オオカミさんと”傘”地蔵さんの恋

オオカミさんと“傘”地蔵さんの恋 (電撃文庫)

オオカミさんと“傘”地蔵さんの恋 (電撃文庫)

お話

この話の舞台は学園都市・御伽花市の御伽学園。生徒3000人を抱えるマンモス校。制服も複数種類が用意されており、どれを選ぼうと自由な挙げ句、ある程度(かなりの程度)の範囲で改造が許される自由な校風として知られる。

主人公は御伽学園学生相互扶助協会(通称「御伽銀行」)に所属するすらっとしたスタイルとツルペタを誇る直接攻撃による破壊活動を得意とする大神涼子(おおかみさん)。彼女はその姉御とも言えそうな行動から学園内で一目置かれる存在なのですが、そこに対人・対視線恐怖症の第二の主人公・森野亮士(もりのりょうし)が電撃的な愛の告白をするのだった!
森野亮士は結局その特殊な才能を買われて御伽銀行に所属。生徒達からの依頼を受けては解決し・・・というなんだか童話をモチーフにしつつ変な感じで進む安心のラブコメもの。

1、2巻ともキャラ紹介という感じで話を紹介していたんですが、今回は登場キャラクターも少ないので各話ごとの紹介って感じですね。

ふとっちょ3匹 vs おおかみさん

なんともはや実にお馬鹿な話ですね。
校内に存在していた「美食クラブ」が美味しい物を食べる以外の活動をしていないため部活の活動費用をゼロにされたため(当たり前だ)、それを不当だ!と感じた(まあ悲しくも可笑しい理由があるんですけど)構成員3名・その名も豚田太、広、高(とんだふとし、ひろし、たかし)という全員で合計400Kgオーバーというデブ3人が恐るべき活動を開始し、ある教室を占拠してしまったので、その解決に御伽銀行の面々が繰り出された訳ですが・・・。そのテロとも言える内容がまた凄い。

「断食でも始めたのか?」
美食クラブから連想した覚悟を見せる方法をおおかみさんは口にする。
「いえ……断食ならぬ断風呂です」
「断風呂かよ!!」

断風呂・・・デブの人体から出る匂いによるテロリズム
・・・いやはや恐ろしい。昔何故か大学に本当にこういう人がいまして、いやあ、あれはヤバいですよ! マジで匂いも一定以上まで行くと目にきます。多分何かの願掛けでもしてたのかも知れませんが、周りは堪ったモンではなかった・・・。テスト中に運悪く前の席になんぞ座られた日にはもうそのテストは終わったも同然です。
御伽銀行の面々はなんとガスマスク装備で立ち向かう訳ですが・・・はてさてどうなることか、という話ですね。赤井林檎(りんごさん)の知性と悪巧みが恐ろしい結果を生むんですが(少なくともイラストにしたら絵師を殺す事を真剣に考慮する)。必見。

赤ずきんちゃんとおおかみさんの出会いのお話

亮士くんがりんごちゃんにおおかみさんの昔を聞いた事で挿入されたお話。
おおかみさんとりんごさんの出会いを描いたお話ですね。裏も表もあるおおかみさん(表が恐ろしくて裏が優しい)とりんごさん(表が可愛くて裏が黒い)が徐々に仲良くなって行くまでのお話ですかね。
まあおおかみさんは強烈な意地っ張りっぷりをこの時から全開にしているんですが、りんごちゃんがその一枚も二枚も上手にいって、あの手この手でおおかみさんにまんまと「食べられる事に成功する」話ですかね。

「涼子ちゃんはあんな感じですけど女の子なんですのよ。例えばあの長い髪、本人は勝手に伸びたとか、切るのがめんどくさいとか言ってますけど、あれは涼子ちゃんが捨てきれなかった女の子の部分なんですの。強くなるためにはあの長い髪は邪魔にしかならないんですのよ。
……そう、本当の涼子ちゃんは乱暴者で嫌われ者のオオカミなんかじゃない、ただの女の子なんですのよ。森野君が見破ったように、とっても優しくてかわいくてがんばってる普通の女の子……」

