風の聖痕(3)

頑張ったなあ、弟くん・・・。

ストーリー

主人公・八神和麻の実の弟であり、なにか周囲からとっても愛されている少年・ですが、今回彼がなんと初恋をします。12歳ですけど・・・これが遅いのか早いのかは分かりませんが、まあ初恋みたいです。
で、その恋模様が普通に終われば良かったんですけど(初恋は叶わないものと言いますし)恋した相手が実にタイムリーに悪かったという・・・そういうお話。
煉の恋は、良くあるラブストーリーどころか<地術師>である石蕗(つわぶき)家まで巻き込んだ大騒動へと発展する。そしてそこでまたしても繰り返される憎悪と復讐の物語。大地が割れ、風がうなりを上げ、炎が吹き上がる戦いを描いたファンタジー作品の第3弾。純情少年の明日はどっちだ?

今回は流石に

神凪家の恨みつらみやら過去の清算やらといった話とは無縁でして、その辺りは別の一族の石蕗がやってくれます。
しかしですね・・・「家族」という形の中に本来有るべきではない歪んだ愛――偏愛やら偏見やら視野狭窄やら差別やらを連発して作品のテーマとして扱われると、面白いとかつまらないとかいう以前の問題として、作者の生い立ちに興味が湧いてきますね。
「アンタ、現実の自分が腰抜けで果たせなかった反撃を本の中でキャラクターにさせてるだけじゃないかい?」とかね。・・・ま、この辺はオッサン特有の拗ねた見方だと思って読み飛ばして下さい。
まあそれはともかく、読み進めてくると、このシリーズは常に大本の火種が「人災」なんですよね。精霊やらなにやらを扱っている話なんですが、人間の思惑を絡めて実にえげつないストーリーに仕立て上げてくれています。

煉くんなんですけど

少年が大人になって行く時に一度は通らねばならない道とでも言いましょうか。自分の無力を自覚する事、そして自分は無力では無いと信じること、大切なものとは何かを考える事――その辺が今回一気にやってきます。でもアレですね、煉くん、このまま行けば実に良い男になりそう。正面切って女の子に告白を出来る男は良い男です。

「悪いけど、今、一世一代の告白の真っ最中なんだ。邪魔しないでくれないかな?」

すげえぞ!人に出来ない事を平然とやってのけるッ! そこに(略)
・・・で、気がついたら付き合っている女性の生理が止まっていると・・・モテ路線一直線だな。畜生(まて相手はまだ子供だ!)。

和麻&綾乃ですが

和麻は相変わらずですし、綾乃も相変わらずです。
ちょっと動きがないかなーなんて思ったりもしますが、今回はあくまで添え物の二人ですので、その辺はまあ良いかって感じでしょうかね。安定感を感じる一方で、実は未だに和麻に関してはキャラクターを正直つかみきれていない私です。過去が明かされて、一体何があったのかをはっきりしない事には、「八神和麻」というキャラクターに対して正統な評価が下せない、といった感じでしょうか。
まあ、強く、固く、厳しくというその姿勢が崩れない限りは、特になにも言う事はないんですが・・・1巻の様子やらその他の言動を見るに、いわくありげな過去も有りそうですし、正直2巻の時とかわって逆に不信感が湧いてきました。

全体は

星4つかな?ちょっと意地悪な意味で続刊が楽しみです(フフフ・・・)。
若者向けの説教くさいところは相変わらずですが、そっちは正直段々慣れてきました。綾乃と煉の二人の成長を見守る和麻、という図式が崩れない感じは結構好感触です。ところで、父ちゃんの退院はまだか?