鋼鉄の白兎騎士団(2)

鋼鉄の白兎騎士団 II (ファミ通文庫)
鋼鉄の白兎騎士団 II (ファミ通文庫)伊藤 ベン

エンターブレイン 2006-05-29
売り上げランキング : 36971

おすすめ平均 star
star大作になる予感
star作者さん、あなたって人は

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ストーリー

無事「鋼鉄の白兎騎士団(しろうさぎ)」への入団が認められたガブリエラ含む10名の乙女達は、早速団員として慌ただしい暮らしを砦の中で送る事になります。まずは見習いとして「適正を見極めるため」騎士団の色々な部署をたらい回しにされるのですが、しかしもちろん初めての事ばかりで簡単に進む訳も無く、問題に次ぐ問題といった展開になってしまいます。
しかしまあそれでもなんとかやっていたガブリエラ含む面々ですが、ある時巡回中の二人の騎士が謎の失踪を遂げる事で、見習い騎士であるガブリエラ達もその行方不明者の探索に駆り出されてしまうのですが・・・といった展開の2巻。

展開のリズムが

ゆっくりといえば非常にゆっくりで、1巻が入団テストで2巻が見習い期間・・・一体いつになったら騎士団っぽい事をやり始めるねん! という不満を持つ人がいそうですが、私は逆にこのリズムが非常に心地よかったですね。まあ日常的に変な出来事は起こったりはするんですけど、大過なく過ごしている訳ですね。2巻の前半は騎士団の組織体系についての読者と登場人物一緒になっての勉強に割かれてしまいます。
・・・しかし、それでも面白いんですね。何が? と聞かれるととても困るんですけど、騎士団だって毎日戦争している訳ではないのだからそこには「何事も無い」日常の暮らしがある訳です。その辺りにきっちりページを割いて、ゆったり気味に彼女達「鋼鉄の白兎騎士団」の内側を描いている姿勢が特に気に入りました。
何しろガブリエラが最初に配属されるのが庶務分隊(食料だとか、お金の問題やら、その他騎士団が存続するための諸々の雑用)をこなす部隊だったのがイカしていました。結局ガブリエラは失敗続き(計算ミス山盛り)になってしまうんですが、こうした裏方の存在がファンタジー作品で描かれる事自体が少ないので、貴重です。とくに日本のファンタジー作品ではほとんど無いですよね。
でもこうした描写がある事で物語全体に厚みが増すのは間違いない事で、前線で戦っている騎士達に華があるのは確かですが、裏方の存在合ってこその花形だという事を見せてくれますね。

視点が好きかな

1巻の時にも言っていますが、物語を見下ろす作者の視点が実にいい感じです。つい「国 vs 国」とかのマクロな展開に持って行きたくなってしまいますが(その方がダイナミックですものね?)、そういったことをせずに基本的に「鋼鉄の白兎騎士団内部と、その周辺」位までで話をまとめているのがとても良いです。
騎士団という名前の「自治を認められた女学校」の暮らしをじっくりたっぷり描き出していると言えば、何となく魅力が伝わりますかね。・・・ま、本当に女学校ではないのであまりお色気は無いんですけどね。
まあそれでもサービスショットはちゃんと用意されていますのでご安心下さい。温泉です。ああ、なんて都合の良い! 温泉、みんなで温泉ですよ! ちゃんとイラストもあります。ただ、不満が一つ。白黒見開きなんですね。
なぜ細部までじっくりたっぷり書き込んだ挙げ句の口絵カラーにせんのか!? 何故だ!
絶望した! 日本の出版業界の自主規制っぷりに絶望した! バカ! アホ! しんじゃえ!

キャラクターは

主立った活躍どころで、

  • ガブリエラ——バランス型。強いて言えば知力と機転に優れたタイプで、戦いになる前に勝負を決める傾向が。
  • ドゥイエンヌ——接近パワータカピーお嬢様型。プライドは高いが内省的な部分もしっかり持つ。
  • ジアン——忍者型お下品おバカ。恥じらいとかが一切無いけどその分秀でた観察眼と武力を持つ。
  • アフレア——ロリー魔導師。魔法が使えるけどその分体力などでは劣る

などなどでしょうか。個人的にお気に入りなのはジアンでしょうかね。アフレアと二人で偵察行動中にいきなりオシッコしようとしちゃったり。

「あんた……そこでするつもり?」
「え? ここじゃまずい?」
右手を挙げたアフレアが、びしぃっと右の人差し指でジアンを指差した。
「人前でそういうことを、するなっ!」
「なんでだよ〜〜。女同士だし、いいじゃん」
「恥ずかしくないの、あんたはっ!?」
「自分? 平気だけど?」
アフレアが、だんだんと足を踏み鳴らす。
「最低、最低、最っ低っっ」
「どうしてだよ〜。生理現象なんだから、誰だってするだろ〜〜?」
「誰だってするけど、人前ではしないわよっ。乙女はそういうこと、しないのっ。するなら、あたしの目につかないところでしてきなさいよっ」

・・・このやり取りの前には「ちょっと小便」とかジアンが抜かして、アフレアに下品だっ!と言われてしまう場面が合ったりするんですが・・・。1巻の時の活躍が印象的なだけに、この落差が楽しいですね。

物語は

ちょっとした転換点を2巻で迎える事になりまして、ある重大な事件にガブリエラ達は巻き込まれてしまうのですが・・・その辺りが今後どうなるのか興味津々です。
また、1巻のときと同じように本編はあくまで「過去」で、現在のガブリエラが昔に思いを馳せるという形で語られます。なので、1巻の時に訪れていた「現在」の危機はまだ去っていません。こちらもどうなるのか、期待してますね。

結果

星4つつけますね。
いわゆるエロエロな話ではないのですが、十分に読み応えのある展開になっています。ちょーっとガブリエラちゃんがキレ者過ぎる気配はありますが、まあ他のキャラクターを沢山出す事でその辺のバランスをとっているので良いでしょう・・・かね。
伊藤ベン氏のイラストは・・・不満は上に書いた通りなので! 3巻ではフルカラーのアレやらナニが無いと怒るよ?

感想リンク

まいじゃー推進委員会!  booklines.net
この本をすすめてくれた「まいじゃー推進委員会」の極楽トンボさんに大感謝!ですね。