1、2巻を読んでいれば不思議でも何でもないんですが、りんごちゃんがしみじみと語る台詞が印象的でしたね。

”傘”地蔵さんの恋

野球部のエースだけど超が付きそうな変人である花咲仁(はなさきじん)から、家に何者かが侵入しているという話を受けてそれを調べる事になった御伽銀行なんですが、その事件の内容が実にアヤシイ。カタカナで書いてしまう位にはアヤシイ。

「その正体不明のブラウニーさんは、花咲先輩の部屋に不法侵入してお掃除をして夕飯を用意してエッチな本を読んでからかえっていったと」
「その通りだな」
「…………」
「…………」
正直訳が分からない。

しかもこの花咲先輩、この謎の人物の作った料理を食ってます。しかもウマいとコメント。ただ者ではありません。
でまあ、御伽銀行の面々は隠しカメラを使用してその正体を突き止めるのですが・・・いやー、そこで新キャラとして登場する地蔵あみのキャラクターが堪りませんね! なんつーダメ人間! ダメだけどすっごいキモチが良く分かる所が人としてキッツイ! やる! 俺ももしここまでくれば同じ事をきっとやる! 人間としてダメだと思いつつもやってしまう!

『うきゅー』
見た目に似合わない奇声を上げてベッドにぼふっとダイブした。そしてそのまま布団を抱きしめ顔を埋め、ごろごろ。ごろごろ。ごろ……

このシーンイラスト付きで書かれるんですけどね。そのイラストがまた良くできてるんですよ。
なんですかね、こう、知っている人にしか伝わらない例えで言いますと、私の大好きな例の間桐桜さんが衛宮士郎の布団とか部屋とかで秘密裏にやってそうな事をやらかしていると思って頂ければいいです。
ええ、ええ、私はこういうちょっとアブナいまでの愛を注ぐタイプの女の子が大好きですが・・・間違っても男は同じ方向に進んではいけません。フィクションでもキモイです・・・多分。
なんか変態大乱舞って感じですが、実は結構良い話でしたよ?

おおかみさんと亮士くんの初デート

まあ御伽銀行の依頼の一貫としてのデートなんですけどね。
おおかみさんが実に初々しくていいんですが、挙げ句の果てにトラブルからおおかみさんが記憶を数年分失ってしまい、普通の可愛い女の子時代まで戻ってしまうという・・・亮士くんにとっては美味しいのか悲しいのか分からない事件が起こってしまうんです。
実はラストの方でもの凄く悪い奴が出てくるんですが、そいつに対して亮士くんが切った啖呵が実にいい気分で格好よかったですね。男はこうじゃなくちゃなと!
実は一番良かったな、と感じたのは最後まで読んでみて「作者の読者に対する良心」にホッとしたところですね。そうそう、鬱っぽい展開にすれば話に重みが出るって事じゃないですものね。そんな話でした。

総合

いやいや、面白かった。星4つ。
しかし御伽銀行の面々で今回活躍するのがおおかみさん、りんごさん、亮士くんだけなんですけど・・・他のメンツは一体どこに!? その辺りがもの凄〜く気にはなりますけど、まあ次に期待してみますかね。・・・流石に4巻では活躍の場を作ってくれないと、黒魔術っぽいお姉さんなんで忘れちゃうぞ?
今回はおおかみさんのトラウマの元がはっきりしたのが大きな収穫でしたね。ラストの展開は作者の沖田雅に対して「安心して次も読めそうだ!」と思える展開でした。うんうん、安心のクオリティ。
うなじ氏のイラストは・・・うんうん良かったですよ。ハダカあり、百合っぽいのあり、と。百花繚乱?

感想リンク

Alles ist im Wandel  booklines.net  ライトノベル名言図書館
Alles ist im Wandelのコウさんも「うきゅー」ってなってますね。やっぱアレはいいものだ!