と呼ばれる数字が体に刻まれていて、その番号は「000」。しかし人類に敵対行動をとる訳でもなく、人々を害する神魔を滅ぼしては日々の糧を得ているみすぼらしい少女だった。
神話級の崩壊の中で繰り広げられるファンタジー作品の1巻です。

ちょい「ぶったまげ」

のっけからフランスの首都・パリが地図から消えてしまう所も凄いなあとか思いましたけど、その時その場に出てきた神様が斉天大聖(孫悟空)だったりして、ついでにその場に出現した「明けの明星」(分かる人にはすぐバレバレ)と呼ばれる存在とバトルを始めちゃったりして、なんだかなーって感じでした。
しかも神や魔は無効化領域(ゼロ・フィールド)というモノを持っていて、通常攻撃が通じない存在って・・・やっぱし残念ながら即「ATフィールド」を思い出してしまいました。
ま、設定は所詮設定なんで、作品に命を吹き込むのはキャラクター。そこら辺に期待しつつ読み進めてみたりしました。

キャラは

主人公の藤沢涼牙はストレートな筋肉馬鹿ですかね。体力の替わりに知能を大幅に犠牲(笑)にしているタイプ。のっけからAETO支給の通信機を「使い方が分からない」という理由で壊し始めたのは驚きましたけど、この辺の描写を含め、なんとなく性格設定とかが分かってきました。引用してみます。

「ああっ!? まぁだつながりやがらねーか! てめぇ! おもしれーじゃねーか、オレ様にたてつこーってわけだな!? この! クソが! だったらとことんやってやるぜ!」

精密機械は「叩いて直す」タイプの人間です。
もう一人の主人公・エレナは・・・イラストレーターだか編集者だか作者の指示かは知りませんが、外見は十代半ば位に書かれていますが、性質的に幼女です。しかし、街の人々からは<できそこない>として忌み嫌われる存在となっています。普通に可哀想。仕事の報酬のパンを地面に捨てる様に渡された後の少女の台詞が、

「あ、いや、……なんでもない。……またわたしに仕事があったら、いつでも声をかけて欲しい」

ああ、か弱い・・・。ついでにもう一つ。

「……。もし、誰かがわたしのことを知らずに……わたしを匿って、あとでそれがほかの誰かにわかってしまったら……その匿ってくれた人まで……酷い目にあってしまうから」

いい子だ・・・。
で、当然の様に脳みそが筋肉で難しい事を考えない藤沢涼牙は周りの馬鹿共の言う事など知るかという感じでエレナに入れ込む訳ですが・・・、まず最初はやっぱり餌付けですね。で、その時の反応が、

リョウガ、このそふとくりーむというのは、冷たくて甘くておいしいな。一気に食べ過ぎるとたまに頭の奥がキーンとするのだが、それもまたよい感じだ」
「そかそか、ソフトクリームには、牛乳ってのがいっぱい入ってんだ。牛乳は健康にいいんだぞ。カルシウムもたっぷりだからおまえいまはチビっこいけど、ガンガン食ったらすぐにでっかくなれるかんな」

凄い分かりやすい二人の関係ですね。ちなみにエレナは怪我はないけどケがあるそうです・・・ちょびっと。
とにかく、キャラクター描写は最初の方はちょっと戸惑いましたけど、読み進めて行くと結構良いかなって思えましたね。前半は少々強引だとは思いましたけど、中盤以降の二人のやり取りはなかなか読ませます。

ラストの展開

ちょっと流石にご都合主義的過ぎかなって感じもしましたけど、ラノベですからその辺はいいです・・・が!
エピローグに某有名超絶美形主人公が出る漫画から取ったろこのキャラの名前!というキャラが出ます。あー、あの漫画から世界観を流用しているのねん・・・って思ったらちょっと夢から覚めました。

でもねえ・・・

一番ヤバいのは実は克優希氏のイラスト
人間は特に可もなく不可もなくって感じですが、中盤にリョウガが突然出現した<聖数を刻まれし者>に攻撃を加えるイラストがあるんですけど、正直笑ってしまいました。
すんごいエラくて強い敵のはずなんですけど・・・絵で見るとただの「今週の怪人」って感じです。すんごいしょっぱいの! これはもうちっと何とかならんかったんかな〜。
まあ、イラストレーターの人も「〜明王」と人間の対決シーンを一コマで書けとか言われて困ったんでしょうけどね・・・。口絵カラーにもなっているんですけど、これもかなり「今週の怪人」指数を上げております。

総合

星3つになんとか届いたかな〜という感じ。前半は「これも地雷か!?」とかドキドキしつつ読んでいましたけど、中盤から後半に書けては結構キャラが動いてきていい感じですね。なのでまあセーフって事で。
でも続編に手を出すかどうかは・・・正直微妙ですね〜。多分2巻までは出たら読んでみると思いますけど・・・2巻次第かな〜。

感想リンク

まいじゃー推進委員会!  ラノベ365日
ラノベ365日さんが結構過激に感想を書いているんですけど、何となく目から鱗が落ちた感じ。納得。