リリアとトレイズ(5)(6) 私の王子様

ストーリー

春休み明けにリリアの通う学校ではダンスパーティがあるのだったが、まだリリアは相手が決まらない。他はどんどん相手が決まっているというのに、だ。そんなリリアの悩みはともかく、春休みがやってくる。長期休みと言えば旅行となる訳で、リリアは母親のアリソンと一緒に列車旅行に行く事に。
一方トレイズはといえば20歳になったら「ある一定の条件を満たさない限り」ある女性の元に婿入りする事になっていたのだが・・・そのお相手がトレイズのいるイクス王国を訪れる事となって、そのお相手を出迎えるためにやっぱり電車でお出かけするんですが、何故かやっぱりリリアと一緒に行動する事になって、そしてやっぱりその背後で蠢く陰謀、策謀、その他色々。の5、6巻。

うーん

つまらなくは無いんですが・・・振り返ってみるとやっぱり「アリソン」シリーズの方が楽しかったなあ・・・というのが正直な感想。
アリソンやヴィル、フィーやベネディクトが歳をとっても魅力的なのは変わらないんですが、タイトルの通りこの話の主人公はリリアとトレイズであるべきだろうなあと思う訳ですよ。その割にはどの話でもいつも「立派でタフで怖くて強い父と母」の影が見え隠れしているのが残念なんだなあ。特にこの5、6巻は「主役は一体誰じゃろ?」と聞かれたら結構困る展開ですよ?
3、4巻はリリアとトレイズが理由付きで孤立してましたから、なんというか彼ら自身の魅力や力といった所が沢山見られたんですが、今回はアリソンとヴィルもリリア&トレイズと一緒にいるんですよね。だからどんなピンチになっても「まあアリソンとヴィルがいるしな・・・」となってしまって今イチ緊張感に欠けるんですねえ。じゃあタイトルは「アリソンとヴィル」で良いじゃねえか!? とか思ってしまう訳です。

両親が出過ぎかな〜

・・・これは個人的な意見ですが、やっぱり大人になって色々と吹っ切れてしまったアリソンとヴィルは若さの輝くような魅力という部分に欠けますし、また、彼らを半端に登場させたために主役であったはずのリリアとトレイズの描写が反比例的に少なくなって印象がぼやけた感じがあります。もったいない。
つまり、前作の「アリソン」シリーズが好きな人に媚びるような感じで「アリソンを出演させれば出版部数も伸びるじゃろ」という事でアリソン&ヴィルを登場させ過ぎた事が失敗ですかね(ちょっと言い方は悪いですが)。
そういう設定はあってもいいけど、物語的には彼らの登場機会をスッパリと適当な所で切った方が魅力が増したかも知れませんね(彼らは旅の始まる前の冒頭部分と旅から帰った終わりの部分位に登場とか)。
個人的に希望を言えば、国家を揺るがす陰謀とかどうでも良くて、小さな物語でもいいからリリアとトレイズが確かに主人公だなと思える作品を読みたかったかなという感じです。

陰謀劇そのものは

見せ方の上手さもあって実に面白かったですね。
一体敵の最終目標は一体なんなのか?といった辺りが最後になるまで分からない感じ(私が単にニブいだけかもしれませんが)はとっても面白い。その辺りは実にいい。
・・・しかしやっぱりここでも「アリソンとヴィル」が問題なんですよ。列車です、殺人事件です、ときて、探偵になれそうな人が「アリソン」「ヴィル」「トレイズ」といる訳ですね。ダーティーハリー(アリソン)とポアロ(ヴィル)とコロンボ(トレイズ)が一緒の電車に乗り合わせてるみたいなもんですよ。そら緊張感に欠けますね。

まあでも

トレイズ君は今回名言を一発残してくれましたね。

「俺は——」
トレイズは威風堂々と答える。
「よく分からないんだ!」
「はい?」「え?」

まあリリアがどう思っているかはともかく、やってくれましたねトレイズ。気のない素振りで逆に引っ張る戦略——ではないでしょうが、まあ彼が追われる立場になった可能性も出てきましたね。今回王子様は結構頑張ったしね。

という訳で

星3つ。
この話で一応「リリアとトレイズ」シリーズが終了になる可能性があるという事でしたが、良い所もあったけど良く無いと思った所もあった、と。・・・そうですねえ、「リリアとトレイズ」という独立した話ではなく「アリソン」の長い後日談を読んで来たのかな〜とかって気持ちになってしまいました。ちょい残念。